カロリー制限食には肥満解消効果はあるが直接的な血糖改善作用がない

ダイエットのイメージ

カロリー制限は2型糖尿病にどれだけ効果があるの?

日本では、糖尿病患者の食事療法と言えばいわゆるバランスの良いカロリー制限食ということになっています。しかし本当にカロリー制限で糖尿病が改善するのでしょうか?

今回は、イギリスのニューキャッスル大学で行われた研究をひとつ紹介したいと思います。BMI27~45とかなりの高度肥満者を含む2型糖尿病患者にカロリー制限させた研究です。

患者たちに1日あたり624~700kcalという極端なカロリー制限をさせ、2型糖尿病がどのぐらい寛解するかを調べたものです。

 

 

なお今回の研究では、空腹時血糖値が126以下になったら「寛解」ということにしたそうです。それならよっしーも寛解したということになりますが…まぁそれは置いときましょうw

8週間の「極端なカロリー制限ダイエット」によって被験者全員の体重は減りました。なんと平均で13~15kgも!もともと肥満度の高い方が多かったのでこの結果は当然ですね。

糖尿病は「インスリン分泌不全」「インスリン抵抗性」から起こりますが、欧米では日本人と比べて肥満によるインスリン抵抗性が原因の糖尿病が多いですが、果たして被験者たちの糖尿病はどうなったのでしょうか?

 

にゃご
太った人が痩せるだけで糖尿病が良くなることがあるって言うよな。

よっしー
ええ、遺伝ではなく肥満が原因でそうなった方は改善の可能性があるわね。

 

体重がかなり減ったのに血糖値はあまり改善していない!

極端なカロリー制限ダイエットで被験者全員の体重が大幅に減少しましたが、残念ながら「薬なしで空腹時血糖値が126未満になった人」は意外に少なかったのです。

糖尿病を発症してからの期間が短い患者で15人中9人、発症してからの期間が長い患者では14人中3人。それ以外の患者たちは、大幅に痩せても血糖値は正常化しませんでした。

しかも被検者たちの平均HbA1cは、羅病期間の短い患者で7.2→6.1、羅病期間の長い患者で8.6→8.0とある程度改善はしているのですが、決して「糖尿病が寛解した」と言える数値ではないんですね。

 

 

つまりカロリー制限食には体重を確実に減らす効果はあるけれど、肥満の糖尿病患者がカロリー制限で痩せたからと言ってみんなが劇的に血糖値が改善するわけではないということです、残念ですが…

今回の実験は、1日あたり700kcal未満というとても辛いカロリー制限です。このような食事はなかなか継続できるものではありませんし、もっと「ゆるやかなカロリー制限」では減量効果も少ないでしょうね。

カロリー制限が糖尿病に効果があるとしたら、それは体重を減らすことです。肥満が原因の糖尿病患者は痩せることで改善しますが、痩せても改善しない患者もたくさんいるんですね。

日本人の場合、そこまで太っていなかったり全然太っていないのに糖尿病を発症する方はたくさんいらっしゃいます。そのような方たちにカロリー制限をさせても、おそらく劇的な改善はないでしょう。

 

かなり大食いだった方には効果があるかもしれません

太っていた方の一部は、カロリー制限で痩せるだけでインスリン抵抗性が減って血糖値が劇的に改善することはあると思います。

その他として、いわゆる「痩せの大食い」タイプで糖尿病を発症した人にもきっと効果はあるでしょうね。

これまでご飯3杯食べていた人が1杯に減らせば、ご飯3倍に対応するほどのインスリンを分泌できない患者も1杯なら対応できる可能性があります。

 

 

つまり、カロリー制限をしていると言いながら、それまでたくさん食べすぎていた方にとっては軽く糖質制限をしていることになるわけです。

しかし、もともと肥満でもなく普通程度の量のご飯しか食べていなかった方にカロリー制限をさせてもまず効果は期待できないでしょうね。

ご飯3杯食べていて糖尿病になった方が1杯に減らして糖尿病が改善するのは「カロリーを減らすことによって痩せるから」または「糖質摂取量が減ったから」です。

 

カロリー制限で直接血糖値が改善するわけではない

カロリー制限は、肥満が原因で糖尿病を発症した患者の一部には効果を発揮するでしょう。また、食べ過ぎていた人が食事の量を減らすことによって糖質の摂取量も減ることになります。

しかし、もともと肥満ではなく大食いではないのに糖尿病を発症した患者たちにとっては大きな効果を期待することができないのがカロリー制限です。

また、カロリー制限をして筋肉が減らずに体脂肪だけを減らすことができればいいのですが、カロリー制限によって骨密度の低下、貧血、筋肉量の低下が引き起こされることを日本糖尿病学会の山田悟先生も著書の中で取り上げておられます。

 

 

カロリー制限は世間一般で言う「食べすぎ」を抑え、また体重を減らす効果は確かにあります。このことによって一部の糖尿病患者は血糖値が改善しますね。

でも、カロリーの低い食事をとってもそのこと自体が食後血糖値の上昇を抑えるわけではありません。OGTT(経口ブドウ糖負荷試験)で飲むサイダーなんて300kcalしかないのに飲めば血糖値は爆上がりします!

一方、塩コショウだけで味付けしたステーキ300gは720kcalぐらいあるのに、よっしーは食べても血糖値は10も上がらなかったですよ。

カロリーが低くても糖質が多ければ食後血糖値はかなり上がります。みなさんも測定して比べてみては?

 

すべての患者にひとつの食事療法しかさせないのはおかしいと思う!

米国糖尿病学会(ADA)は現在、糖尿病患者の食事療法として地中海食・ベジタリアン食・糖質制限食・低脂肪食・DASH食を正式に認めています。

ADAのホームページには、各食事方法の長所や短所が解説されていますので興味のある方はどうぞお読みになってみてくださいね。

糖尿病患者とひと口に言っても、いろいろな体型の方・いろいろな病状の方・合併症がある方と無い方・いろいろな体質の方がいらっしゃいます。

全ての患者が太っているわけでも大食いなわけでもないのに、一律「カロリー制限しか認めません!」というのは乱暴すぎやしませんかね?

 

 

まぁ、いくつもの種類の食事療法を正式に認めてしまうと、患者さんに指導する側はたくさん勉強しなければいけなくなるので大変になるでしょうけど…

それと多くの選択肢を与えるのは患者にとっては良いことのはずなのですが「余計な選択肢を増やしたら、これまではよく売れていたウチの商品の売り上げが減ったじゃないか、どうしてくれるんだ!」なんてこともあり得ますしね。

現実にはさまざまな事情で日本ではなかなか難しいのが現状かもしれませんが、食事療法の選択肢を増やせばそれだけ救える患者、カバーできる患者も増えます。

そうすれば今までよりも多くの糖尿病患者を救えることになると思うんですけどね…みなさんはどう思われますか?

 

にゃご
すべての患者を救える方法は存在しないんだから、ひとつでも選択肢を増やしたほうがいいんだけどな、そうだろう?

よっしー
多くの方は本当は分かっているのかもしれないわ。早く選択肢が増える日が来てほしいわね。

 

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