1989年に発売された医療関係者向けの糖尿病本
実家の納屋から、父の30年前(1989年)の糖尿病本を発掘しました!『糖尿病ワンポイントアドバイス』という医歯薬出版株式会社さんから出た本です。
本のタイトルからして糖尿病患者向けの本かと思ったら、これは糖尿病患者と関わる医師など医療関係者向けに書かれた本でした。
そのため専門用語も多く、ちと難しいかなと思ったのですが30年前の糖尿病治療が現在のそれとどう違うのか知りたかったので読んでみました♪
この本は、父が2型糖尿病と診断されてから2年ぐらい経った頃に亡き祖父から父へプレゼントされたものです。よっしーも主治医もまだランドセルを背負った小学生の頃でした。
本の見返しには祖父の字で「1日も早く全快を祈念して 父より」と書いてありました…祖父は糖尿病ではありませんでしたが、きっと親としてとても心配だったことでしょうね。
父は糖尿病を早期発見できたせいか、薬もインスリンも使わずに30年以上治療を要するような合併症は特にないままコントロールできているようです。数年前から糖質制限しています。
30年前の糖尿病の本か…
父が糖尿病と診断されて子供心にとても怖いと思ったわ。だけど何も知らなかった。
30年前の食事療法の基本はやはりカロリー制限だった
30年前の日本の糖尿病食は、やはりカロリー制限が基本だったようです。太めの2型糖尿病患者では、その人の標準体重(kg)×25kcalぐらい、糖尿病合併症があり運動できない場合は体重(kg)×20kcalぐらいに制限するそうです。
標準体重が60kgの人であれば1日あたり1200~1500kcalです。これはかなりキツいですよね!小柄な女性であればもっと少ないでしょう?
父は最初カロリー制限をしていたので、夕食後などによくキッチンをうろうろして「何か食べたい~」と言っては母から叱られていました…苦しかったのでしょうね。
脂質に関しては意外なことに「脂質摂取を厳しく制限しすぎると動物性タンパク質食品の不足につながりがちで、低タンパク血症や貧血を起こしかねない」とあります。
糖質に関してはご飯などの主食はきちんと食べるべきだとしていますが、砂糖は少量でも血糖値を上げやすいので良くないこと、ハチミツや果物の果糖の害について書かれていました。
「果糖は脂肪の合成を促し、血中の中性脂肪を増やし、糖尿病患者の動脈硬化を悪化させる」とはっきりと書かれていたことに驚きました。30年前にはすでにちゃんと分かっていたのですね!
また肥満の患者に医師の観察下で(入院させるなどして)1日あたりの摂取カロリーを500kcal以下に制限するVLCD(超低エネルギー食)が注目の新しいダイエットとして紹介されています。
1日あたりの摂取カロリーを500kcal以下に制限すれば、おそらく誰でも確実に体重は減っていくと思いますが、体脂肪だけではなく筋肉も減りそうですね!
運動療法についてはどう?
糖尿病腎症や糖尿病網膜症がない患者であれば、中等度の運動を週3回以上行うことを勧めていたようです。
「運動の強度が高くなると血糖値を上げるホルモンが増えてくるので良くない」とあります。よっしーも現在は高強度の運動は避けています。
安静時の心電図に特に異常が無くても運動するときだけ異常が出る場合があるそうなので、運動を始める前に運動負荷試験を受けるべきだそう。
内科で運動するように勧められていた50代の糖尿病患者さんが運動後に突然目が見えにくくなり、眼科へ行くと大量に出血が起こっていた症例も写真付きで紹介されていました。怖いです!!
30年前、インスリン注射をしている患者たちはすでに自己血糖測定を行っていたそうです。しかしそうではない2型糖尿病患者の多くはまだ測定をしていなかったかも。
登山など運動量が多くなる時はあらかじめ補食をすることなどが勧められています。また「運動をするからといってそのぶん余計に食べていいわけではない」とも書かれていますね。
妊娠糖尿病および子供の糖尿病については?
妊娠中の糖代謝について「妊娠初期は空腹時血糖値はやや低めになり、妊娠末期になると高めになる」そうです。
当時は妊娠糖尿病にインスリン療法を行うかどうか議論されていたみたいで、筆者の先生は多くの女性は食事療法だけで管理でき、どうしてもインスリン注射を打たなければいけない患者は少数だと考えていらっしゃったようですね。
また、妊娠糖尿病の発症原因は1型糖尿病または2型糖尿病の発症の前段階として妊娠という負荷がかかったことであり、とにかく太らないことが大事だと書かれていました。
実際には太ってなくても妊娠糖尿病になる人は山ほどいらっしゃるわけなのでこの部分はどうかと思いますが、少しでもリスクを減らすのは良いことに決まっていますね。
この本は複数の医師によって書かれているので、別のページには妊娠糖尿病の妊婦さんへは積極的にインスリン療法を行うべきと書かれていたりします。読む人は迷うかも?
そして子供の糖尿病について、主に1型糖尿病について説明されています。血糖値が高いと成長ホルモンが抑制されて身長が伸びにくくなるとあります。
成長ホルモンとインスリンは拮抗ホルモンですからね。糖尿病ではなくても、子供が夕食で糖質をたくさん食べて血糖値が上がった状態で寝ると身長が伸びにくくなります。
インスリン注射と経口血糖降下薬はどうだったでしょうか
30年前は、最近ではあまり使用されていないSU剤(インスリンを分泌させる飲み薬)が第一選択剤として使われていたようですね。
でもSU剤で治療していてもだんだん効果が無くなってくる患者は珍しくなく、メトホルミンを併用したりしてもダメならインスリン療法に切り替えていたようです。
患者にインスリン注射をどうやったら不安を抱かせずに指導したらいいのかについて解説されていました。
また、この本は医師向けの本なので「患者が低血糖を起こした時に原因は患者にあって医師には責任がないことを証明するためにカルテはきちんと書いておこう」と書かれていました。
驚いたのは、30代前半の女性の症例です。この女性は20代の頃から糖尿病でしたが治療をさぼりがちで、とうとう治療を放り出してしまって空腹時血糖値が300を超えたそうです。
これではいけないと決意して教育入院して糖尿病の本格的な治療を開始した彼女。入院時にはごく軽度の糖尿病網膜症があり、タンパク尿は無かったそうです。
ところがインスリン注射を開始して数か月後、タンパク尿が出るようになり、網膜症は明らかに悪化してしまったそうです!!
「糖尿病治療に関わる者として、少なくとも医原性の合併症は作りたくないものである」と〆られていましたが、これはまさによっしー自身の体験とも酷似し、新井圭輔医師や水野雅登医師もおっしゃっているインスリン注射の弊害じゃないですか…
30年前すでに「インスリン注射が原因で糖尿病合併症が悪化することがあるらしい」ということは医師達には分かっていたんです。残念ながら30年経った今も、現状はあまり変わっていないみたい。
30年前の日本では糖尿病合併症はどうだったか
糖尿病合併症についての解説は、現在とあまり変わっていないように感じました。血糖コントロールを良好に保っていれば、初期の糖尿病合併症は回復する可能性があると書かれています。
怖いと思ったのは、糖尿病合併症で自律神経障害があると50%の患者が2年半以内に亡くなると言うデータですorz いわゆる突然死というものです。
よっしーは3年半前に糖尿病と診断されたときに明らかな自律神経障害がありました。そういえばジムで運動するときも、運動前にめちゃくちゃ脈が速かったり、その後どんなに運動してもあまり変化がありませんでした。
ただ自律神経障害は血糖値が良くなると回復することが期待できるんだそうです。神経障害は糖尿病合併症の中でももっとも早い時期から進行するのでみなさん本当に気を付けてくださいね。
そして30年前のこの本には「年間3000名の患者が糖尿病で失明する」とありましたが、残念ながらこの現状は現在も変わっていません。
糖尿病腎症から透析を開始する人数は当時は年間7000名と書かれていますが、現在は16000名と言われていますよね。なぜこんなことになっているのでしょうか?
糖尿病治療の未来はどうなるのかな?
本には「高齢化や生活習慣の変化が原因で2型糖尿病患者は増えるだろうが、21世紀には治療法の進歩や健康管理の徹底により糖尿病は減るだろう」と書かれていました。
30年前にはまだ存在しなかった新しい飲み薬もありますし、なんといっても昔は「砂糖や果糖は良くないがごはんはきちんと食べましょう」と言われてきた常識が大きく変わりつつあります。
もしかすると数十年後には「昔は糖尿病はとても恐ろしい病気で、いったん発症すると目が見えなくなったり人工透析をしなければいけなかったそうだよ」と語られる日が来るのかもしれません。
祖父は息子(よっしーの父)が糖尿病にかかったことをとても心配し、何とか良くなるように本をプレゼントしてくれたり、他にも血糖値に良いらしいと聞けばいろいろな健康食品などを勧めてくれたりしていました。
でも残念ながら、糖尿病という病気はいまだに克服されてはいません。これから先、もっともっといろいろなことが分かって実践できるようになれば、糖尿病という病気に対する考え方も変わってくるかもしれませんね。
糖尿病はとても怖い病気だけど、きちんと対処していれば大丈夫だよな♪
一病息災ってことで、みんなで元気に長生きしましょう!