糖質制限していた糖尿病患者が糖質制限をやめるとどうなるの?

インスリンを分泌するすい臓のβ細胞たち

すい臓のベータ細胞はかなり数が減っているはずです

糖尿病と診断され、大好きだったお米やパンを1人前食べるだけでも食後血糖値がびっくりするほど上がることが分かって泣く泣く糖質制限を始めることにしたみなさん。

その辛い気持ちはよーく分かりますよ…よっしーはもともとお米が大好きで「白米は良くないらしいけど玄米なら大丈夫よね?」と22歳からずっと玄米食にしていました。

途中からは、雑穀入り玄米にしました。1回分ずつ雑穀が小分けになったやつが市販されているのでそれを玄米に混ぜて炊き、1/3合ずつおにぎりにして冷凍してました。

 

 

しかし20代半ばで妊娠糖尿病になり、おそらく30歳過ぎには2型糖尿病に移行してしまったのではないかと思われます。30代後半でやっと糖尿病が発覚して治療を開始しました。

よっしーぐらい重症の糖尿病になってしまうと、残念ながら糖質制限を一生やめることは出来ないと思います…薬やインスリンを使わないのなら。

それはどうしてかというと、この段階になるとインスリンを分泌するすい臓のベータ細胞はかなり死んでしまっています。糖尿病と診断された時点ですでに何割かは減っているそうですね。

すい臓を工場、ベータ細胞を工場で働く従業員に例えて考えてみましょう。仕事が山ほど入ってくると、社長は従業員を増やしてなんとか仕事量に対応しようと頑張ります。

 

すい臓のβ細胞たちを擬人化した漫画

しかし従業員を増やせる量にも限界があります。従業員一人あたりの作業量はどんどん増え、限界を超えるとやがて過労死する者がぽつぽつ出てきます

大部分の従業員がいなくなってしまったら、いくら「お前たちサボるな、根性で頑張って仕事しろっ!!」と社長が怒鳴ったところで、できる仕事の量には限界があるでしょう?

残された少人数の従業員でも無理しないで処理できるだけの仕事しか与えない、それが糖質制限だと思っていただければ…

 

にゃご
にゃご

従業員たちにムチ打って「もっと働け!!」と怒鳴ったところで、作業効率が上がるのは最初だけで後は悲劇が待っているんだな。

よっしー
よっしー

「たくさん仕事をやらせていればその仕事量に適応できるようになる」なんてとんでもないことだわ。そんな考えだから過労死がなくならないのよ、リアル企業でもすい臓でもね…

いつか糖質制限をやめることはできるの?

よっしーのように羅病期間が長い重症の患者ならともかく、まだ発症してから比較的年月の浅い糖尿病患者がいずれ糖質制限をやめることは可能なのでしょうか?

境界型糖尿病の段階の被験者に1日あたりの糖質摂取量を120gに制限する「ゆるやかな糖質制限」をさせたところ、1年後には7割の方が完治したというデータがあります。

上記は糖質制限をしているから食後血糖値が上がらないように見えるという話ではなく、きちんとOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)を行った結果が正常型になったということです。

境界型ではなくガチの糖尿病になった方でも、糖質制限を継続していてたまに白米150gの定食を食べても1時間後血糖値140・2時間後血糖値120ぐらいしか上がらなくなった方がいらっしゃいます。

 



 

糖尿病を発症してまだそれほど時間が経っていない状態なら、ベータ細胞は過労死しておらず、ただ疲れてダウンしているだけの状態と思われます。

亡くなった者は残念ながら生き返りませんが、ダウンしていただけの者はしばらく休ませてあげれば再び元気を取り戻して働けるようになるわけですね。

まだ糖尿病境界型や妊娠糖尿病の方なら、ちょっと糖質制限するだけで元の状態に戻ることは十分に考えられます。特に高度肥満だった方は痩せるだけでかなり改善が期待できるはず。

しかし、ガチの糖尿病を発症すると時間が経てばたつほどその可能性は減っていくんです。病気で弱っているだけのβ細胞は休養させればまた元気になりますが、過労死した者は生き返らないので💦

 

糖質制限だから糖尿病が治らないの?違うでしょ

よく「糖質制限は対症療法であって、糖尿病が治るわけではない」と言われますよね。実際にはほぼ治ったのと同然の状態(=寛解)になる方はいますが、全員ではありません。

よっしーの場合「この先も一生必要です」と言われた持効型インスリンを7か月で完全に中止することはできましたが、これ以上は難しいようですね。

でも糖質制限ではなく一般的に行われている糖尿病の治療を行った場合は、みなさん治っていらっしゃるのでしょうか?治療している日本人の2型糖尿病患者の平均HbA1cは7だそうですが。

糖尿病教室でベテランの糖尿病専門医の先生に「糖尿病が完治した人はいるんですか?」と質問してみたところ「GDM(妊娠糖尿病)とソフトドリンクケトーシス(ペットボトル症候群)の人以外はまず無理だね、知らないです」との返事でした。

食べすぎ・太りすぎで糖尿病を発症してすぐに食生活をちょっと改善しただけで良くなる方はいらっしゃいます。安田大サーカスのクロちゃんも、教育入院した時は数値が劇的改善したそうですね。

 

 

そのような方はもともと糖質大好きなので、糖質制限まではなさらないでしょう。まだ軽症なので、糖質制限までしなくてもちょっと食事量を減らすだけで良くなったりしますから。

ガチ糖質制限をやろうという方は、よっしーのようにすでにかなり重い糖尿病になっている方が多いんじゃないでしょうか?この段階になれば、いかなる方法を用いても絶対に治ることは無いです。

従来型の治療法では、いったん打ち始めたインスリンを中止できるのは「糖尿病発症直後の患者」および「食事前のインスリンは打っているが、持効型インスリンは打ってない患者」の一部だそうですね。

羅病期間が長くて持効型インスリンまで打っていた患者がインスリンも薬もやめられた、なんていう例は普通はまず考えられないことみたいですね。

 

故・桐山秀樹先生は糖質制限をなさっておいででした

作家の故・桐山秀樹先生は、かつて重度の2型糖尿病と診断され「心筋梗塞を起こす危険性がある」と医師から言われていたそうです。

でも糖質制限で20kgのダイエットに成功し、おそらく痩せてインスリンの効きが改善したためでしょう、たまにうどんやそばを召し上がったり、夕食に玄米を召し上がっても体重はリバウンドせず血糖値も正常値をキープなさっていたそうですよ。

つまり「糖質制限をしていて、その後は耐糖能が改善したので普通に糖質を摂取しても血糖値が上がらなくなった」という状態になられたわけですね。

しかし残念なことに桐山先生は心筋梗塞でお亡くなりになりました。そのことで「糖質制限は危険!」とマスコミが一斉に騒いだことは記憶に新しいです。

 

 

お亡くなりになるだいぶ前から、桐山先生はうどんやそば、玄米を召し上がっていらっしゃいました。これは糖質制限ではありませんよね。

桐山先生の奥様はこの件で糖質制限が叩かれることを残念に思って、先生が生前に玄米等を召し上がる生活に戻っていたことをあえて公表なさったのですよ。

糖尿病患者は、心筋梗塞や脳梗塞で亡くなる確率が健常者よりも明らかに高いです。そしていったん心臓に生じた病変は、ちょっとばかり糖質制限をしたからといって短期間で「ハイ、元通り」とマジックのように元に戻るわけではないのです。

アメリカのバーンスタイン先生のように、40年以上糖質制限を継続しておられて脚の動脈のアテロームが消失したという例はあります。糖尿病黄斑浮腫が9年目でようやく完治した患者さんもいらっしゃいます。

 

 

いずれにしても糖尿病合併症の改善にはかなり時間がかかると思ったほうがいいでしょう。すでに何らかの合併症が出てしまっている方の場合「やった!糖質食べても血糖値が上がらなくなったから糖質制限はもうやめちゃおう~♪」というのは非常に危険なことです。

桐山先生の件は決して私たちにも無関係ではないと思います。幸か不幸か、よっしーは糖尿病の程度が重いので「糖質を食べても大丈夫」な状態に戻ることはおそらく無いと思います。

しかし比較的軽度の方は、この罠に陥りやすいのではないでしょうか…くれぐれも気を付けていただきたいなと思いますよ。

また有名人でない限りいちいち報道されないだけで、相当たくさんの「糖質を普通に食べている糖尿病患者」が心筋梗塞で亡くなっているということをお忘れなく。

 

糖質制限をやめて糖質を食べたい方はよく考えましょう

今はお米を食べると血糖値がものすごく上がるのでやむを得ず糖質制限をしている、でもいずれ治ってまたお米やパンを食べる生活に戻りたいなと考えている方はきっとものすごく多いでしょうね。

食べたい気持ちはよく分かりますし、いま頑張ればいずれは少しばかり食べても血糖値的には大丈夫になる可能性は決してゼロではありません。

でも、そうなったからといって以前と同じ量の糖質を食べる生活に戻れば、最初は良くてもいずれまた血糖値は上がるので本当に気を付けてくださいね。

食べすぎで太った人がカロリー制限で痩せて「やった、もう目標達成したから!」と以前と同じ内容と量の食事を摂取すれば間違いなくリバウンドするのと同じですね。

 

糖質は大事だと言い張って過食をする女性

 

筋肉量が少ない方は、安全に気を付けてトレーニングを行うことで筋肉を増やせば血糖の消費量はちょっぴり増えますし、体脂肪を減らせばインスリンの効きも良くなります。ただ、それでもやはり限界というものがありますので、過信しないようにね。

中には「適度に糖質を食べることで耐糖能を鍛えることが重要」とおっしゃる方たちもいらっしゃるようですが、ちょっとタバコに例えて考えてみましょうか。

「極端な禁煙をすると耐ニコチン能が落ちてしまうぞ!それよりも毎日適度に喫煙して耐ニコチン能を鍛えようではないかっっ!」…どう思われますか?

よっしーの両親も夫も、それから自分も誰もタバコを吸いません。タバコは健康に百害あって一利なしだと思っていますので、耐ニコチン能とやらを鍛えることの必要性を感じません。

 

 

体がニコチンという「毒」を日常的に摂取していると、体は毒の侵入に対して身構え、非常態勢を取るようになるでしょう。でもそれが続くと、体はどんどんダメージを受けていくに決まっています。

少なくとも「適度に喫煙するほうがまったく喫煙しない人よりも健康になる」はずが無いと思いませんか?人々に完全に禁煙されると困るのは、何かの団体の方たちだけではありませぬか。

糖質もこれと同じようなものだとよっしーは思います。嗜好品ゆえ、どうしても食べたくてたまらない方は自己責任で適量をどうぞ…と言うしかありません。

糖質は野菜や豆にすら含まれているので完全に摂取しないことはまず無理ですし、その上わざわざ意識的に摂取しなければいけないものなのかどうか…ですね。

 

にゃご
にゃご

数が減った従業員をムチ打ってまで糖質をたくさん食べる必要があるかどうか考えないとな!

よっしー
よっしー

以前の仕事が過酷過ぎたからこそ従業員が過労死してしまったことを忘れてはいけないわね。

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