何事も頑張らなくていい?
突然ですが、皆様は「糖質の摂り過ぎはいけません、お酒も控えましょう」という医師と「我慢はストレスになります。なんでも好きなものを食べていいんですよ」という医師、どちらが好きですか?
私は糖尿病合併症を進行させたくないので前者の医師を主治医にしたいですが、多くの方は後者を選ぶのではないでしょうか。いかがですか?
育児でも何でもそうですが「頑張り過ぎない〇〇」が好まれる時代だと思います。それは時代の流れでしょうし、頑張りすぎて心が壊れてしまうこともあるので良い面もあると思います。
ただ「頑張り過ぎない」ことを重視するあまり悪い結果になったら?また「頑張る人たち」を否定・攻撃するようになってしまったら?それは良くないと思いますね。
私は昔「お前らが頑張ってると自分が責められているように感じるからやめろ!努力できるかどうかも才能。頑張れない人もいるんだよ!」と言われたことがあります。
そんなことを言われても困ってしまいます、こちらは相手に「努力すること」を押し付けてはいないので。
それはともかく「頑張らなくていいよ、好きなものを食べていいよ(インスリンさえ打てば)、運動もしなくていいよ」と言ってくれる「優しい医師」が「良い医師」なのでしょうか?

厳しい先生よりは優しい先生の方が好かれそうだけど…

人当たりがいい先生が結果を出す名医かどうか、ね!
なぜ患者は甘やかしてくれる主治医を好むのか?
患者が自分を甘やかしてくれる主治医を好むのにはいろいろな理由があります。まず患者は持病があるだけで常に不安にさらされているわけで、医師から厳しくされるとさらに精神的に追い詰められてしまうことになります。
11年近く前に糖尿病と診断された時に診てくれた若い医師は「頑張り過ぎないでね。以前、頑張りすぎて途中で病院に来なくなっちゃった人がいたんだ」と悲しそうに話してくれました。真面目な方だったようで、追い詰められた気持ちになったのでしょう。
また、人は自分の好きなものや生活習慣を指摘されると傷つきがちです。たとえそれが病気に良くないとしても、です。
(甘いもの好きな先生は甘いものを悪く言わないのは当然かも…)
「あなたの好きなものは何でも食べていいんですよ」と言われると傷つかなくて済みます。「えー!あれもこれも食べていいんですね!?良かった!」ってよく見かけます。
そして患者にとって、日々「やらなければいけないこと」はなるべく少ない方がラクなはず。「あれもこれも頑張らなくていいんですよ」と言われる方が長く続けられると思うのは当然かも。
実際は「好きなものを食べていいんですよ」と指導することは必ずしも「あなたを理解しています、あなたを否定しません」という意味ではないと思うんです。
そう言っておけば患者から「良い先生だな」と思われるしラクだからっていうのもありますよね。嫌われたくないですもんね。
「薬さえ飲めば」「インスリンさえ打てば」OKではない
「今は昔と違ってよい薬があるからあまり食事制限しなくていい」「インスリンさえ打てば何でも好きなものを普通に食べられる」普通の糖尿病専門医の方がよくおっしゃることです。
なるほど、確かに1型糖尿病のお子さんなどには特に「みんなと同じものが食べられる」ことは精神的にも大きな利点です。良いことだと思います。
しかし、だからといって自分の意思でストイックに頑張る患者たちを否定するのはやめてほしいです。頑張ってるからって頑張らない人を否定しているわけではないので!
流行りのスイーツを食べられない人生に意味はないと思う患者もいれば、甘いものは要らないから目や腎臓を守りたいと思う患者もいるんです。自分もそうだから、とすべての患者が前者だと決めつけないでほしい。
また残念ながら「薬やインスリンさえ使えば100%糖尿病合併症を防げる」わけではないのは明らかです。皆がインスリン注射をしている1型さんの糖尿病合併症はゼロに近いですか?
2型糖尿病の場合はインスリンの効きが悪くなっている場合があるので、健康な方よりかなり大量のインスリンが必要になったりします。
インスリンはとても大事なホルモンですが、常に大量のインスリンが出ている(自己分泌であれ注射であれ)ことは動脈硬化など良くないこともあるのです。血糖値「だけ」下げればいいというものではないです。
1型さんでも、治療を開始すると太ってインスリンの効きが悪くなることがあるそうです。そうなると大量に注射をしなければいけなくなり、1型+2型のような状態に。決して「インスリンを打てば何でも好きに…」ではないです。
主治医が優しい=良いことばかりではない!
主治医が自分に甘いのは患者にとっては快適なことですが、困ったことに「良くないこと」も起きる可能性があります。
甘々な治療で上手くいっていればそれが最善でしょうけど、「頑張らなくていい」と思っているうちにじわじわと病気が悪化する可能性があります。そうなっても主治医は責任を取ってくれるわけではありません。
私は主治医の指示に従っていて失明したり腎不全になった方から話を聞きましたが、主治医は何も責任を取ってはくれなかったと。それはそうですよね。
もしあなたが「絵が上手になりたい」と思ってお金を払ってプロに絵を習い始めたとします。
「ここがダメですね、もっとこうしないと」と言われたら確かに心が折れるかもしれませんが「ああ~いいですねぇ、楽しく描くことが大事ですね♪無理はいけません」ばかり言われたら?
確かに楽しいかもしれませんが、ずっと絵が上手くならないまま月謝だけを支払い続けることになりませんか?それでいいですか?
こう言っては申し訳ないけど、お客さんに嫌われたくない、ずっとお月謝を支払って気持ちよく通ってほしいからと甘々なことしか言わない絵の先生もいると思いますよ。それは相手の上達を心から祈っているのとは違います。
「好きなものをなんでも食べていいよ」と言われるのが心地よいならそれでいいんです。だけど「糖尿病合併症をこれ以上進行させたくない!」など明確な目標がある「なら」ただ甘々なことを言ってくれるだけではダメなこともあるんじゃないでしょうか。

アハ…甘々なことを言ってくれる医師も不健康な場合があるよね。

厳しすぎると確かに続かないけど、甘いだけが良い先生じゃないのよ。






