断食するとケトアシドーシスになるのか?
2年近く前になりますが、血糖値の改善と糖尿病合併症の網膜症に伴う黄斑浮腫の完全治癒を期待して長期間の断食(ファスティング)を試みたことがありました。
特に低血糖にもならなかったのですが、84時間経過したところで吐き気を感じ、すぐ中止したにもかかわらずどんどん体調が悪化し、入院して「飢餓性ケトアシドーシス」と診断されました。
その時はかかりつけの病院とは別の病院に入院し、若い医師から「薬(メトグルコ、スーグラ)を飲みながら断食をしたことによってケトアシドーシスになったと思われます」と説明を受けました。
メトグルコは肝臓での糖新生を抑制したり筋肉での糖の利用を促進する薬、スーグラは尿中に糖を捨てて血糖値を下げる薬です。
インスリン分泌不足の糖尿病患者がスーグラを服用していてケトアシドーシスになることがあるそうです。
私は普段糖質制限をしていますがスーグラを飲んでいてもケトアシドーシスになったことはありませんでした。
しかし長期間の断食を行ったときは外部からのタンパク質の供給がゼロになったので、より脂肪酸代謝が亢進し、もともとのインスリン分泌不足からケトーシスに歯止めが効かなくなってしまったのでしょうか?
スーグラとメトグルコを飲んでいたから血糖値はそこそこ良好だっただけで、実は根本的な問題として「インスリン分泌不足」があり、長時間の断食によってその問題が表面化したのだと思います。
じつは5日間とか7日間とか、長期間の断食を健康上何の問題もなくやりとげた方を何人も知っています。その方々は糖尿病ではありません。
やはり問題の本質は長期間の断食ではなく「インスリン分泌不足」にあるのではないでしょうか…ケトアシドーシスは主に1型糖尿病患者さんがインスリン注射をしなかった時に起こるものですしね。
糖尿病だといろいろ注意点があるんですね。
そうよ!特にインスリン分泌不足(1型さん+一部の2型さん)はね。
再び断食にチャレンジしてみることに!
84時間断食でケトアシドーシスになったことがトラウマとなり「もう断食なんてとんでもない!」と思っていた私です。
しかし入院後に飲み薬を2つとも中止して代わりに基礎インスリンを注射(グラルギン)で補うようになってから、尿中へのケトン体の排泄量が減少しました。食事は主治医の許可を得たうえでそれまでと何ら変わらない糖質制限食です。
おそらくですが、以前はインスリン分泌不足気味だったために必要以上にケトーシスになっており、使い切れないケトン体が尿中に大量に出ていたのでしょう…ケトアシドーシスにならない程度に!
それが現在は必要な量の基礎インスリンをきちんと注射で補っているので、ケトーシスになりすぎることがなく調子が良くなったのでしょうね。
一部で「糖質制限はケトアシドーシスになるから危険!」と言われていましたが、それは「インスリン分泌不足がある場合」ということでしょう。確かに気を付けなければいけません。
もっともインスリン分泌不足があれば、たとえ糖質制限ではない食事でもケトアシドーシスになるわけですが…私も10年前に最初にケトアシドーシスで糖尿病が発覚する前、少しも糖質制限はしていませんでしたからね。
「今なら長期断食を試みてもケトアシドーシスにはならず、無事にやり遂げる事ができるのではないか?」という思いが強くなっていきました。そしてどうしても確かめてみたくなりました。
先日眼科へ行き、左目の黄斑浮腫の痕跡がもうほとんど何も無いに等しいぐらい改善していると医師から告げられました。これが更に良くなって「完治」になるのではないかという期待がありました。そのためにはオートファジーの発動が必要なのではないかと。
糖尿病患者を多数診ているカナダのジェイソン・ファン医師の本「医者が教える健康断食 」を再び読み返し、また昔放送していたNHKスペシャル「驚異の小宇宙人体Ⅱ・脳と心」(6)果てしなき脳宇宙~無意識と創造性」で7日間断食を無事に終えた方たちを紹介していたのでそれも観直しました。
最近外食が続いてちょっと空腹時血糖値が高い状態になっていたので「これはやばい」と思い、年末大掃除みたいな感覚で「年末糖抜きファスティング」をしようと決めました!
4日間断食レポート
週末の外食の予定がどうしても外せないので7日間は無理でしたが4日間断食すれば諸々いろいろ良くなるだろうと思い、ジェイソン・ファン医師の本を熟読しました。
まず断っておきますが、申し訳ないですが断食中に体重測定はしていません…もともと朝は忙しいのでめったに体重測定はしませんが、最近は寒いのでますます億劫になり。でも「フリースタイルリブレ2」を使って血糖変動は常にチェックしています。
・断食1日目(2024年11月29日)…まずブレットプルーフコーヒー(無糖コーヒー+バター+ココナッツオイル(MCTオイルでもOK)+生クリーム)を飲む。1日程度のプチ断食はたまにやっているので特にどうということもなく。血糖値は1日目の後半にようやく下がってきたかなという程度。トイレが近くなる。
・断食2日目(2024年11月30日)…トイレが近い。長めの断食では水オンリーではなくビタミンサプリやボーンブロススープ、塩分を補ったほうがいいそうなのでそうする。空腹感はあまりなし。
・断食3日目(2024年12月1日)…まったく辛さはない。グラルギン注射を2単位減らしてみる。血糖値は2ケタ。
・断食4日目(2024年12月2日)…まだまだやれそうだったがこれまでとする。
・回復食(2024年12月3日)…断食明けなのでまず糖質・タンパク質少なめのプロテインバーから。下痢などのトラブルはなかった。気分スッキリ。これで終了。
回復食まで100時間以上断食しましたが、途中で気分が悪くなるようなことは1度もなかったです。やはり前回のケトアシドーシスはインスリン分泌不全が悪かったのでしょうね。
断食中は「食べない」から痩せる?
今回私は体重測定をしていませんが、4日間食べないぐらいでは「劇的に痩せる」ということはないと思います。
たまに怪しげなダイエットサプリの広告で「飲むだけで1か月で20キロも痩せた」というものがありますが、お相撲さんならともかく、普通範囲の体型だった方がたとえ1か月断食してもそこまで落ちることはあまりないのでは?
人気番組「ザ・世界仰天ニュース」の中で「仰天チェンジ」というコーナーがあります。ダイエットして劇的に変身した方が出演なさるのですが「ダイエットの最初に2週間断食しました」「ダイエットするにあたってまず5日間断食してその後、糖質制限に」とかあったんですよね。いずれも男性の方でした。
これって「断食するからその期間中に一気に痩せる」というよりは「まず断食することでその後痩せやすい状態にした」というほうが近いと思うんです。
カナダで多数の糖尿病患者や肥満の患者を診ているジェイソン・ファン医師は著書の中で「インスリン抵抗性が非常に強いと、体脂肪がたくさんあっても体はそれを容易に使えない状態になっている(その状態で食事を減らしても筋肉ばかり減る??)」とおっしゃっていました。
インスリン抵抗性がなくなると体脂肪を使いやすい状態になるのだそうです。そのためにはやや長めの断食が効果的だと。糖質制限だけでは効果不十分な人もいると。
日本人の場合はカナダ人と比べてそこまで強いインスリン抵抗性を持つ方は少ないかもしれませんが「絶対少ししか食べていないのに痩せない(筋肉ばかり減る)」という方はインスリン抵抗性がないかチェックしてみては?
そしてインスリン抵抗性が強いことはダイエットだけの問題ではないです。インスリンの効きが悪いから量で補うことになり、高インスリン血症になり、全身の動脈硬化が進行します!
自己流での断食は危険です!!
最後に。
血糖値を維持するシステムが正常な方ならちょっとばかり断食しても低血糖になる可能性は低いとは思いますが、聞きかじりで自己流の長期断食をするのは非常に危険です!
以前の私のように、じつはインスリン分泌不全があるのにスーグラなどを飲んでいたために血糖値が正常範囲内にあってうっかり気づかない場合もありますしね。
また断食中の水分や塩分摂取など、きちんと知っておかなければいけないこともあります。おすすめはジェイソン・ファン医師の「医者が教える健康断食」とても分厚い本で、これさえあれば他の断食本は何も要らないというぐらいすごいです。
お部屋がどうしようもないぐらい散らかって「汚部屋」「ゴミ屋敷」になってしまったのに「これ以上ゴミを持ち込まないようにするから」と言ってもそれだけではどうしようもないですよね?いったん部屋のゴミをすべて処分しなければ。長めの断食ってそんなイメージです。
試す方は健康状態に問題がないことを確認の上、医師の本をお読みになったうえで慎重にお試しくださいね!私や他の方が大丈夫だったからと言ってあなたもそうとは限らないので…
やってみたい方はきちんと勉強してくださいね!
糖尿病になってから長い方は血糖値を上げる仕組みが衰えていて低血糖になりやすい場合もあるのでくれぐれも気を付けてくださいね!