若い男性が糖尿病性ケトアシドーシスで死亡!
昔テレビで放送していた『最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学』という番組がとても面白くて大好きでした。
ちゃんと病院に行ったのに誤診されてしまい、その結果、最悪の結果に…というパターンも多くて「一般人にどうしろっていうのよ!」とやりきれない気持ちになったものです。
さて、『本当は怖い体重の減少~人気者の代償~』という回を覚えている方はいらっしゃるでしょうか?
30歳の肥満の男性がダイエット(といっても大して食事を減らしてない!)を始めたらどんどん体重が減るので良い気分で居たら、じつはそれは糖尿病の悪化によるものでした。
番組では「ケトン性昏睡」と言っていましたが、これは糖尿病性ケトアシドーシスで昏睡状態になったものと思われます。
糖尿病による昏睡の中でも特に2型糖尿病の高齢者が多く発症するものを「非ケトン性高浸透圧性昏睡」と呼んで区別しますからね。
男性は昏睡状態になったまま長時間放置されていたため、そのまま亡くなってしまったという話でした。怖いですよね!!
若い人が亡くなることもあるんですね…
その方は自分が糖尿病だということをご存じなかったみたいなの。
糖尿病性ケトアシドーシスの死亡率はどれぐらい?
私も糖尿病性ケトアシドーシスになりましたが、昏睡状態になる前に「やばい、このままだと死ぬかもしれない!」と感じて夫に車で救急外来に連れて行ってくれるように頼みました。
そのまま緊急入院になりましたが、16日間の入院生活を経て無事に退院することが出来ました。助けてくださった医師、看護師のみなさんに感謝しています。
で、番組で取り上げたケースのように糖尿病性ケトアシドーシスで亡くなってしまう可能性はどのぐらいあるのでしょうか?
MSDマニュアルプロフェッショナル版によれば『糖尿病性ケトアシドーシスによる全死亡率は1%未満であるが,高齢者や生命を脅かす他の病態がある患者では死亡率がより高くなる。入院時のショックまたは昏睡は予後不良を示す。主な死因は,循環虚脱,低カリウム血症,および感染症である。脳浮腫を伴う小児のうち約57%は完全に回復し,21%は神経学的後遺症を残し,21%は死亡する』とあります。
つまり昏睡状態で搬送されてきた場合や子供さんで脳浮腫を伴う場合には死亡率が高くなるけれど、きちんと治療がされれば全体としては死亡率は1%未満ということでしょうか。
私は当時の主治医から「あなたのは教科書通りの典型的な糖尿病性ケトアシドーシス」と言われました。
2型糖尿病を発症していながら主婦だったために検査を受ける機会がなく(パート先のスポーツクラブでも血液検査を伴う健康診断は社員さんだけだった)運動しているから大丈夫だろうと思っていました。
そして義父が突然病死したことやその後家族のインフルエンザ?がうつって寝込んで胃腸に優しそうなイメージの糖質ばかりを口にしたことが最後のダメ押しとなり発症したのでしょう。
とにかく、昏睡状態に陥る前に治療を開始すればたいてい問題なく回復することができるということで…「死亡率1%未満」が多いか少ないか、あなたはどう思われますか?
糖尿病性ケトアシドーシスにならないためには?
糖尿病性ケトアシドーシスは、インスリンがほとんど働かないことで引き起こされます。だから最も多いのは、1型糖尿病患者さんがインスリンを打ち忘れたケースだそうです。
2型糖尿病でも、感染症などの病気ではストレス状態となり、糖尿病性ケトアシドーシスになることがあるそうです。
また糖尿病薬のSGLT2阻害薬(商品名スーグラなど)によっても糖尿病性ケトアシドーシスが引き起こされることがあるそうですよ。
よく「糖質制限するとケトン体が増えるから危ない」なんて言う人が居ますが、病的なケトアシドーシスの状態とは「ケトン体が増加する理由」が全然違います。
インスリンが働かない状態では血糖をまったくエネルギーとして使えないので、仕方なくケトン体が増えます、異常な増加です。
しかしインスリンがある程度以上きちんと働いている状態では血糖をエネルギーとして使えますし、ケトン体が増えてもある程度の量で止まりますし、呼吸による代償が行われるので血液が酸性に傾くこともありません。
ただし2型糖尿病でもかなりインスリンの分泌が悪化している状態では1型糖尿病患者さんに近い状態になっているので、糖質制限やSGLT2阻害剤の使用も主治医とよく相談して慎重になさったほうがいいかもしれませんね。
糖尿病性ケトアシドーシスに気をつけなきゃいけませんね!
高血糖の他に腹痛、吐き気、呼吸の苦しさ、急激な体重減少などがあればできるだけ早く病院へ!