糖質制限を開始したら空腹時血糖値が上がった人がいる
以前、糖質制限の講演会に参加した時、近くにいた人たちの会話が聞こえました。
どうやらその女性たちは糖尿病ではなく、ダイエット目的で糖質制限をしているらしいのですが、糖質制限を始めてからHbA1cは以前より下がったのに空腹時血糖値は以前よりも上がったそうなのです。
これはいったいどういうことでしょう?私は糖尿病患者なので、糖質制限を開始してから血糖値は下がったんですよね。
よっしーの素人的な推測にすぎませんけど「もしかして、糖新生が活発になっているから、もともと血糖値が低すぎた人は空腹時血糖値が正常範囲内でやや上がって安定しているのでは?」と思ったりしました。
江部康二先生のブログでも…
そうしたら江部康二先生のブログで、同様の方のコメントが紹介されていました。4年前に空腹時血糖値が90だったのに、現在は99なのだそうです。
個人的には、この程度の変動はよくあることだと思いますが、まだ糖尿病ではない方にとっては気になりますよね。
空腹時血糖値が高め=糖質制限で糖尿病になった!?と思ってしまう人がいてもおかしくないです。
この方の場合、インスリン抵抗性もなく、インスリン分泌能力も正常であることを検査で確認済だそうですよ。
やはり、もともと血糖値が低めだった人の場合、糖質制限に慣れてくるとある程度空腹時血糖値が高めになる(正常値の範囲内で)ことはしばしばあることなのかもしれませんね。
食後高血糖の後、その反動的に低血糖気味になっている方はかなり多いと思われます。そのまま放置するといずれ糖尿病になる可能性がある方たちです。
以前の空腹時血糖値は、低血糖気味だった血糖値を見ていただけなのかもしれません。
よっしーは空腹時血糖値は高めですけど、食後高血糖になることはほぼないのでHbA1cは5.3~5.5%ぐらいをキープできています。
1日の中で血糖値が高い時と低い時の「差」が大きい人ほど、動脈硬化や糖尿病合併症のリスクが高くなることが分かっています。
どんどん血糖値が上がっていくわけではなさそうです
もともと糖尿病ではなく血糖値が低めだった人が糖質制限の継続で少々空腹時血糖値が高めになったとしても、その後どんどん上がっていて、126を超えて糖尿病になってしまった…という例はさすがにないようですね。
本当にあるなら、医師がきちんと症例報告をしているはずです。重大な問題ですから。
ただ、深刻な問題になるほど血糖値が高くなることはないといっても、ちょっとでも血糖値が上がると何となく不安になる気持ちは分かります。
何とかする方法はないのでしょうか?
ヒトがエネルギーを得るための回路
ヒトが生命活動を維持するためのエネルギーを得る方法は、どんなものでしょうか?
グリコーゲン(余ったブドウ糖が一時的に蓄えられたもの、蓄えきれない分は中性脂肪になる)をブドウ糖に分解してエネルギー源とする「解糖系」、アミノ酸・乳酸・ピルビン酸・グリセロールなどからブドウ糖を産生し、それをエネルギーとして使う「糖新生」という回路があります。
糖質制限をしていない人の場合、食後は解糖系、夜間など長時間絶食時は主に糖新生によってエネルギーを得ています。
しかし、もうひとつの回路が存在します。糖質セイゲニストなら先刻ご承知(!?)の回路、それがケトン体回路です。
ケトン体回路では、脂質を分解して脂肪酸を産生します。さらにその脂肪酸を分解してケトン体を産生し、このケトン体がブドウ糖に代わるエネルギー源となるのです。脳もケトン体をエネルギーとして利用することが分かっています。
ケトン体回路をうまく回すのがカギ?
実は、糖質制限をしていてもケトン体回路がうまく回らない人もいます。
このような方の場合、「糖新生」だけが活発になっているので、体重はどんどん減るでしょうけど、空腹時血糖値が高めになったりインスリンがやや出すぎてしまうという問題が起こり得ると思います。
体質的にケトン体が出にくい人、タンパク質ばかり食べすぎている人、インスリン抵抗性が強い人、体脂肪が少なくて運動量が多すぎる人などなど。
このような方は、良質の脂質の摂取量を増やすことでケトン体回路がうまく回るようになり、糖新生ばかりがどんどん行われるという事態を防げます。
肥満でインスリン抵抗性のある方などは「痩せたいのに脂質を増やすのか!?」と不安に思われるかもしれませんが、ケトン体回路がうまく回るようになるまではMCTオイルやココナッツオイルをうまく取り入れることも必要だと思います。
ケトン体回路が回り出したら、あとは自分の体脂肪を燃やしてしまえばいいわけです。
糖質制限とは無関係の血糖上昇もあり得る
また、確率としては低いかもしれませんが、一応知識として。
風邪など一過性のストレスが体にかかると、血糖値がびっくりするほど高くなってしまうことがあります。
よっしーは軽い風邪で空腹時血糖値が140ぐらいになり、血糖測定器を放り投げたくなったことがありますけど、風邪が治るとウソのように下がってびっくりしました。あれは何だったのかと。
しかしそうではなくて、1か月、2か月、3か月…と、ずっと空腹時血糖値が高いままになってしまうことがあるそうです。
その場合は、血糖値を上げる働きのあるホルモンを分泌する腫瘍が体のどこかにできている可能性があるとのこと。
この腫瘍は、糖質制限をしてもしなくても関係なく発生するものだと思います。確率はそう多いとは思えませんけど、こういうこともあるのだということを一応頭の片隅に入れておいてください。