失われたインスリン分泌能力は復活するか

すい臓はどこにある?

1型糖尿病患者のインスリン分泌能力が復活する?

糖質制限ドクターのカルピンチョ先生のブログを見ていると、びっくりするような記事がUPされているのを見つけました。

なんと、1型糖尿病でインスリン自己分泌がほとんどなくなっていた方が、糖質制限食を継続してある程度基礎分泌が復活したそうなのです。

 

宗田先生が妊娠糖尿病学会で1型糖尿病の患者さんで糖質制限をすると、患者さんによっ...

 

カルピンチョ先生がお書きになっている通り、全ての患者さんに同じことが起こるわけではありません

しかし、1型糖尿病患者で枯渇したと思っていたインスリン分泌が再開することがあり得るということは、大きな希望ではないでしょうか?

そういえば1型糖尿病のバーンスタイン先生は、12歳の時に発症して、自己分泌は完全にゼロです。

しかし「まだベータ細胞が残っていた頃に糖質制限を始めていれば、ハネムーン期を永久に続かせることができたかもしれない」とおっしゃっています。

 

1型糖尿病の多くは自己免疫反応が原因

1型糖尿病というのは、何らかの理由ですい臓のベータ細胞がインスリンをだんだん分泌できなくなり、最終的には全く分泌されなくなってしまう病気です。

インスリンは大量だと体に様々な害を及ぼしますが、まったくなければ死亡してしまいます。そのため、基礎分泌(何も食べなくても24時間少量ずつ出ているインスリン)分は注射で補わなければいけません。

1型糖尿病で基礎分泌が足りない場合、糖質制限をしてもインスリン注射を完全にやめることはできないのです。

 

 

この病気の多くは、自己免疫反応(自分の体の分子をなぜか異物と認識してしまい攻撃すること)が原因です。

では、なぜ異物ではないはずの自分の体の中でそのような反応が起きてしまうのでしょうか?

1つの原因として、生まれつきの体質があるそうです。ある人たちの場合、ベータ細胞が作る分子が異物と認識されやすいそうですよ。

でも、生まれつきの体質だけですべてが決まるわけではないそうです。

私たちの体内には、他の細胞の死骸を食べて処理してくれる「お掃除屋さん」がいます。

しかし何らかの理由により「お掃除屋さん」による処理が追い付かないほどのスピードである細胞が死んでいくと「これは危険な敵ですぜ、きっと!」ということになってしまうらしいのです。

 

 

すい臓のベータ細胞が急激に死んでいく状況になったとしたら、どうでしょう?それが攻撃の対象になる可能性は十分に考えられますよね。

すい臓のベータ細胞が急激に死んでいく状況というのは、糖質の過剰摂取でベータ細胞への負担が大きくなりすぎた時です。

このときは細胞が死んでいくだけではなく、やっつけ仕事でインスリンを急いで分泌しなくてはいけないため、質の悪い変な形のインスリンを放出したりするそうです。

 

糖質制限食でベータ細胞の負担を減らしてやると…

糖質制限をきちんと行っていると、ベータ細胞へのストレスはぐっと減りますよね。ベータ細胞が大量死することもなくなります。

だからお掃除屋さんが必死にならなくてもよくなり、自己免疫反応が沈静化するのでベータ細胞への攻撃もおさまることが期待できます。

 

 

生き残ったベータ細胞は、ゆっくりと増殖し、わずかではありますがインスリン分泌能力が復活する可能性があると言うことです(ただし、別のメカニズムで起きている1型糖尿病や、すでに自己分泌がゼロになってしまった場合は残念ながらインスリン分泌能力は復活しないそうです)。

ベータ細胞は増やすことはできないと思っていましたが、まったく無理というわけではなく、分裂して増える能力がないわけではないらしいですね。

ただ、その能力は残念ながら自然の状態ではあまり高くないらしいです。1型糖尿病だけではなく、2型糖尿病も治療しても進行を止められないそうです…通常では。

 

(研修最前線)糖尿病が治療しても進行する理由【研修最前線】 ・・・ 最新臨床ニュースをm3.comが配信!

 

2型糖尿病のインスリン分泌能力も復活する!?

よっしーは初診時、1型糖尿病かもしれないと言われていました。しかしいくつかの検査の結果「2型糖尿病かもしれないけど絶対ではない」「2型かもしれないけど、あなたはインスリン分泌能力が極端に悪いので一生インスリン注射(ランタス)が必要です」と言われました。

食事前に打つアピドラの注射はすぐにやめました。糖質制限をしながら血糖値を測定していくうち、だんだんランタス注射の必要量が減っていき、完全にやめて現在に至ります。

 

 

1型糖尿病の方で、インスリンも飲み薬も何も使っていないのによっしーよりも血糖コントロールが良好な方が何人もいらっしゃいます。

2型糖尿病であっても、糖質制限を続けてベータ細胞への余計なストレスを避けていれば、何年もかかってゆっくりとインスリン分泌能力は復活し得るのではないか?とひそかに期待しちゃってます。

普通、糖尿病を発症するとじわじわと進行していくのを止められない…と言われているのは、通常の糖尿病食ではベータ細胞へのストレスが大きいからではないでしょうかね~。

 

インスリンを打てばベータ細胞を守れるんじゃないの?

ここでみなさんは「ちょっと待て、インスリンを注射してやればベータ細胞への余計な負担をなくせるから良いんじゃないの?」と思うでしょうね。

よっしーの主治医も昔「インスリンを打てば、ベータ細胞の負担を軽く出来るんだよ」とおっしゃっていました。

 

 

上のグラフはm3.com様のサイトからお借りしました。

残念ながら、インスリン注射による治療を始めると最初はHbA1cが下がりますが、2年以上経つとまた上がってきてしまい、結局、食事療法と運動療法しかしていない患者とほとんど変わらないペースでじわじわと悪化していくのが分かると思います。

「インスリン打っとけば何を食べても平気だし、すい臓に負担もかからない」ということではないみたいですね…

 

現時点で最善と思われる方法は?

今のところ、いかなる方法を用いたとしても、すでに失われた糖尿病患者のインスリン分泌能力を魔法のように復活させて「完治」させることは不可能です。そんなことができたら、ノーベル賞がもらえるでしょうね。

しかし、現時点で少しでも可能性を求めるとしたら…

・太っている人は標準体重まで痩せる

・糖質制限をする

・インスリン抵抗性改善薬を使用する

・運動を継続する

このぐらいではないでしょうか?

 

 

ベータ細胞に余計なストレスを極力かけないようにしながら、失われたインスリン分泌能力が「復活」出来るようになる日が来るのを待ちましょう。

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