日本では糖質制限はまだ公式には認められていません
私がまだ小学生の時に父が2型糖尿病と診断されましたが、父は特別太っていたようには思えませんでした。少しぽっちゃり程度?
真面目な父は医師に「とにかく薬やインスリンは回避したい、頑張りますから」と必死に頼み(当時は薬と言えばSU剤で、インスリン注射は最後の手段と思われていたらしい)、すぐにジムに入会しました。
カロリー制限をしてジムで水泳や筋トレに励む父はどんどん痩せていき「痩せすぎじゃないのかなぁ」と思う体型になってもまだ血糖値は「優」にはなりませんでした。
痩せてしまってもなおカロリー制限をしなければいけないと医師に言われ、血糖値もある程度以上は下がらない、糖尿病が寛解しなかった父。いったいなぜでしょう?
アメリカ糖尿病学会は段階的に糖質制限を容認してきており、とうとう2019年に糖質制限を大きく推進する内容を発表しました。
カナダ糖尿病学会も、まだ完全ではありませんがアメリカの後を追うように糖質制限を容認する方向に動き始めました。
イギリス糖尿病学会のサイトにも「糖質制限で2型糖尿病患者の一部が2年後に糖尿病が寛解した」として糖質制限を食事療法の選択肢の一つとして認めているようですね。公式に寛解と認められているのはすごいです!
ところが、どういうわけか先進国のはずの日本ではいまだにカロリー制限食だけが唯一無二の食事療法として勧められているようです…あまり効果がない方も多いのに。
日本糖尿病学会の山田悟医師によれば、「カロリー制限食が糖尿病の食事療法としてもっとも優れている」と言える確固たるエビデンスは存在しないそうです。
ただし山田医師も「肥満の糖尿病患者がダイエットするという意味ではカロリー制限食にも意味がある」とおっしゃっています。
イギリスでは短期間で約15kg減量すると2型糖尿病が寛解する可能性が大幅に向上することが分かったそうです。
糖質の摂取量を1日あたり30g以下に制限する(かなりストイックな糖質制限、江部康二医師のスーパー糖質制限の半量!)ダイエットを行い、その後個人の限界と目標に合わせて徐々に制限を緩めた患者たちの一部は2年後に糖尿病が寛解したそうです。
まあイギリスはヨーロッパでは最悪の肥満大国と言われているぐらい肥満の方が多いので、カロリー制限だろうと糖質制限だろうととにかくダイエットして痩せちゃえばいいわけです。
日本人はイギリスやアメリカよりも高度肥満の方は少ないはずなんですが…
それなのにカロリー制限「しか」認めないっていうのは疑問に感じるわね。
食べ過ぎて発症した患者には効果抜群のカロリー制限食
私は糖質制限をしていますが、それは糖尿病と診断される15年ぐらい前から脂質制限と筋トレなどの運動と玄米食をしていたにもかかわらず発症してしまったからです。
だからといって脂質制限、筋トレ、玄米食が誰にとっても無意味だとは思いません。効果がある方もいらっしゃるからです。自分にとって効果があるもの以外は全否定しちゃう人たちは「信者」ですからね。
5年ちょい前に糖尿病性ケトアシドーシスで入院した時に病院の食事を見てまず私が思ったのが「これで良くなる気がしない」ということでした。申し訳ないですけど。
だって、もともとそんなにたくさん食べていたわけではなかったうえ、玄米食ではなく白米だし、むしろ私が食べていた食事と比べて野菜や青魚は少ないし…
でも「カツカレーをお代わりしてコーラを1日1.5リットル飲み、おやつに巨大カップ焼きそばを食べてました」みたいな方なら教育入院するだけで劇的に改善すると思います。
だからといってそういう方が自業自得で発症したというわけじゃないですよ。ストレスから糖質の過食に走ってしまう方は多いそうですし、ただ責めても何にもならないでしょう?
しかし「これぐらいまでなら食べても大丈夫」という限界量にはかなり個人差があるらしいので、病院食では効果がある人と無い人が居るのはむしろ当然のことと思わなければ。
糖質制限やカロリー制限、玄米食でも運動でもなんでもそうですけど、必ずしも全員に同じように効くわけではないのに「これがベストな方法で他はダメだ!」と言ってしまっていいのでしょうか?
私は糖質制限をしていますが、病気で糖質制限してはいけない方もいらっしゃいますし、どういうわけか正しく実践してもうまくいかない方もいらっしゃるということを知りました。
どの方法でもそれは同じで、効果がない人や実践してはいけない人、うまくいかない人は必ず存在します。どんな方法でもそれは変わりません。
だからこそ「選択肢」を増やせばその分救われる患者が増えると思うのですが…なぜか「この方法だけが正解で他はダメです」と言いたがる人や団体だらけな日本ですね。
何らかの既得権益を守ろうとして反対する人たちもいらっしゃいますが、私たち患者の健康には何の関係もないことなのです。選択肢が増えてなぜ困るのでしょう?
真実はいつもひとつとは限らない…
名作アニメ『名探偵コナン』の主人公コナン君の決め台詞は「真実はいつもひとつ!」ですけど、糖尿病に関しては必ずしも「ひとつ」ではないのではないでしょうか?
いろいろな原因で糖尿病を発症した人が居て、どれぐらい食べても大丈夫かの限界量も異なりますし体型や遺伝子やライフスタイルや他の持病や糖尿病合併症の有無など、挙げればキリがありません。
患者にとって糖尿病食事療法の選択肢が増えることは喜ばしいことのはずなのですが、中には「自分が実践している方法と違う方法は許せない!」と感じてしまう方もいらっしゃるのかも?
最初はAという方法にはまり「Aをやらない人はバカだね」と言っていたのに、Bに「乗り換え」たとたんに「Bは素晴らしい、Aをやっている人はバカだね」と言い出す方も多数。やっていることは結局、同じなのね…対象が変わっただけ。
また「今までと違う食事療法が主流になったら、うちで販売している商品の売り上げが落ちるじゃないか!」という理由で反対なさる方もそりゃいらっしゃるでしょう。仕方がないことです。
カロリー制限で痩せて糖尿病が良くなる方もたくさんいらっしゃいますし、これまで普通の人の2倍ぐらい食べていた人がカロリー制限すれば糖質摂取量も半分ぐらいに減るので良くなるはずです。
そういう意味でカロリー制限が糖尿病の食事療法として無意味だとは思いません。問題は「それでは効果がない人もたくさんいるのに、どういう事情か他の方法を一切認めないこと」です。
かつての鎖国の時代じゃあるまいし、諸外国の動きを知りながら日本が意地を張って「カロリー制限以外は絶対に認めないぞ!」と言い続けることは難しいでしょう。
日本がお米の国だからと言っていつまでも意地を張り続けるわけにはいかないでしょうね。
食べても大丈夫な方、食べたい方は好きなだけ食べたらいいのよ。だけど食べない自由も認めてくれなきゃね!