インスリンを注射すれば確実に血糖値が下がる件について

インスリンを打てば確実に血糖値は下がるけれど

インスリンを注射すればほぼ確実に血糖値が下がるが…

「インスリンを打てば誰でも確実に血糖値が下がるんですよ」というのを見かけました。確かにその通りで、インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンですからね。

ちなみに、ごくまれにではありますが、インスリン注射でもあまり血糖値を下げられない病気の場合があります。今回はこれについては割愛します。

インスリンをちょうどいい量注射すれば確実に血糖値は下がるわけですが、素人の私にここで素朴な疑問が生じました。

 

インスリン漫画

 

「糖尿病合併症の原因は高血糖、誰でもインスリンを注射すれば確実に血糖値が下がる、じゃあどうしてインスリン注射をしていても糖尿病合併症が進行していく方もいるの?」と。

血糖値が高いのは確かに良くないと思いますが、では血糖値さえ下げれば万事OK…というわけにはいかないのではないでしょうか?

インスリンで血糖値を下げればいいなら、インスリンで治療している人たちはそうでない人と比較して糖尿病合併症がかなり少ないはずだと思うのですが…

 

にゃご
にゃご

あ、確かに…悪化するのは治療をさぼった人ばかりじゃないニャー。

よっしー
よっしー

インスリンを打つだけで確実に合併症を防げるなら私もあのまま継続していたと思うわ!

インスリンで糖尿病合併症をどの程度抑制できている?

あなたは大丈夫?日本人の1型と2型の糖尿病合併症の実態はこれだ!
1型糖尿病患者と2型糖尿病患者、日本ではどちらがより糖尿病合併症になりやすいかご存知ですか?

 

日本における糖尿病合併症の実態とそれらの危険因子に関する全国規模の前向き観察研究が2007年に開始され、病院に通院中の40~75歳未満の1型・2型糖尿病患者6338名を追跡したそうです。

このうち93.8%が2型糖尿病で残り6.2%が1型糖尿病の患者さんですが、発症してからの期間の平均はいずれも同じ程度(11年前後)だそうです。

1型糖尿病患者さんで糖尿病神経障害のある方は25.5%・糖尿病網膜症のある方は22.4%・糖尿病腎症のある方は18.5%でした。

1型糖尿病患者さんのうち、これら3大合併症をすべて持つ方は4.5%で逆に3大合併症のいずれもない方は53.9%でした。

 



 

一方、2型糖尿病患者さんで糖尿病神経障害のある方は34.3%・糖尿病網膜症のある方は27.4%・糖尿病腎症のある方は30.2%でした。

2型糖尿病患者さんのうち、3大合併症をすべて持つ方は6.4%で逆に3大合併症のいずれもない方は39.4%でした。

1型糖尿病患者のHbA1cは7.0%未満が25%、7.0~7.9%が40%、8.0%以上が35%でした。2型糖尿病患者ではHbA1c値7.0%未満40.6%、7.0~7.9%は37.2%、8.0%以上が22.2%でした。

…病気になってからの期間が同じで2型糖尿病患者のほうが血糖値が低めにコントロールされているにもかかわらず糖尿病合併症が多いのは、「HbA1cだけが糖尿病合併症の進行にかかわっている」わけではないということではありませんか?

 

インスリンで血糖値を下げれば安心できるか?

インスリン注射で問題になることといえば「低血糖」でしょう。外から注射で補ったインスリンが食事に対して多すぎたりタイミングがズレると低血糖の危険があります。

だからといっていつも少なめに注射すれば血糖値は高くなりますし、低血糖も高血糖も起こさないようにコントロールするのはかなり難しそうですね。

重い低血糖が起こると即・生命にかかわりますが、長期的には低血糖によって不整脈、狭心症、心筋梗塞などの病気が誘発される、あるいは悪化することが報告されています

また低血糖が眼底出血のトリガーとなることが報告されており、糖尿病網膜症のある方は特に気を付けなければいけません。

 


 

また肥満や糖尿病の有無にかかわらず、高インスリン血症ではガン死亡率が有意に高くなるそうです。

インスリン抵抗性がある2型糖尿病患者は高インスリン血症になりやすく、またそうではない糖尿病患者もインスリン注射によって血糖値の乱高下が起きやすくなります。

血糖値が変動する原因は食べ物だけではありませんが、少しでも乱高下を減らすためには何ができるでしょうか。

 

インスリンを打てばそれで良いとは限らない

1型糖尿病患者さんよりもやや平均HbA1cが低い2型糖尿病患者さんたちのほうが糖尿病合併症が多いのにはいろいろな原因が考えられます。

それは2型糖尿病患者は発見が遅れてしまうケースもあるせいかもしれませんし、2型糖尿病患者ではインスリン抵抗性があるのでより多くのインスリンを注射するせいかもしれません。

インスリンは人体にとってとても重要なホルモンなので、特に1型糖尿病患者さんにとってものすごく重要なものであるインスリン注射を誰も否定できません。

でも…すべての糖尿病患者にとって「インスリンを打って血糖値を下げればそれでいいじゃない♪」というわけではないのは確かです。

 

 

2型糖尿病は単に「インスリンの分泌量が足りない」場合だけではなくてインスリンの効きが悪かったり、インスリンが分泌されるタイミングが遅かったり、個人差もありますがそのようなことが重なっています。

また同じ糖尿病患者でも糖尿病腎症などを発症しやすい遺伝子を持つ方とそうでもない方がいらっしゃいます。

健常者の方はインスリンの感受性が良いので、同じものを食べても2型糖尿病患者より少量のインスリンでスッと血糖値が下がります。

「インスリンを打てば必ず血糖値を下げられますよ」の前にまず、インスリンの必要量がなるべく少なく済むための努力をしてみるべきでしょう。

 

にゃご
にゃご

だって健康な人はインスリン抵抗性じゃないもんニャア。

よっしー
よっしー

そこをそのままにしてインスリンを打ってもダメな場合もあると思うのよね。

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