Twitterですぱ郎さんの投稿を拝見して「そういえば以前、そんな話が有ったような気がする」とふと思い出しました。
そういえば昔、誰かの「糖質制限を推進する病院で体調を崩した患者が発生し、自分の病院にも何人も転院してきて大変」という主旨の発言を拝見したが、理由はわかったのだろうか、あれから入院した患者さん達はどうなったのだろうか。今も思い出しては心配になる。
— すぱ郎 (@supa_rou) October 27, 2020
すぱ郎さんがおっしゃる通り、もしそういうケースがあるのであれば原因をはっきりさせないと危険だなぁと思ってちょっと検索してみると、それらしき症例報告がヒットしました。
京都大学の先生方の症例報告『低炭水化物食開始に伴う急速なインスリン減量によりケトアシドーシスを発症した1型糖尿病の1例』です。
患者さんは、8歳の時に1型糖尿病と診断された19歳の女性(おそらくインスリンの自己分泌はもうなくなっていたのではないかと思います)。
その患者さんは食生活が乱れており、食事用のインスリンを毎食前14~18単位、食事とは無関係の持効型インスリンを毎晩20単位使用していてもHbA1cが15 %と悪い状態だったそうです。ちょうど糖尿病性ケトアシドーシスで入院した時の私と同じ数値ですね!
その血糖コントロールがかなり悪い状態の患者さんが糖質制限を指導する病院へ入院し、糖質制限を開始するにあたってインスリン注射をかなり減らした(食前ゼロ、持効型インスリン4~8単位)ところケトアシドーシスを起こしたのだそうです。
私は入院中に主治医に了解を得て糖質制限を開始しましたが、その時は食事前のインスリンはゼロにしましたが持効型インスリンはそれまでと同じ量を打ち、血糖値を測定しながら調整しました。また主治医の指示でDPP-4阻害剤も服用しました。
どういう理由で持効型インスリン14~18単位を4~8単位にまで減らしたのかは素人の私にはわかりませんけど、1型糖尿病の方でインスリンの自己分泌がゼロの場合はたとえ糖質制限をする場合でも食前のインスリンは少しは必要のようですし、持効型インスリンも食事と関係なく必要ではないでしょうか?
アメリカの1型糖尿病患者のバーンスタイン医師は1日当たり持効型インスリンは6単位しか注射なさっていないそうですけど、これは他の1型の方と比べてもかなり少ない量だそうで、それでは足りない方も多いと想像します。
今回の症例報告も『本症例から,1型糖尿病患者の低炭水化物食開始時にインスリン量を調整する際は,必要インスリン量の注意深い評価が不可欠であると考えられた』と〆られており、別に糖質制限そのものが悪いとは書かれていないんですよね。
私もこの患者さんと同じ数値でしたが、持効型インスリンは減らさなかったこと、インスリンの自己分泌が完全に枯渇しているわけではなかったこと、などの理由で何事もなかったのではないかと思います。
たまに誤解があるようですが「糖質制限をすればインスリン注射を必ずゼロにできる」ということではないんですよね💦
糖尿病薬もインスリン注射も、量や使用法を間違えれば時に死亡など深刻な事故が起こります。糖質制限も、正しく理解されてこのようなことが起こらないようにお願いしたいです。
そして正しく行ったとしても合わない方(何らかの疾患など)はいらっしゃいますので、他の食事療法と同じく万人に合うものではないということも忘れてはいけませんよね!
余談になりますが『厳密な糖質制限と持効型溶解インスリン1回法を約15年継続している罹病歴33年の1型糖尿病の1例』という症例報告も見つけました。
こちらはやはり子供のころに1型糖尿病を発症した患者さんで、途中から厳格な糖質制限+持効型インスリンに切り替えて動脈硬化もケトアシドーシスもなく15年間うまくいっているというものです。興味があればちょっと読んでみてくださいね!
1型糖尿病患者さんは特に気を付けて行ってくださいニャー!
そうね、あとは糖質制限を熟知した医師が増えてほしいわね。