お江戸の「べらぼう」な糖尿病事情

お江戸のべらぼうな糖尿病事情

NHK大河ドラマ「べらぼう」観てますか?

横浜流星さん主演のNHK大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」を毎週楽しみに観ています。ヤスケンさんの平賀源内もなかなか良い味を出してますよね♪

「べらぼう」は江戸時代中期が舞台なのですが、ふと「当時の糖尿病事情は?」と気になりました。

江戸時代と言えば「肉や卵は今のようには食べられず、大量の白米を中心に食べていた」というイメージがありますね。

「江戸時代はお米ばかり食べていたが糖尿病はなかった、だからお米は糖尿病の原因ではないのだ」とおっしゃる方も。実際のところどうなのでしょう?

 

にゃご
にゃご

「昔は生活習慣病はなかった」って言う人いるね!

よっしー
よっしー

全くいなかった、ってことはないはずだわ。

江戸時代にも糖尿病患者は存在した!

じつは江戸時代の日本には糖尿病患者は存在しました。というより、もっと昔、平安時代には藤原道長とその一族の何人かが糖尿病(親族内で患者が発生したことから1型ではなく2型と思われる)でした

江戸の人口は約15万人から50万人にまで増加したと言われていますが、日本人の場合、1型糖尿病の有病率は0.09%だそうです。つまり江戸時代には135~450人ぐらい1型糖尿病患者が居たと考えられますが、当時はまだインスリン注射はありませんから子供のうちに亡くなる患者が多かったでしょうね。

さて、江戸時代には糖尿病合併症と思われる記録が残っていますが、上記の理由から2型糖尿病患者もそれなりに存在したと思われます。

なぜなら当時、治療ができない1型糖尿病患者は慢性の糖尿病合併症が出るよりも前に命を落としていた方が多かったでしょうから。

 



 

江戸時代前期に書かれた「病名彙解 (びょうめいいかい)」には「のどが渇く、多飲多尿、腫れ物ができやすい」という症状が書かれています。

江戸時代中期に書かれた「一本堂行余医言」 には上記に加え「食べても飢餓が続く、やせ衰える、乾燥肌や甘い尿、目の症状、いちどこの病気にかかるとほとんどの者は治らない」等の記述があります。

江戸時代後期に書かれた「蘭方枢機 (らんぽうすうき)」には運動療法の必要性が、「扶氏経験遺訓 (ふしけいけんいくん)」には多尿と尿糖検査について書かれておりました。

2型糖尿病を発症しても、最初の数年は自覚症状などほとんどない方が多いです。糖尿病網膜症や糖尿病腎症などの合併症を発症しても、かなり進行するまではまったくなんともなかったりします。

2型糖尿病は私のように20代で妊娠糖尿病になったのがきっかけで若くしてなることもありますが、一般的には40歳以降に発症する人が多い病気です。

50歳以降に糖尿病の自覚症状が出てくる人が多く、なおかつ他の伝染病などで若くして亡くなることも多かった時代とは言え、それなりに2型糖尿病患者も存在したと考えられるのは興味深いですよね。

 

江戸の庶民の食生活は?

江戸時代、庶民は白米をたくさん食べ、大豆製品や野菜、江戸時代後期からは焼き魚なども食べられるようになったようです。

最初は日本人は1日2食だったのが、今のように1日3食になったのは江戸時代中期からだそうです。

当時は現代人よりたくさん歩いたり肉体労働していたとはいえ、白米をたっぷり食べた後に人々の食後血糖値がどのぐらい上がっていたかは今となってはわかりません。当時の生活をそっくり真似してみたら分かるかもしれませんね。


 

そして糖尿病はともかく、肉をあまり食べずに白米を多く食べていたことからビタミンB1(豚肉などに多い、糖質代謝に必要)が欠乏して「脚気」になる人が大量にいたのです。

脚気が重症になると心不全で亡くなることもありました。第14代将軍・徳川家茂も脚気により21歳の若さで亡くなったとされます。

「昔は生活習慣病なんてなかった」というのは間違いで、脚気も立派な生活習慣病ですし、生活習慣病の代表のように言われる2型糖尿病患者も間違いなく存在したのです、それなりには。

 

江戸時代をそのまま真似しないほうがいいかもしれない

江戸時代にも2型糖尿病や脚気など「生活習慣とかかわりのある病気」は存在しました。きっと他にもいろいろあったでしょう。

だから当時の食生活をそのまま真似するのが最善とは思えませんし、運動量も当時ほどではない方が多いのでは?

ある意味、2型糖尿病やがん、認知症などは「長生きする人が増える」と当然のように患者も増える病気であるので、今より患者が少なかった(かもしれない)からといって必ずしも昔が正解とは言えないのです。

 



 

昔は発症してしまうと長く生きられなかった1型糖尿病患者さんがインスリン注射の登場によって長生きできるようになったのはとても画期的なことです。

しかし2型糖尿病の場合は特に「インスリンを補えばor分泌させれば何も問題なし」ではなく、インスリンの効きが悪いのをそのままにしていれば高インスリン血症による合併症の危険性リスクが高まります。

「昔は良かった」「今は新しい薬があるのだから何を食べても大丈夫」も、どちらも極端かも。自分の場合はどうなのか、どうしたらいいのかよく考えましょうね!

 

にゃご
にゃご

糖尿病って昔からある病気なんだね!

よっしー
よっしー

江戸時代は自分が糖尿病だと気づく前に亡くなった方も多かったかもしれないわね。

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