もし私が糖尿病患者じゃなかったとしたら。

もしも私が糖尿病ではない世界だったら…?

ドラえもんのひみつ道具の中に「もしもボックス」というものがあります。この道具を使って、のび太くんは「もしも僕が女の子だったら」「もしもお金がいらない世界だったら」などと、いろいろな「もしもこんなことがあったら、どんな世界になるか」を実験しています。

もし、よっしーが糖尿病ではなかったとしたら…そしてかつて望んでいた通り医師になることが出来ていたとしたら、いったい今頃はどうしていたでしょうね?

おそらくですが「糖質制限?あんなものはダメです、日本では認められていませんし、主食を食べすぎるのがいけないのであって、適量を食べれば何も問題はないんです!」と患者さんたちを叱っていたでしょうねぇ。

 

 

ひょっとすると「ほーら私を見なさい、ちゃんと3食玄米を食べてますけど、あなたより痩せているでしょう?」なんて言っていたかも。実際は、痩せてるのに妊娠糖尿病や2型糖尿病になる方は多いんですけど…

そして、日本糖尿病学会のガイドライン通りに治療しても血糖値がなかなか改善しない患者さんがいたら「あなたひょっとして、こっそりお菓子とか食べてませんか?」と疑ってかかったかもしれません。これは実際に主治医から言われたことがある方がいます。

そして、真面目に治療しても少しづつ合併症が進行してしまってとうとう失明したり人工透析になった患者さんに目の前で泣かれてしまったら「あなたはよく頑張っていますよ、でもね〇〇さん…糖尿病は治せない病気で、少しづつ悪くなっていくのは仕方がないんですよ、これ以上悪くならないように頑張りましょうね」と言うしかなかったかもしれません。

そして、病院食でも血糖値が爆上がりする患者さんには経口血糖降下薬を何種類か飲ませて、それでもダメなら2型だろうと「インスリン注射を始めましょう、これですい臓の負担が軽くなりますよ」と言っていたでしょう。間違いなく。

 

人は自分が経験してみないと分からないことが多いです

医師に限ったことではなく、看護師・管理栄養士・スポーツトレーナーなど専門家の方たちもそうでない人もみんなそうだと思いますけど、教科書に書いてあることや仕事上のことと「わが身に降りかかってきたこと」はどうしても別物だと思います。

それは仕方がないことだと思います。家族に誰も糖尿病患者がおらず、自分も何を食べてもまったく糖尿病になる気配のない人に「糖尿病患者の気持ちを理解してくれ!」と頼んでも、それは無理というものでしょう。

まして「太ってないのに糖尿病になった人の気持ち」「大食いでもないのに糖尿病になった人の気持ち」など分かるはずがありません。太ってて食べすぎで発症した人とは、同じ糖尿病患者同士でもなかなか分かり合えないこともある位ですから…

 

 

家族に糖尿病患者がいる方ですら、やはり糖尿病患者本人の気持ちが100%理解できるわけではないですもん。何て言うのかな、「温度差があるなぁ」と思うことが多いです。しょうがないです。

よっしーの母は糖尿病患者である父の気持ちがすべて分かっているわけではないと思いますし、よっしーの夫だって私の気持ちをすべて分かっているわけじゃないでしょう。

分かろうとしても理解しきれないのは、誰が悪いわけでもなく、ある意味仕方がないことなんですよね。分かろうとしてくれる方のことは、本当にありがたいと思いますけど。

 

自分が糖尿病患者にならないと分からないことだってある

1型糖尿病の管理栄養士さんで、インスリン+糖質制限で血糖管理をしていらっしゃるCocoroさんという方がいらっしゃいます。彼女は妊娠中で、もうすぐ赤ちゃんが生まれるそうです。応援しています♪

また彼女の他にも、1型糖尿病で従来の食事療法で合併症が進んでしまったけれど糖質制限に切り替えて改善したという管理栄養士さんもいらっしゃいました。

糖尿病専門医でありながら2型糖尿病患者でもあるという方も数人知っていますが、中には網膜症が進行し、眼科医の深作秀春先生の所に「お前何とかしてくれ」と助けを求めてきた医学部の同級生の医師もいらっしゃったそうです。

 

 

彼ら彼女らは専門家ですが、同時に糖尿病患者でもあるわけで、教科書に書いてある通りの方法では必ずしも糖尿病の進行を防げないことを身をもって知っていらっしゃいます。

けれど、たまたま自分が糖尿病体質ではない専門家であれば「糖尿病になる人、合併症が進行する人は不摂生している人よ!」「糖質制限なんて極端な方法は必要ないわよ、だって私は現に3食しっかりご飯を食べているけど糖尿病になっていないもの!」と思ってしまう場合もあるのかもしれませんね。

よっしーのように、ジムで週5日筋トレして主食は玄米にしてこれ以上ないぐらい頑張っていても遺伝で糖尿病になってしまう人は、もしかするとかなり少ないのかもしれません。

だから、今まで自分が指導してきた患者さんたちがたまたま太りすぎ&暴飲暴食が原因で発症した軽症の患者さんばかりだという場合、よっしーのような患者もいるのだということを想像できないのも仕方が無いのかなと思ったりします。

 

私が糖尿病になったことには意味があるのかもしれません

3年前、自分はなんて不幸なんだろうと思いました。病院のベッドの上で泣きました。なぜなら、世間一般で言うところのヘルシーな生活を送っていたつもりだったからです。

テレビ番組で大食いの女芸人の方たちがものすごく大量に糖質を食べても糖尿病ではなく、ちょっと太っているだけでとりあえず何ともないのを見ると、悔しいと思うことだってあります。

よっしーはケーキバイキングすら、1度も行ったことが無かったんですよ?大学生の時、「夕食代わりにケーキバイキング行かない?」と誘われたときは、バイトがあると嘘をついて断ってしまいました。さほど好きじゃなかったので…

それでケーキバイキングに行った友人たちはたぶん今でも糖尿病ではなく、よっしーは…不公平だと思いませんか?

 

 

でも、自分が糖尿病になったことがキッカケで、いろいろなことに気付くことができました。「運動さえしていればOK」ではないこと、「太らなければ大丈夫」ではないこと、糖質がもたらす病気は糖尿病の他にもあるということなども…すべて、自分が糖尿病を発症したからこそ初めて知ることが出来たのです。

糖尿病になる原因は人それぞれです。中には「あまりもたくさん食べすぎて体重が100キロを超えていて糖尿病になったけど、ちょっと食事を減らしてみたら痩せて血糖値も下がっちゃいました♪なーんだ、糖尿病のコントロールって難しいことじゃないんだね!」という方だって少なくないでしょう。

不摂生が原因で発症した人ほど、簡単に改善しちゃうんですから、なんとも不公平なことですよね。

 

 

世間の2型糖尿病のイメージってそんなものかもしれないですね。だから1型糖尿病の方の中には「2型と一緒にされたくない」と思う方がいらっしゃるのでしょう。

でも、ちょっと食事を減らしたり、野菜を先に食べたり、運動するだけで簡単に血糖コントロールが出来る患者ばかりではないということを分かってもらえるといいな…と思います。

血糖コントロールの方法は色々あっていいと思うので押し付けはしませんが、こういうケースもある、ということで。

そして専門家の方たちが、自分が見たことのある典型的なケースだけじゃなく、私のような患者もいるのだということを知っておいていただけると、もっと多くの患者たちが救われる気がします。

 

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