「医原病」ってなんだ?
以前にも記事にしたことがありますが、私が持っている糖尿病専門医向けの古い医学書『糖尿病ワンポイントアドバイス(医歯薬出版株式会社)』には、入院して糖尿病治療を開始した後に糖尿病網膜症が悪化し、それまで出ていなかったタンパク尿も出るようになった患者さんの症例が紹介されています(328~329ページ)。
そしてそれは『糖尿病治療に携わる者として、少なくとも医原性の合併症だけは作りたくないものである(329ページ)』という文章で締めくくられていました。
このように、「医原病」とは一般的には医療行為が原因で病気になることを指します。薬の副作用は分かりやすいでしょう。医療ミスもそうです。
残念ながら、どんな薬でも絶対に副作用が出ないとは言い切れません。リスクが高そうな人をあらかじめ予想できることはできますが、「あなたは絶対に副作用は出ないでしょう」と言い当てることはできないでしょうね。
有名なものに「ステロイド糖尿病」があります。特にもともと糖尿病になりやすい体質の方がステロイドを長期使用すると糖尿病を発症することがあり、ステロイドの使用を中止しても糖尿病が治らない場合もあるんだそうです💦
もちろん、少数の方に副作用が出るからと言って薬を一切使わないというわけにはいきません。多くの方にはなんともないのかもしれません。
でもね、たとえ可能性は高くないとしてもそのようなことが起き得るということは知っておかなければいけないのですよ。たまたま自分に当たってしまったら…そうでしょう?
自分が大丈夫だったから他の人も大丈夫とは言えないですよね。
その通りよ。薬が良い事しかないと考えるのは誤りね。
糖尿病治療開始後に糖尿病網膜症!?
私は20代で2度妊娠糖尿病になりましたが、その後いつの間にか2型糖尿病になっていて気づくのが遅れてしまい、緊急入院した時はすでに糖尿病神経障害と糖尿病腎症と言われました。
しかし、とても血糖値が高い状態だったにも関わらず、入院4日目に受けた眼底検査では「異常なし、次は1年後でいい」と言われたのです。眼圧検査も何も言われませんでした。
当時の若い主治医の「えっ眼科の先生に1年後でいいと言われた?ボクは半年後ぐらいに受診したほうがいいと思うなぁ…目が見えなくなったら大変だから眼科へはきちんと通ってね」という言葉が妙に気になりました💦
16日間の入院を終えて退院して間もなく、左目の見え方に違和感を感じました。3か所、白っぽく抜けて見えない部分があったのです。しかし数日でまた見えるようになったのでそのまま放置しました。
半年後に何気なく近所の眼科を受診したところ「眼圧が高い、入院した病院では何も言われなかったの!?糖尿病網膜症(眼底出血の跡)、黄斑浮腫(網膜の黄斑のむくみ)もある」と言われたのです。
「糖尿病治療によって急速に血糖値が改善すると糖尿病網膜症を発症・悪化しやすい」とされますが、江部康二医師によれば食事の改善「だけ」で薬物を使わずに血糖値が改善した場合は基本的に糖尿病網膜症の悪化はないそうです。
私は入院中は強化インスリン療法(1日4回、2種類のインスリンを注射して健常者のインスリン分泌に近づける)をしており、退院後は糖質制限に切り替えることを主治医に許可してもらいました。
退院の2日前からインスリンは寝る前のランタスのみになり、代わりにDPP-4阻害の薬のグラクティブが処方されました。目の悪化はこれらの影響があったのでしょうか?
インスリンと薬の副作用について
副作用は誰にでも起こるものではなく、何ともない方のほうが多いです。しかし実際に良くない事が起こる人がいるのは事実なので、当時使用していたランタスとグラクティブについて調べてみることにします。
上は日経メディカル様の処方薬大辞典から引用させていただいた、インスリン「ランタス注ソロスター」の副作用についての記述です。
「主な副作用」の筆頭に「糖尿病網膜症の顕在化」「糖尿病網膜症憎悪」と書かれていますよね!
上も処方薬大辞典から引用させていただいた、糖尿病薬グラクティブの副作用です。「主な副作用」のところに「糖尿病網膜症悪化」とあります。
「たまたま偶然薬の使用後にそうなっただけ」であれば「主な副作用」として掲載されることはありません。やはり一部の患者にはそのようなことが起こるということでしょう。
ここで「もともと糖尿病の患者だったからたまたまそのタイミングで網膜症になっただけで副作用じゃないだろう!」と思う方のために他の糖尿病薬についても調べてみました。
上はメトグルコの副作用ですが、糖尿病網膜症に関する記述は見られないですね…下痢や吐き気などの胃腸症状が出る人はわりといるそうですが、私の場合はまったくなかったです。
上はグラクティブと同じDPP-4阻害薬のジャヌビアの副作用ですが、やはり主な副作用として「糖尿病網膜症悪化」と書かれているのが気になります。
DPP-4阻害薬は食後にインスリンの分泌を増やして血糖値を下げる薬ですが、2型糖尿病ではインスリンの効きが良くないことがよくあり、血糖値を下げるために健常者よりも大量のインスリンが必要になります。
高インスリン血症は動脈硬化が進行する原因の一つと考えられていますし、しょっちゅう低血糖を繰り返すことは糖尿病網膜症を悪化させるそうです。このあたりが関係しているのかもしれませんね。
「そんなことあるわけないでしょう」と言わないで!
インスリンやDPP-4阻害薬を使用してから糖尿病網膜症が悪化したという方は今までに何人も見かけたのですが、医師からは「関係ないです」「そんなことあるわけないでしょう」などと言われたりしたそうです。
でも別の病院に変わったら薬が原因と言われたという方もいらっしゃいましたし、薬の添付文書にも副作用としてきちんと載っています。
この記事を書いている時点だと新型コロナのワクチン接種後の死亡が「接種とは関係ない、ただの偶然だ」と突っぱねる医師を見かけます💦ワクチンを勧める医師なので当然と言えば当然ですけども。
ただ死亡までは至らなくても、2度目の接種後に何らかの強い副反応が出て、それを抑えるための薬を少なくとも数日以上前から飲み続けている…という若い方をリアルで知っています。とても心配です。
眼科の検査でも使用する造影剤のフルオレセインでアナフィラキシーショックになり、死亡する方もいらっしゃるそうです。
たとえ確率はかなり低いとしても、そのようなことが起きる患者がいるのは事実なのですから。
どんな薬でも必ず副作用はあるので「絶対に安全で何も起こりません」と断言するほうがおかしいと思いますよ。
困ったことが起きてしまった人たちがいるのに目をつぶって良い事しか言わないと、まるでセールスマンのような印象を与えてしまうと思うのですが💦
薬には副作用もあるけれど、リスクとベネフィットを考えて慎重に使用するものではないでしょうか?良い事しかないかのように説明するのはどうかと思います。
医原病から身を守る方法は?
薬の副作用はどんなに気を付けていても一定の割合で必ず起きてしまいます。隣のおじさんがなんともなかったとしてもあなたは同じ薬で副作用が出るかもしれません。
また医療ミスなども、医師が人間である以上やはり時に起きてしまうと思うんですよね…少なくとも患者にはどうすることもできないでしょう。誤診もミスも、1度もしたことがない先生はおそらくいないのでは?
いまだに「難しい事は分かりませ~ん。すべて先生にお任せします♪」という患者さんもいらっしゃると思います。
しかしそれでは、何か良くない事が起きても事態が深刻になるまで気づくことが出来ないのではないでしょうか?
息子たちは小さい頃は何かと病弱で病院通いをしていたのですが(副鼻腔炎で画像検査をしたこともあります)ある時「これは薬の副作用では?」と思う症状が出たことがあります。
医師からはそのような事が起きる可能性については何も説明がなかったのですが「これはこの薬の副作用ではありませんか?」と質問したところ、確かにそのような報告はあり、検査の結果そのようだということになり、薬を他のものに変えたらすっきり症状がなくなったということがありました。
何か副作用が起きても、血液検査や尿検査の数値には異常が表れない場合もあります。その場合、何も言わなければいつまでも気づいてもらえません。
「何かあれば医師がすぐ気づいてくれるだろう、医師が何も言わないのなら問題はないのだろう」と思っていると大変です!やはり患者も勉強しなければね。
自分も勉強しておけばいち早く異変に気付くことが出来ますね!
別に医師にいちゃもんをつけるわけじゃないわ。変だと思ったことは相談しなければいけないもんね!