夏は糖尿病患者にとってはかなり危険な季節です
とても暑い日々が続いていますね。熱中症のニュースを聞くたびにとても心配になります…特にお子さんがいらっしゃる方は本当に気を付けてください。
さて、夏は危険な脱水状態が起こりやすくなる季節です。のどが渇いたときにはすでに遅いので、そうなる前にこまめに水分補給をする必要があります。
よっしーは糖尿病で入院する前の1年間ほど、今思えば異常にのどが渇いていました。どんなに水を飲んでもちっとも満たされた気がしないのです…
糖尿病が悪化すると糖を含んだ尿が大量に出るようになり、当然のどが渇きます。昔の日本では糖尿病を「飲水病」と呼んでいたのも納得です。
そして入院する1~2か月前から、なぜか甘い飲み物が異常に欲しくなりました。そういうモノは健康に良くないので以前は極力摂らないようにしていたのに…
それで風邪で寝込んでしまい、うどんやみかん、乳酸菌飲料など糖質ばかり口にしていてとうとう生命の危機を感じて救急外来に行くと、医師から「すぐ入院して」と言われたのです。
その時真っ先に医師から訊かれたのが「スポーツドリンクを飲みすぎていなかった?」でした。水分補給をしているつもりでスポーツドリンクを飲みすぎ、急激に糖尿病になる方がいるからでしょうね。
今回は特に夏に糖尿病患者さんに気を付けてほしい水分補給についてのお話です。飲み薬を飲んでいる方にはちょっと怖い話もありますが、どうかお付き合いください。
糖質制限をすると脱水状態になる?
それまで普通に糖質を摂取していた方が糖質制限を開始すると、最初に体重が急に減ることがあります。
これは糖が引き込んでいた余分な水分がまず抜けるためです。逆に糖質制限中にうっかりお餅をたくさん食べてしまい、2kg近くも体重が急に増えて驚いたという友達もいます。
このため「糖質制限をすると脱水状態になるので糖質をある程度摂取しないといけない」と心配なさっている方がかなり多いようなのです。
脱水状態が継続するということは、とても危険なことです。ヒトの体の水分がたった2%減少しただけでものどが渇き、運動能力が低下し始めます。
そして8~10%の水分が失われるとけいれんが起こり、20%の水分を失うと死亡するそうです。脱水とはそれほど危険な状態なのです。
何年も前から糖質制限をなさっているみなさんは、ずっと脱水状態になっていますか?仮にそうであれば、糖質制限をしている人たちは次々に死亡しているんじゃないでしょうか。
暑い夏のインドネシアで脱水にならないために意識的にスポーツドリンクを飲んでいた藤田紘一郎医師は急性の糖尿病(ペットボトル症候群)を発症してしまったそうです。
藤田先生によれば、日常生活の中で熱中症予防として水分を補給するなら水と塩で十分だそうです。アクエリアスゼロのように、糖質はごくわずかでミネラルを含んだ商品もあります。
すでに重度の脱水状態になってしまって危険な方に点滴をする場合はしょうがないと思いますけど、健康な方の脱水予防に本当に糖質が必要なのか?ということですよね。
大昔のヒトのご先祖様や野生動物たちは、糖質をあまり摂取していないから脱水症状でバタバタと亡くなっていたのでしょうか…?
ビールで水分補給しているから大丈夫!?
「私はビールを飲むようにしているから大丈夫だと思う」という方がいらっしゃるそうですが、とんでもない間違いです。
アルコールを飲むと、利尿作用があるのでかえって水分不足になりやすくなる上、飲みすぎは糖尿病患者の健康にもけっして良いものではありませんよね。
後で少しふれますが、お酒の飲みすぎで糖尿病患者が生命に関わるようなとても危険な状態に陥ることもあるんです。
またコーヒーなど利尿作用のある飲み物を飲むと脱水状態になるのではないかと心配なさっている方もきっと多いでしょう。
カフェインを含む飲み物を数杯程度では脱水状態にはならない、という研究結果は確かにいくつかあるようですが、個人差もあるので気を付けたほうがいいですね。
基本的には、水や麦茶などを一気飲みではなくちびちび飲むようにするといいと思います。朝起きた時にまず水をコップ1杯飲むようにしましょう。寝る前にも少し飲んだほうがいいです。
キュウリなど、水分を多く含む野菜を食卓に取り入れるのも良いと思います。果物もみずみずしくて美味しいですが、果糖をはじめとして糖質が多いので糖尿病患者は気をつけましょう。
糖尿病薬で脱水になると危険なことも!
糖尿病薬のSGLT2阻害薬(余分な糖を尿へ捨ててしまう、いわば薬による糖質制限と言えるもの)の副作用で脱水症状が起こりやすくなることがあります。死亡例もあります。
脱水状態というのはとても危険でして、メトホルミンという糖尿病薬を飲んでいる方が脱水状態になると「乳酸アシドーシス」を発症しやすくなります。
乳酸アシドーシスは、いろいろな原因によって血液中に乳酸が増え血液が酸性に傾き、50%の確率で死亡するというたいへん恐ろしい病気です。
腎機能や肝機能が低下している人がメトホルミンを服用しているときに起きやすく、また脱水や過度の飲酒、他の病気にかかっているときもリスクが高くなります。
そうは言っても、これらの薬を怖がって勝手にやめてしまうのは危険です。そもそも腎機能や肝機能が低下している人には医師も処方しないでしょうし。
ただ脱水とお酒の飲みすぎにはくれぐれも気を付けてくださいね。特にSGLT2阻害薬は最近よく使われているみたいなので、こまめに水分補給をして脱水を防ぎましょう。