失われたインスリン分泌能力をどうするか?
糖尿病は「インスリン抵抗性(血糖値を下げるインスリンというホルモンは分泌されているが効きにくい)」と「インスリン分泌不全(インスリンが十分に分泌されない)」の2つの要素を持ちます。
1型糖尿病では普通はインスリン抵抗性はなく、インスリンを分泌するすい臓のβ(ベータ)細胞が破壊されるためにインスリンを分泌できなくなるので注射でインスリンを補います。
2型糖尿病は個人差があり、肥満や不摂生によるインスリン抵抗性が主なタイプとインスリン分泌不全があるタイプがあります。欧米人は前者が多く、日本人などアジア人は後者のタイプも多いと言われています。
親やきょうだいに2型糖尿病患者がいる場合は早期からインスリン分泌不全になりやすく、また糖尿病を発症してからの期間が長くなると2型でもインスリン注射が必要になる方が増えていきます。
さて、インスリン抵抗性がある場合はダイエットなどで改善が見込めるのですが、問題はインスリン分泌不全です。
インスリン分泌がどうしても足りない分は注射で補ったり、軽度の場合は食事を糖質制限食にすることで少ない量のインスリン分泌で何とかやっていけるのですが、根本的に解決することは可能なのでしょうか?
インスリン分泌能力を簡単に回復できれば苦労はしないね。
そう、それで悩んでいる人が多いと思うの。
糖尿病のマウスの血糖値が改善した!
東京大学医科学研究所、京都大学、愛知医科大学らの研究グループが糖尿病マウスの膵島細胞(β細胞を始めとした、糖代謝に関わるすい臓の細胞)を試験管で増やして移植し、マウスの血糖値を改善させることに成功したそうです。
ふつう、膵島細胞は最初は活発に増えますが、成熟すると自己複製(コピーして増える)する能力はほぼないそうです。つまり、ガサッと減ってしまうともとのように増えることは期待できないということ。
試験管内で糖尿病マウスから取り出した膵島細胞にMYCL遺伝子を働かせると、活発に細胞が増殖し、その細胞をマウスの体内に戻すと血糖値が改善したそうです。
これはマウスだけではなく人間にも同じように応用できるようで、失われたβ細胞を再び増やしてインスリン分泌不全を「治す」ことが期待できるそうです。ありがたいですね!
ただ…1型糖尿病患者さんはこれでいいとしても、2型糖尿病患者さんで何らかの「良くない習慣」があるとしたら、それをやめない限りまた同じことが繰り返されるかもしれません。
2型糖尿病になりやすい遺伝子そのものを書き換えることも出来ませんから、「治った」としてもずっと気をつけるべきでしょうね。
また「インスリン抵抗性」があるとしたら、それを解消しないままインスリン分泌能力だけを改善するとどんどん太ってしまうかもしれません。
インスリン分泌能力を回復させる治療は素晴らしいことですが、それだけですべてが解決するわけではないことも忘れてはいけませんよね!
食事療法も運動療法も「完治」とは違うかもしれないが…
1型糖尿病患者さんの失われたβ細胞を再び安全に増やすことができるかもしれないというのは非常に素晴らしいことです。
ただ、明日にでもその治療が受けられるようになるわけではありませんよね。どれぐらいの時間がかかるでしょう?
ダイエットや食事療法、運動療法などで2型糖尿病患者のインスリン抵抗性を改善することは出来ますが、インスリン分泌不全を「治す」のは残念ながら現在はまだ無理と言わざるを得ません。
だからある意味食事療法も運動療法も、インスリン分泌不全のある患者にとっては「対症療法」なのかもしれません。
…だとしても今はこうするしかないのですから、できることをしながら新しい治療法を待ちましょうか。
そのうち糖尿病は治せる病気になるよね!
そう信じて頑張りましょうねっ♪