誰でも簡単に良くなるなら苦労はしない!?
「糖尿病(ここでは2型糖尿病を指します)患者さんはバランスよく食べて適度な運動をしましょう」「野菜を食べましょう」「なるべく歩きましょう」「よく噛んで食べましょう」「玄米なら大丈夫です」…
それらの方法で簡単に血糖値が改善する方もたくさんいらっしゃることは存じておりますが、そうではない方も多いのに「ああもう!そんな分かり切ったことばかり言わないでくれる!?」と正直うんざりすることもありますよね。
マンガは、私が通っている病院の公開糖尿病教室で若い管理栄養士さんがお話をなさったとき、他の患者さんから「ご飯を食べるとすごく血糖値が上がるんですけど、どうしてインスリン打ってまで食べなきゃいけないんですか?」と突っ込まれて言葉に詰まったというエピソードが元です。
マンガに登場する男性患者さんは、何も若い甘栗ミカコ先生に意地悪をしてやろうと思って質問したわけではありません。
2型糖尿病の当事者であり指導医の佐賀美京香先生(と言う名前に決めましたwww何となく「京」の字を入れたかった)が「色々な方がいるわ」と話しています。
本当は最初から「これだけでは不十分な方もいらっしゃいますので、その場合は主治医と相談しましょう」などと言うことができれば良かったかなと思ったりして。
きっぱり断言されると、その方法で効果が無い人は見放されたような気持になるかもしれませんね。
そうなのよ。持論以外は全否定っていう専門家もいらっしゃるからね~。そう簡単なら誰も苦労しないわよ!
「エビデンスに基づく方法」が全患者に効くわけではない
これまでに何度も書いていますが「エビデンスに基づく〇〇」がすべての患者に同じように劇的な効果を示すわけではありません。
安田大サーカスのクロちゃんのように、たった5日間の糖尿病教育入院で体重が3キロ以上も減って血糖値が172から92に大幅に改善する方も確かにいらっしゃいます。その後食事療法を継続できるかどうかは別として…
もしかしたら私が知らないだけで、2型糖尿病患者の過半数はクロちゃんのようなタイプの患者さんなのかもしれません。
でも私が知っているだけでも「そうではないタイプの患者さん」もかなりいらっしゃるんですけど…明らかに遺伝がかかわっているケースです。
医師は神様ではない以上、少しでも効く可能性が高いと思われる治療法を選択しなければいけないのは分かります。
ただ「エビデンス!」を強調するあまり「この方法だけが正しいのです!」になってしまっている専門家の方もいらっしゃる。その方法で効果が出ない患者は切り捨てられているような気持ちになります。
マンガに登場する男性患者さんは本当に困っているから質問したはずですが「めんどくさいうるさい患者だな」と思われるとしたら…残念です。
ただ「おかしいな、この方法で良くなると言われたのに自分にはあまり効果が無い、どうしたらいいんだろう」と困っているだけなのに…ね。
いろいろな患者が居るということを分かってほしい
甘栗ミカコ先生はまだ若くてそれほど経験を積んだわけではないので、ある意味教科書的なことしか言えないのは仕方がないかもしれません。
また「いちいち少数派の方のことを配慮した発言はできないので、どうしても一般的なことしか言えない」という話も聞きました。やむを得ないことだと思います。
ただ、「そうか、適度な運動とバランスの良い食事にすれば2型糖尿病は改善するんだ!じゃあなかなか良くならない人たちは努力が足りないんだ~」と思う人が居たら悲しいです。
私は高校時代、物理が一番苦手でした。問題集を3回まじめにやったのに1回も終わらせてない友達よりもテストの点数が悪かったときはホント、悔しかったですよ。
誰もが同じだけ努力しても同じだけ効果が出るわけではないということ、そんなに一生懸命やらなくても良い結果が出る人もいます。
あなたが頑張ってもなかなか数値が良くならないとしても、あなたが主治医の先生より努力していないわけではありません。先生は糖尿病になりにくい体質だからお菓子を食べていても平気なだけかもしれません。
自分の持論を「これがエビデンスに基づいた一番正しい方法!」「2型糖尿病はとにかく〇〇すればいい!」などと誰にでも同じことが当てはまるかのように断言する方は苦手です…
標準的な方法ではなかなかうまくいかない患者もいるのだ、ということを分かってくれる医師の方たちには本当に感謝しかありません。自分に合った方法で頑張るしかないのですから。
同じ方法でみんなうまくいくなら、みんな教育入院させれば必ず改善するはずですよね!?
実際は教育入院で血糖値が下がる患者ばかりではない、と複数の糖尿病専門医の先生から話を聞いているわ。