2型糖尿病の若者は1型よりも糖尿病合併症になりやすい!?
日本人の糖尿病患者のうち、約95%は2型糖尿病患者だと言われています。1型糖尿病およびその他の糖尿病は少ないのです。
1型糖尿病の方で自分のすい臓から分泌されるインスリンがゼロになると、血糖コントロールはどうしても難しくなります…食事とは無関係に緊張などで血糖値が上がることもあるんですから。
2型糖尿病の場合、完全にインスリン分泌がゼロになっているわけではなく、軽度の方の場合はむしろインスリンはしっかり出ていたりします。
そのため1型糖尿病の方のほうが血糖値が乱高下しやすいので、糖尿病合併症になる確率も高いはず…と思いませんか?
ところが、アメリカで20歳以下で糖尿病を発症した若者(1型・2型ともに発症してからの平均期間は8年)を調査したところ、1型よりも2型のほうが糖尿病合併症がかなり多かったそうです。
特に動脈硬化と糖尿病腎症は、2型は1型の3倍以上の有病率だったそうです。1型糖尿病よりも2型糖尿病のほうが軽度と思われがちなのに、なぜこうなるのでしょう?
なぜ2型糖尿病のほうが糖尿病合併症が多いのでしょうか?
1型糖尿病は肥満の方がたまたま発症することもありますが、基本的には体型に関係ないので痩せている患者も多いです。
日本人の場合は痩せている2型糖尿病患者も多いですが、1型と比較すれば肥満の患者が多いでしょうね。特に、遺伝は全く無いのに発症した方。
上記の研究はアメリカで行われました。アメリカの方はインスリンを分泌する能力が高いので、若くして2型糖尿病になる人はかなり太っていることが多いと思われます。
インスリンを分泌する能力が高いと、最初はかなり食べ過ぎてもどんどん太るだけなので…その限界を超えた時に糖尿病を発症します。
肥満ではなくインスリン抵抗性がない1型糖尿病患者が足りないインスリンを注射で補ったとしても、体内のインスリンの量は健常者の方とほとんど変わりません。
しかし2型で強いインスリン抵抗性がある患者が血糖値を健常者と同じに保つためには、2倍3倍の量のインスリンが必要になります。
注射だろうと自分のすい臓から分泌されるインスリンだろうと、インスリンが多すぎれば動脈硬化や糖尿病合併症のリスクを上げることが明らかになっていますよね?
この調査では、1型と2型の患者さんの血糖値の平均は同じだったそうです。にもかかわらず2型で明らかに糖尿病合併症が多いのは、高インスリン血症が原因ではないでしょうか?
もっとも日本人の場合、2型糖尿病患者でもアメリカ人と比較すればインスリン抵抗性は少ない場合が多いので1型と2型の合併症有病率の差はここまで大きくないでしょうけど…
個人的には高インスリン血症だけが糖尿病合併症の原因ではないと思います。高血糖が慢性的に続くこと自体も問題のはず。でも、高インスリン血症はやはりとても良くないのではないでしょうか。
血糖値だけ見て安心してはいけないのです
日本糖尿病学会は、糖尿病合併症の予防のためにはHbA1cを7%以下にすることを目標にするべきだと言っています。
しかしこの数値さえ守っていれば確実に糖尿病合併症を防げるとは思えません。アメリカのバーンスタイン医師は、HbA1cが5%台の患者が合併症になった例をご存知だそうです。
バーンスタイン医師は糖質制限+必要に応じて患者にインスリン注射をさせますが、2型患者はまずインスリン抵抗性をなくして、それでもダメな場合はインスリン注射だそうです。
血糖値がまったく同じだとしても、2型糖尿病患者は程度の差こそあれインスリン抵抗性があるので健常者や1型糖尿病患者よりも多くのインスリンを必要とします。
インスリン抵抗性の原因は、肥満・遺伝・運動不足・喫煙の他、別の病気やその治療薬の副作用などがあります。
太っているとインスリン抵抗性が生じるので、肥満の糖尿病患者はとりあえずダイエットしようと言われているのですね。
ただ、遺伝のある方はダイエットだけでは完全にインスリン抵抗性をなくすことはできません。痩せていて遺伝で発症する方も多いですもんね。
原因はともかく、2型糖尿病患者のインスリン抵抗性をそのままにして血糖値だけを下げても高インスリン血症による健康被害は避けられません。
飲み薬を使用するとしても、インスリンを分泌させるような薬よりもまず先にインスリン抵抗性を何とかする薬を考えるべきではないでしょうか。
インスリン抵抗性をなるべくなくして、なおかつインスリンを大量に分泌させないような食事が糖尿病合併症予防としては最善だと思われます。
血糖測定実験はあまりやらなくなりました
よっしーは昔はいろいろなモノを食べては「あっ、これは糖質量の割に意外に血糖値が上がらない♪」なんてことをいろいろ実験していました。
しかし、最近ではもうほとんどやらなくなりました。血糖値のピークが緩やかだとしても、結局だらだらと追加インスリンが分泌されているとしたら困るからです。
2型糖尿病患者の場合、ある程度インスリン分泌能力が残っていますからね…よっしーよりも軽度の方は特にそうです。
また妊娠糖尿病の場合も、胎盤から出るホルモンの影響でインスリン抵抗性が生じています。一時的なものとはいえ、気になりますよね。
たとえば「食後血糖値が180までならいいや」などと決めて、ギリギリ180未満になるような量の糖質を召し上がる方もきっと多いと思います。
ただインスリン抵抗性がありインスリン分泌能力がある程度保たれている2型さんの場合、そのたびかなりの量のインスリンが分泌されている可能性があるんですよ。
インスリン抵抗性があるので、健常者の人よりずっと大量にインスリンを分泌しているけど追いつかなくてちょっと食後血糖値が上がっちゃう…というわけ。
こんな状態をずっと継続していると将来糖尿病合併症や動脈硬化になりますし(動脈硬化は糖尿病予備軍の段階から進行しています)いずれインスリン分泌能力も低下します。
まず大事なのはインスリン抵抗性を減らすことで、それからムダに追加インスリンを分泌させないことが重要になってきます。
タバコを吸う方は今すぐ禁煙し、肥満の方は体重を標準体重程度まで減らしましょう。血糖値を上げる副作用のある薬を服用している方は、別の薬にチェンジ出来ないか医師に相談しましょう。
血糖値だけを見て安心していてはいけません。同じ血糖値でも、より高インスリンになっている2型糖尿病患者の方が糖尿病合併症になりやすいのですから。
そしてもともと太っている方が1型糖尿病になった場合、やはりインスリン注射がたくさん必要になるので良くないとのこと。型に関わらず、標準体型を目指したいですね。