痩せるだけで糖尿病が劇的に改善する人もいます
以前にも「肥満の2型糖尿病患者は痩せるだけでほぼ治るかもしれない?」という記事を書きました。
日本人の場合は欧米と違い、肥満が原因で糖尿病を発症した人ばかりではないので「痩せれば万事解決」というわけにはいきません。
また、肥満が原因で発症したとしても、あまりにも時間が経ってしまった場合は痩せても完全に元に戻ることは難しくなります。すい臓のベータ細胞がすでに何割か死んでしまっているからです。
しかし、初期であればダイエットでかなり改善する方もいらっしゃるので、太っている方はとりあえず標準体重まで痩せてみましょうよというわけです。
では、具体的にどのぐらい痩せればいいのでしょうか。今回はそんなお話です。
体脂肪は良い?悪い?
上のグラフは信州大学様のサイトからお借りしました。やはり、肥満者では普通体型の人と比べると、インスリン感受性が低下している傾向があるようですね。
肥満者の場合、糖尿病であるか否かに関係なくインスリン感受性が低下しているようですね。
体重と体脂肪率は必ずしも比例しませんが、そこまで大幅に基準を外れている人はそう多くは無いようですね。
脂肪組織が分泌するTNF-αが増加すると、さらなる肥満やインスリン抵抗性を生じさせることが分かっているのです。では、やはり体脂肪は敵だということになるのでしょうか。
実は体脂肪には“良い脂肪”と“悪い脂肪”があり、運動を続けると“良い脂肪”が増えるのだそうです。
適度な運動を続けると内臓脂肪が減り、エネルギー代謝を高める褐色脂肪が増えてきます。褐色脂肪はグルコース代謝にも影響しており、身体組成を改善し、体脂肪量を減少させ、インスリン感受性を改善すると考えられているそうです。
以前は首や肩甲骨のまわりなど、体のごく一部にしか存在しないと考えられていた褐色脂肪細胞ですが、最近の研究では皮下脂肪にも存在することが分かってきました。
自宅で体脂肪率を測っても、分かるのはせいぜい「内臓脂肪がどれぐらいついているか」ということぐらいです。皮下脂肪が「良い脂肪」なのかそれとも「悪い脂肪」なのかは、区別できません。
体脂肪率が同じであれば、まったく運動をしない人よりも運動している人のほうが「良い脂肪」を多く持っている可能性が高いのではないでしょうか。
とはいえ、やはり体脂肪率が多すぎるのは好ましくありません。厚生労働省によると、男性で体脂肪率25%以上・女性で体脂肪率30%以上を肥満としています。
これ以上体脂肪率が多い方は、頑張って減らす努力をしてみましょう。
もともと体脂肪率が多くない方がさらにダイエットしてガリガリになっても、インスリン抵抗性の改善は期待できません…むしろ、筋肉が減ってしまい、良くない結果になるかも。
インスリン抵抗性は運動とダイエットで解消できる?
では、ダイエットして体重を減らし、運動を習慣にしていればインスリン抵抗性は生じないのでしょうか?
上の図は高橋医院様のサイトからお借りしました。
何となく「インスリン分泌不全は遺伝で、インスリン抵抗性は肥満や運動不足などの生活習慣が原因だ」と思われるかもしれません。
しかし図をよく見ると、インスリン抵抗性の原因のひとつとして遺伝も関係していることが分かりますよね。
インスリン抵抗性に関わる遺伝子は、これまでに100以上見つかっているそうです。
よっしーのように筋トレが大好きで有酸素運動もしていたのに若くして糖尿病を発症する人もいます。本格的なウエイトトレーニングを継続していて2型糖尿病になった方もいらっしゃいます。
そういう人は生まれつきの体質としてインスリン分泌能力が低いことに加え、もしかするとやはり生まれつきの問題としてインスリン抵抗性を持つのかもしれません。
自分の努力で可能なこと(運動、ダイエット)を試みて、それでもインスリン抵抗性がまだあるのであれば、必要に応じてチアゾリジン薬やビグアナイド薬を使用したらよい血糖コントロールが得られることもあるでしょう。
ちなみに、上の表には記載がありませんが、喫煙もインスリン抵抗性を増大させます。喫煙している糖尿人の方はできれば今すぐ禁煙しましょう。
糖尿病患者がダイエットするときの注意点
肥満患者が標準体重までダイエットするのは、インスリン感受性を改善できる可能性があり、良いことです。
ただ…単に痩せるだけならいろいろなダイエット方法がありますけど、やはり糖尿人の場合は血糖値を乱高下させないことがまず重要だと思います。
糖尿病改善のためにバランスの取れた食生活を心がけていたら、体重は減ったのにHbA1cは悪化したという2型糖尿病の方がいらっしゃいました。これでは、何のためのダイエットかと思いますよね。
体重が落ちるまでの期間、たとえ痩せても食後高血糖が長く続けば良くありません。糖尿人のダイエットは、体重を落とすことが出来て、なおかつ血糖値を上げにくい食事方法が望まれます。
また運動療法に関しては、糖尿病合併症がある場合は制限がかかったり禁忌になる場合もありますので、主治医の許可を得てから行うようにしてください。