糖尿病は治る病気?それとも…
糖尿病患者のみなさんなら1度は「糖尿病を治したい、完治したい」と思ったことがあるはずです。よっしーももちろん最初はそう思いました。
糖尿病が「治る」と「寛解する」ことは似ているようですが違います。「治る」「完治する」というからには、発症する前の状態と完全に同じ状態に戻らなければいけません。
糖尿病と診断された時点で、すい臓のβ細胞はいくらか死んでいます。現在、死んでしまったβ細胞を元のように戻すためのさまざまな研究がなされているところです。
つまり死んでしまったβ細胞を元通りにできないうちは「糖尿病が完治する」とは言えません。ある程度糖質を食べても血糖値が正常範囲を超えなくなるのは「寛解」というべきでしょうね。
失われたβ細胞を再び増やせるようになれば、1型糖尿病は完治する可能性があります。1型の場合、それまでの食生活がその方のすい臓の糖質処理能力を超えていたわけではないからです。
しかし2型糖尿病の場合、β細胞を増やしていったん「完治」となっても、それまでの食生活を変えなければまた再び同じことが繰り返されることになるでしょう。
なぜなら2型糖尿病になりやすい体質は遺伝との関わりがかなりあります。一卵性双生児と二卵性双生児、どちらも同じ環境で同じように育ちますが、片方が2型糖尿病の場合もう片方もそうなる確率は明らかに前者で高いのです💦
糖尿病が治ったと思って同じことを繰り返したら、今度は取り返しがつかないことになってしまった方もいらっしゃいます。
ほとんどの人は糖尿病を治してまた甘いものを食べたいと思っていますよね。
もちろん、その気持ちはよく分かるわ…でもまた同じことが繰り返されてしまうのよ。そして、また治療をするの?
萩尾望都さんの『金曜の夜の集会』という漫画
『ポーの一族』『11人いる!』『イグアナの娘』などの作品でよく知られる女性漫画家の萩尾望都さんの作品はよっしーも大好きなのですが、『金曜の夜の集会(『半神』に収録)』という作品をご存知ですか?
※この先に漫画の結末のネタバレを含みますので、まだ読んでいない方はご了承の上で続きをお読みくださいませ。
『金曜の夜の集会』で主人公の男の子はふと「前にも今日みたいなことがあったような気がする…」と思います。
実は主人公が住む町は核戦争で消滅してしまうのですが、主人公の姉が不思議な能力を使ってその前に時間を1年間戻し、町の子供たちの記憶をまっさらに戻すことをもう何度も何度も繰り返しているのです。
そのことを知った主人公は「僕たち、安全な未来に逃げることはできないの?」と姉に問うのですが「安全な未来はないのよ」という答えが返ってきます。
何度時間を巻き戻しても、結局同じ運命から逃れることは永久に出来ないのです。もしこの無限ループを終わらせることが出来るとすれば、それは諦めて皆が「死」を受け入れるときでしょう。
2型糖尿病になる前にいくら時間を巻き戻したところで、遺伝子に刻まれた「糖尿病になりやすい体質」は変えられません。遺伝子は時に、死をも予言します。
安全な未来に逃れるために出来ることがあります
『金曜の夜の集会』の主人公たちは、結局同じことを繰り返すことしかできません。でも私たちには、糖尿病を発症するのを避ける手段があります。
もしいつか失われたすい臓のβ細胞を再び増やすことが出来るようになったら「わーい、これで糖尿病が治ったから好きなものを食べてやるぞ!」とほとんどの方が思うでしょう。
でもそれだと、また時間をかけて同じことが繰り返されるだけです。そのたびにまた時間を戻せばいいと思われますか?
管理栄養士の麻生れいみ先生は著書の中で「糖質は元カレと同じ」とおっしゃっています。とても分かりやすい例えだと思います。
世の中には残念なことに、お付き合いを続けても幸せにはなれないと分かっている相手が存在します。
その人が近くにいてずっと未練がましく想い続けるよりは、いっそきっぱりと別れてしまったほうが気持ちはラクだと言うわけです。
ひょんなことからその元カレと再会した時、あなたならただ冷静に「お元気ですか?」と言って離れることができるでしょうか。
よっしーは昔、糖質は大好きでした。世間一般の女性と比較して特別たくさん食べていたとは思いませんけど、同僚と外食に行くときは焼き肉よりも回転寿司にしようと提案しました。
またとにかく玄米ご飯が好きで、結婚してもわざわざ自分専用の小さな炊飯器で玄米を炊いていたぐらいです。
ご飯のない生活など考えられませんでした。マイタケを炊き込んだり雑穀を入れて炊いたりして、とにかくあれこれ工夫しながらもご飯をやめることは出来なかったのです。
意志の弱いよっしーですから、こんなに好きだった「元カレ」と再会すれば、きっとまた昔と同じことを繰り返してしまうでしょう。何度も…
2型糖尿病は治るのか治らないのか?
現段階で「この健康食材(あるいはメソッド、薬など)で糖尿病が完治します」と宣伝しているお店があるとすれば、残念ながらそれは信用に値しません。
嘘だと思ったらあなたの主治医に訊いてみてください。「寛解」と「完治」は似ているようで異なりますからね。
しかし近い将来、失われたβ細胞を増やすことは可能になると思います。そうなるといったん「完治」した状態になるのかもしれません。
でも2型糖尿病の場合、「糖尿病が治ったから健常者の人と同じぐらい糖質を食べていいのだ」と思い込んで油断するといずれまた同じことを繰り返すでしょう。遺伝子そのものは変えられないので…!
糖尿病を発症した時にお相撲さん並みに体重があった方が心を入れ替えて標準体重になれば、よほどのことがない限り「再発」はないかもしれません。でも元々そうではない方のほうが多いでしょう?
「生活習慣病」と言われると何となく自業自得と言われているような気がして納得がいかないのですが、「人並みの食生活でも自分には良くない」という意味ではやはり2型糖尿病は生活習慣病なのかもしれません。
すい臓のβ細胞を増やすことはもうすぐ実用化できるのではないかと思いますが、遺伝子に刻まれた体質までを書き換えることができるようになるまで、まだまだ時間がかかるでしょうね。
「2型糖尿病が魔法のようにすっきり完治し、治った後は何をどれだけ食べても全然平気」とは、そう簡単にはいかないみたいです。
ただ治りたい、治って昔みたいにたくさん食べたいと思ってもなかなか現実は厳しいのですね。
今できることをやるしかないわ!もしβ細胞を増やせるようになっても、節度を忘れないようにしなければね。
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