インスリン抵抗性があるとインスリンが多く必要になる
インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンで、これが完全に分泌されない状態になると注射で補わなければヒトは生きていくことはできません。
しかし、インスリンそのものはとても重要なホルモンなのですが、これが必要以上に過剰に分泌されることは健康に多大な悪影響を及ぼします。
インスリンの血中濃度が高いと、男性は大腸がんにかかるリスクが最大3.2倍に高まることが厚生労働省研究班の調査で明らかになっています。
また高インスリン血症は動脈硬化をもたらし、肥満の原因となり、悪循環に陥りやすくなってしまいます。認知症やある種のがんのリスクも高くなります。
糖尿病患者の70~80%にインスリン抵抗性(インスリンの効きが良くない状態)が存在し、2型糖尿病はもちろんですが時に1型の方にも見られるのだそう。
インスリン抵抗性があると、高血糖をカバーしようとしてすい臓のβ細胞は大量にインスリンを分泌します。効き目が半分なら、量を2倍にすればチャラになる!?というわけ。
よっしーのようにもともと遺伝でインスリン分泌能力が低い者は早々に対応できなくなって若いうちに糖尿病になります。
また妊娠すると胎盤から出るホルモンの影響でインスリンの効きが悪くなりますが、これに対応できる量のインスリンを分泌できない女性は妊娠糖尿病になるんです。
しかしインスリン分泌能力が非常に高い人の場合、平気で普通の何倍もインスリンを分泌して対応するので、太るだけでなかなか糖尿病にはならないことも多いです。
このような方が糖尿病になるのは、ものすごい不摂生を長年続けてからなんですよね。もっとも、清涼飲料水をがぶ飲みして短期間で急激に高血糖になることもありますが…
ある意味、どんどん太れるということはインスリン分泌能力が高いからなんですけど、血糖値が上がりにくいとしても本当にそれで大丈夫なんでしょうか?
血糖値とインスリンは必ずしも関係ない?
糖尿病と聞くと「インスリンが足りないので血糖値が高くなる病気だ」と思う方は多いと思いますが、必ずしもそうではありません。
インスリンが足りない=インスリン分泌不足というのは確かにあるのですが、2型糖尿病の前段階、または初期段階ではインスリン抵抗性があるためにむしろインスリンはたくさん分泌されています。
インスリンの効きが悪いので健常者の方の何倍もインスリンを分泌し続けているうちに、すい臓のβ細胞がどんどん過労死していき、十分な量のインスリンを分泌できなくなってしまいます。
1型糖尿病で肥満の方もいらっしゃいますが、そうではない場合はインスリン抵抗性はなく、インスリン分泌能力が失われていくので2型糖尿病とはちょっと話が違ってきます。
上の表を見てください。血糖値が高いかどうか、またインスリンが過剰に分泌されているかどうかによって4つに分類をしてみました。
(C)の正常血糖&低インスリンというのは、いわゆる健常者の方です。インスリン抵抗性がなく、少量のインスリンで正常血糖値をキープしています。糖尿病ではなく糖質制限している方はもっと低インスリンでしょう。
健常者の方が糖質が大好きで慢性的に食べ過ぎて太ってくると、(D)の正常血糖&高インスリンの状態になります。
肥満によってインスリンの効きが悪くなりますが、その分たくさんインスリンを分泌してカバーしている状態です。太っているのに糖尿病とまだ言われていない方がこれです。
そのうち、だんだんすい臓のβ細胞が過労死して数が減ってきて、インスリン抵抗性をカバーできる量のインスリンを分泌できなくなって(B)の高血糖&高インスリン状態になります。
そのまま治療しないで放置すると、さらにインスリン分泌能力は低下して(A)の高血糖&低インスリン状態になります。肥満ではない1型の方はいきなり(C)→(A)になります。
(B)の高インスリンというのは(D)よりは少なめであり、(A)の高血糖は(B)よりもさらに高血糖ということになります。
よっしーの場合、(D)→(B)→(A)へと至る期間が比較的短かったのではないかと思われます。だから3年半前に入院した時は糖尿病網膜症はまだ無かったのかも。
糖尿病治療を開始すると合併症悪化!?
一般的に考えて、糖尿病の治療を行えば血糖値が下がるので糖尿病合併症は起こりにくくなるはずです。しかしよっしーは16日間入院して病院食を食べ、1日4回インスリンを打ち始めてから糖尿病網膜症になりました。
自分だけかと思ったら、新井圭輔医師の患者さんで「血糖値300以上で糖尿病発覚し、治療を開始した時は異常なかったのに1年後には網膜症になっていた」という方がいらっしゃるそうです。
DPP-4阻害薬を使用していて血糖値はわりと良好なのに眼底出血する例もありますし、インスリン注射だけではなくSU薬やインスリンポンプで網膜症や腎症が悪化する例は以前からあったようです。
眼科医の深作秀春先生は、眼科で糖尿病網膜症が見つかった糖尿病未治療の患者さんを内科に紹介すると、かえって網膜症が悪化する例をたくさん見てこられたそうです。
それはインスリン注射やインスリンを分泌させる飲み薬が原因であると考え、今はご自身も健康のために糖質制限をなさっていらっしゃるんですって。
まぁインスリン注射の副作用として「糖尿病網膜症の顕在化または憎悪」としっかり書かれていますしね…病院では何の説明もありませんでしたけどorz
血糖値だけ下げればいいというものではない
比較的軽度の2型糖尿病の場合、普通に糖質を食べていてコントロール良好と呼ばれる方は正常血糖&中インスリンになっていることが多いのでしょう。
でも、中には正常血糖&高インスリンになっている方も混じっていると思います。もともとインスリン分泌能力が高い人or薬やインスリンでがっつり血糖値を下げている人の場合です。
血糖値だけ見れば問題なくても、10年…20年…と経過するうちに動脈硬化が進行し、いろいろな糖尿病合併症が進行することになりかねません。
高インスリン血症にならないためには、まずインスリン抵抗性をなるべくなくすことです。太っている人は痩せるだけでもかなり良くなります。
標準体重のマイナス5%(身長170cmの方で体重60.4kg、身長160cmだと体重53.5kg)ぐらいで最もインスリン抵抗性が低くなるそうですけど、もちろん体脂肪率によっても変わります。
タバコを吸う方はいますぐ禁煙しましょう。なにしろ喫煙は、肥満以上にインスリン抵抗性を悪化させるそうですから!
そして、いくらインスリン抵抗性を減らしても大量のインスリンを分泌させるような食生活ではやはりいけませんよね。薬で血糖値を下げればいい…ってものじゃありません。
できるだけインスリン抵抗性をなくしつつインスリンを大量に出さないような食事を心がけることで、インスリンの過剰分泌による被害を最小限にできますよ♪