糖質制限すると脳に栄養が行かなくなる!?
ここ数日間、何人かのブロガーさん達の記事やネットのいろいろな記事を読んでいて分かったことがあります。
それは、どうやら糖尿病のコントロールに糖質制限が効果的らしいということはみなさん分かっているんだけど「脳の栄養はブドウ糖なので糖質制限すると脳の栄養が足りなくなるのではないか」との不安から糖質制限に踏み切れない方が多いということです。
確かに製糖会社やお菓子メーカーのサイトなどには「ブドウ糖は大事な脳のエネルギー源です」なんて書かれていますよね。そういう商品を販売している以上当然(?)なんでしょうけど…
でも本当に糖質制限をしても大丈夫なのかな~と不安でたまらない方に、ぜひ今回の記事を読んでスッキリしていただきたいと思います♪
脳にどうやってブドウ糖が届けられるのでしょうか
確かに脳にとってブドウ糖は重要なエネルギー源です。じつはブドウ糖だけではなくケトン体というものもエネルギーとして使えるのですが、これについては後で書きますね。
では、ブドウ糖はどうやって脳に届くのかご存知でしょうか?
食べたものに含まれる糖質は、種類によっては酵素により分解され、最終的に小腸で吸収されます。小腸で吸収された糖は血液によって体のいろいろな場所に運ばれるんです。
糖尿病ではない健康な方の場合、空腹時血糖値は70~110で食後も140を超えることはほとんどないと言われています。つまりこの程度の血糖値が保たれていれば、脳へはきちんと糖が届いているというわけです。
では糖質制限をしていて食事中に十分な糖質が含まれていない時はどうなるでしょう?そんな時、肝臓や腎臓では糖ではない材料(タンパク質、脂肪など)を材料にして糖を作り出すことができます。
これを「糖新生」と言い、糖質制限をしていない人でも夜間就寝時など長時間食事をしない時には普通に行っていることです。そうじゃないと、寝ている間にエネルギーが切れて心臓が止まってしまいますもんね!
で、糖新生をする能力に異常がない方であれば糖質制限をしても糖新生のおかげで低血糖にはなりません。低血糖にならないということは、正常血糖は保たれているので、血液を通してちゃんと脳にブドウ糖が届けられているということです。
糖質をたくさん摂取すれば頭が良くなるの?
脳のエネルギーがブドウ糖なのだから糖質をジャンジャン摂取すればどんどん脳に栄養が行って頭が良くなるのではないかという気がしますよね?でも残念ながらそうではありません。
そもそも、糖質がそんなに素晴らしいものであるなら、わざわざインスリンによって急いで血糖値を下げる必要が無いと思いませんか?血糖値が一定以上に上がることは人体にとって危険なため、インスリンというホルモンが存在するのでしょう。
糖尿人のみなさんは先刻ご承知だと思いますが、糖質を過剰に摂取すると血糖値が上がります。糖尿病患者は上がりすぎた血糖値を下げるだけの十分な量のインスリンを分泌できないので、血糖値は上がったままでなかなか下がりません。
高血糖が長期間続くと、体の他の部分と同様に脳でも動脈硬化が起こります。そして一部、脳の血流が悪くなり、そのうち大きな脳梗塞を起こす可能性も高くなります。
また過剰な糖質と体内のタンパク質が結びついてAGEs(最終糖化産物)となり、白内障・老化・動脈硬化・糖尿病合併症などを引き起こす原因となりますが、AGEsが脳の神経細胞にダメージを与えることが分かったそうです。
果物に多く含まれる果糖は、ブドウ糖の10倍以上もAGEsを作りやすいそうです。果物の食べすぎには気を付けたいですね。
そして、脳が血流からブドウ糖を取り込むためにはインスリンが必要なのですが、糖尿病患者の場合、脳がブドウ糖を取り込むためのインスリンが不足してしまい「血液中にブドウ糖はたっぷりあるのに、脳がうまくブドウ糖を取り込めない状態」になっているそうなのです…
そういうわけで、糖尿病患者は健常者と比較すると認知症を発症する可能性が高いのです。これは決して重症の糖尿病患者だけに起こることではなく、糖尿病予備軍の段階から少しづつ始まっているんだとか。恐ろしいですね…!!
脳のもうひとつのエネルギー源「ケトン体」
脳はブドウ糖だけではなく「ケトン体」もエネルギー源として利用できることが分かってきました。古いサイトや本にはいまだに「脳の唯一のエネルギー源はブドウ糖です」と書かれていたりしますが(;^_^A
ケトン体は体脂肪が分解されるときなどにできる物質で、きっちり糖質制限をしていると血中ケトン体が増えてきます。
抗てんかん薬を複数服用してもなかなか発作が止まらない難治性てんかんのお子さんにケトン食(脂質の割合を増やしてケトン体をさらに出やすくする糖質制限食と似た食事)を食べさせると、薬でも止められなかった発作が減ったり完全に止まるお子さんまでいるそうです。
まだ解明されていないことも多いですが、脳の異常な興奮を抑えるためにはブドウ糖よりもケトン体のほうが優れたエネルギー源なのかもしれませんね。
糖質制限をしていても健康体なら低血糖にはならないので脳には普通にブドウ糖が届けられますし、すい臓がムダにインスリンを消費しないのでインスリンの節約になり、脳内でインスリンが不足する事態も防げるでしょう。
そして、糖質制限をしていても肉や魚をきちんと食べていれば糖新生の材料は足りるので低血糖にはなりませんが、山で遭難して何日も食べ物が全くないなどの状態に陥って低血糖気味になった時、普段から糖質制限している人であればスムーズにケトン体が作られるので脳はエネルギー源を確保できて生き延びられるわけですね。
いつも糖質を大量摂取している方がいきなり遭難などで絶食すると、体はケトン体を作る必要も糖新生をする必要も今までほとんどなかったためにいきなり危険な低血糖状態に陥る可能性があるそうです。
これまで糖質の過剰摂取をしていた方が糖質制限を始める場合、いきなり全部カットせずに少しずつ減らして慣らしていくほうが安全かもしれませんね。
まとめ:低血糖にならない限り脳には何の問題もありません
正しく糖質制限を行っていて健康であれば、低血糖にはならないので脳にも普通にブドウ糖が届きます。しかも、いざという時にはケトン体をスムーズに脳が使うこともできます。
糖質制限を行っていても血糖値がなかなか正常域まで下がりきらずに困っている糖尿病患者は多いのです。それほど糖新生は強力なもの。
「糖の不足」を心配するよりも、むしろ「糖質過剰」のほうを心配するべきですね。糖質を過剰に摂取しても頭が良くなるどころか、むしろ認知症になるリスクが増すことがはっきりと分かってきたのですから…