食べたいもの=体に必要なものなの!?
「食べたいものは、体がそれを必要としているから食べたいのだ。オレは甘いものを食べたい。だから体には甘いものが必要なのだ」ということをおっしゃる方がいます。
同様に「ご飯を食べたいのは体がご飯を必要としているからだ、糖質制限は良くないんだ」とも。でも、本当にそうでしょうか?
そんな理屈が通るのなら、アルコール中毒患者がお酒を欲しがるのもニコチン中毒者がタバコを欲しがるのも体にそれが必要だからと言うことになってしまいますが…
まぁ「摂取しないと禁断症状が起こるから」という意味では、必要なのかもしれませんね、確かに…しかし健康な方にとってはまったく必要ではありません。
「食べたいから食べる」のではなく「体に必要だから食べるのだ!」と自分を正当化してしまうところに問題があるのかもしれません。
誰だって自分がやっていることは正しいと思いたいです。「本当は体に良くないのは分かっているけどやめられないんだよねぇ…」という正直な方もいらっしゃいますけどね。
依存症になると内なる「センサー」が狂う
本来、ヒトは他の動物と同じように自分にとって必要なものを必要なだけ食べてバランスを保つセンサー的なものを持っているんじゃないかと思います。
でも「自分の体のことは自分でちゃんとわかっている」「その時必要としているものが自然に食べたくなる」というのは、心身ともに完全に正常な状態の時だけでしょう。
体の発する「内なる声」を正確に聞き取るためのセンサーのようなものがあるとしても、そのセンサーがガタガタに狂ってしまっているような状況では、何の役にも立たないですよね。
ラットを実験で中毒状態にすると、ひたすら砂糖やサッカリン(砂糖の200倍以上の甘味があるカロリーゼロの人口甘味料)の入った水を欲しがるそうです。
中毒になってしまうと、それが本当に体にとって必要なものかどうか、もっと言えばそれが体に有害なものであってもやたらと欲しがるようになってしまうんですね。
依存症から抜け出すためには、まず自分が依存症であるということを自覚することが非常に大切だと思います。
「いやオレは依存症などではない!これは体にとって必要だから食べているのであって、決して依存なんかじゃないぞ」と考えているうちは絶対にやめられないでしょう。
あなたも私もみーんな依存症仲間♪
知り合いのある医師は糖尿病ではないのですが、患者さんに食事指導をしたら「先生、自分こそデブじゃん、先生に食事のことを言われても説得力がないよ」的なことを言われて大ショックで糖質制限を始めたそうです。
やっぱり、自分がそうだとなかなか患者さんに対してエラそうなことは言えないものですよね。たとえばタバコは健康には何もいいことがありませんが、医師なのにタバコをやめられない方もいらっしゃいます。
ただ、医師なのにタバコをやめられないという方は一般人と比較すれば少ないんですよね。喫煙する医師は9%だそうです。
問題は「糖質」です。糖質が大好きでどうしても減らせない医師はタバコをやめられない医師よりもはるかに多いはずです!!
しかもタバコと違って、本当に心の底から「糖質は大事なので絶対に糖質をしっかり摂取しなければいけない」と信じている医師や管理栄養士は相当たくさんいらっしゃいますね?
以前、病院の糖尿病教室で医師が糖質制限を批判されていたことがありましたが、その医師が売店で砂糖入りの飲み物を買っているのを見たので「ああ先生、本当に心の底からそう思っていらっしゃるんだわ…」と思いました。
病院で患者を指導する専門家の方たちの多くも、私たち患者と同じく糖質依存症と言っても差し支えないでしょう。だからほとんどの患者が糖質を減らせないのはむしろ当然の事かも。
自分を正当化するために自分に都合のいい話だけを鵜呑みにする
どうしてもご飯や甘い物が食べたくて仕方がない糖尿病患者がいるとします。きっとその方は糖尿病と診断されて大ショックでしょうし、何とかして血糖値を改善したいと思うはずです。
でも、「絶対に糖質は食べたい!」という思いがとても強いので、周囲で糖質制限をしてうまくいっている人が何人かいたとしても何かしらケチをつけて自分はやろうとしないでしょう。
そして自分と同じように糖質が大好きな医師や管理栄養士が「糖質制限はダメです」と言おうものなら「そうだそうだ!」と根拠は良く分からないけど喜ぶに違いありません。
Twitterでも「自分はせっかく糖質制限を頑張っているのに、糖質大好きな家族や友達がテレビでマウスの実験の話を見てドヤ顔で糖質制限は危険だからやめろと言ってくるので困った」という話を多数聞いております。
おそらくそのような方たちにとって、マウスよりもずっと自分たちに近いであろうイヌイットが肉や魚ばかり食べていた頃はほとんど糖尿病や心臓病やガンにならなかったという話は見えない、聞こえないことになっているのでしょう。
何か(仮にAとします)が好きで好きでしょうがない人は、数ある論文の中からわざわざ「Aが健康に良い」とか「Aを制限すると良くない」「AはBより優れている」という論文だけを引っ張ってきて「Aで病気のリスクが上がった」という論文は見なかったことにします。
でも日本の場合、医学研究の資金の半分は国ではなく民間から出ているんですよね…A関連の大企業が出資した研究なら、Aを肯定する結論になるのは当然じゃないですか?テレビの健康番組のスポンサーがA関連だったらAを否定する番組なんて放送できませんよね?
自分が依存症だと認めることは、あまり気分の良いことではありません。体に絶対に必要というわけではないけど何となく毎日飲み食いしてしまうものはすべて依存だと思います。
依存で食べているからと言って必ずしも完全にやめなければいけないものではありません。でも「これは必要だから食べているわけじゃなく、食べたいから食べてるんだ」と自覚があるのと無いのとでは、やはり違うと思います。
子供たちが依存症の大人になるのは大人の責任です
スーパーには、おそらくお孫さんのために山ほどのお菓子・ジュース・菓子パンなどを買うおじいちゃんおばあちゃんたちの姿が目立ちます。だって子供はそういうものを与えると喜びますものね。
ただ忘れてはいけないのは、「欲しがるもの ≠ 体が必要としているもの」ということ。それは子供だろうと大人だろうと変わりません。
必要ではないものの食べさせすぎは、その子にとって、かえって可哀想なことをしてしまうことになります。悪い習慣を身につけたままで大人になるからです。
子供の頃からずっと慣れ親しんで食べてきたものを大人になってからやめるのは、とても難しいことです。3年半前のよっしーのような危機的な状況にでもならない限り無理でしょう。
たまには、食べたいものを楽しんで食べることも大事です。ただ血糖値が気になる皆さんは、どうか羽目を外しすぎないようにね。
そして常に「これは本当に体にとって必要なものかしら?それとも嗜好品なのかしら」と自分に問いかけることを忘れないようにしましょうね。