1型糖尿病の方が糖質制限をする意義は?

1型糖尿病の方が糖質制限をする意義とは

糖質制限は2型糖尿病患者だけのもの!?

日本でも「糖質制限」が糖尿病患者の血糖コントロールの手段としてかなり知られるようになりました。私が糖尿病と診断された5年半前と比べるとかなり広まりましたね。

しかし「2型糖尿病の患者には良いかもしれないけど1型糖尿病患者には危険だから絶対にダメだ!!」なんていう話も聞きます。

かつてSNSで1型糖尿病の患者さんたちにたくさん出会いましたが、その方たちの中には糖質制限をしていてとても血糖コントロールが良い方も何人もいらっしゃいましたが…?

 

1型糖尿病患者と糖質制限のマンガ

私はたぶん2型糖尿病だろうと言うことになっていますが、最初は「インスリン依存状態」であったため1型糖尿病を医師から疑われました。家族が2型で自分だけ1型…という方も確かにいらっしゃいますよね。

後の主治医いわく「重症すぎてどうせメトグルコなんか大して効きやしないと思ったから出さなかった」ほどの状態…それでも入院中に糖質制限を試したらうまくいったので、主治医は退院後も糖質制限することを許可してくれました。

当時は1型の方とほとんど変わらない状態だった私や1型糖尿病の友人たちは問題なく糖質制限ができましたが、2型糖尿病患者以上に「気を付けるべき点」はあると思います。

 

にゃご
にゃご

1型糖尿病の人は糖質制限はダメだ!ってたまに聞くニャア。

よっしー
よっしー

その意味をじっくり考えてみると「1型だから絶対にダメ」というわけではないことが分かると思うんだけどね。

1型糖尿病患者さんが糖質制限する理由は?

もともと甘いものが大好きだったりぽっちゃりめの方がたまたま2型糖尿病ではなく1型糖尿病になることはあると思いますけど、多くの場合、1型糖尿病の方は高度肥満ではなくインスリン抵抗性もないそうです。

ダイエット目的でないのなら、なぜ1型糖尿病患者さんの中にも糖質制限で頑張っている方たちがいらっしゃるのでしょうか?


 

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アメリカのバーンスタイン医師は、12歳の時に1型糖尿病を発症して当時の標準治療を受けており、30代の時には糖尿病合併症がたくさん出て苦しんでいらっしゃいました。

しかし奥様が医師であったことが幸いし、当時最先端の「自己血糖測定器」をいち早く使うことができ、血糖値を安定させるメソッドを編み出したのです。

それは「糖質制限(1日あたり糖質30g未満)」が基本で、運動やインスリンの感受性を高める飲み薬を利用してその人にとってなるべく最小限の量のインスリンを注射するものです。

よく言われるのが「糖質制限するからといってインスリン注射をゼロにすると危険だ!!」ということですが、バーンスタイン先生は決して注射ゼロではなく、上記の本によれば基礎インスリン6単位と少量の食事用インスリンを打っていらっしゃいます。



 

「糖質制限すれば1型糖尿病で自己分泌ゼロでもインスリン注射を完全にやめてもいいよ」とは私の知る限りどの先生もおっしゃっていないと思います。

外から注射したインスリンは、健康な方の体内で絶妙の量とタイミングで分泌されるインスリンとは完全に同じではありませんから、うっかり「打ちすぎる」と低血糖に陥る危険性があります。

たくさん糖質を食べる時にたくさんインスリンを打つのと、少し糖質を食べるために少量のインスリンを打つのとでは「読みが外れた」時のダメージが違うというわけです。

ダイエットするわけでもない1型糖尿病の方が糖質制限するのは、血糖値の乱高下を少しでも少なくして低血糖や糖尿病合併症の進行を防ぐためでしょう。

 

山田悟先生の「1型糖尿病患者の糖質制限」への見解は?

日本糖尿病学会の山田悟先生は昔、著書『糖質制限食のススメ』の中で「インスリン注射の受容ができていない1型糖尿病患者には糖質制限食を教えるのは良くない」とおっしゃっていました。

しかしコペンハーゲン病院で1型糖尿病患者さんを対象として行われたクロスオーバー試験(2つの方法、ここでは糖質制限食と高糖質食を2つのグループに交互に実施してもらい数値を比較する)の結果は驚くべきものでした。

どちらの食事でも平均血糖値はほぼ同じでしたが、糖質制限食では高血糖も低血糖も少なく、正常血糖範囲内(70~180mg/dL)にある時間帯も長いことが分かりました

そして山田先生は「インスリン注射をやめるような懸念がない限りにおいて、1型糖尿病患者にも積極的に糖質制限食を推奨してよいであろう」「1型糖尿病患者には応用カーボカウント指導後に糖質制限食を指導すべきである」とおっしゃっています。

 

糖質制限食は1型糖尿病にも勧められるか|ドクターズアイ 山田悟(糖尿病)|連載・特集|Medical Tribune

 

1型糖尿病の方はタンパク質や脂質の摂取によっても血糖値が変動しやすい点、食事とは無関係に血糖値が変動しやすいという点は2型糖尿病患者のそれよりはかなり難しいかもしれません。

そして1型糖尿病患者さんは普通はインスリン抵抗性はないので、足りないインスリンを注射で補うだけなら高インスリン血症になる心配はあまりないとも言えます。

ただ少しでも血糖値の乱高下を減らしたいので糖質制限で頑張ってみたい、という1型糖尿病患者さんの意思も尊重されるべきだと思います。

 

自己流の糖質制限はとても危険だから…

2型糖尿病の患者でも「自己流の糖質制限」は危険なのですが、インスリン注射をしている1型糖尿病患者さんの場合はさらに危険が伴います。

糖質制限するからと言って自己判断で注射量を減らしすぎて糖尿病性ケトアシドーシスになったりすると大変ですからね。

ただインスリンを誤って大量投与してしまうことによる事故は時々起きていますので、問題は糖質制限そのものではなくインスリンを注射しながら自己判断で勝手に量を調整するところにあるのではないかと思います。

 

 

1型糖尿病の患者さんが糖質制限をなさる場合は、まずバーンスタイン医師の本などを熟読して糖質制限に詳しい医師に診察してもらってよく相談すべきでしょう。

1型糖尿病患者さんを含め、糖尿病患者の血糖コントロールには複数の方法があってしかるべきだと思います。

選択肢が多いことは患者にとっては喜ばしいことのはず。患者ではない人たち(?)はどうだか知りませんけど…

しかしそのためには、糖質制限を知り尽くした医師がたくさんいなければいけません。早くそのようになって安全に糖質制限が行えるようになるといいのですが。

 

自己流の糖質制限は危険だから、1型糖尿病患者を正しく指導できる医師が必要!

 

にゃご
にゃご

勝手に注射をやめたり減らすと危険だから、主治医によく相談してからにしないとニャー。

よっしー
よっしー

私は入院中、主治医の許可を得て始めたのよ。そこまでは難しいかもしれないけど慎重にね!そして、どの方法を選ぶのもその方の自由なのよ。

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