糖尿病合併症をも克服したバーンスタイン医師
当ブログでも何度も取り上げていますが、糖尿病患者のみなさんにぜひ知っていただきたいのがアメリカ人医師リチャード・K・バーンスタイン先生です。
バーンスタイン先生は12歳の時に1型糖尿病を発症し、当時の標準的な食事療法である「高炭水化物・低脂肪食」を実践していましたが、30代になると糖尿病合併症がいくつも出てきてしまいました。
奥様が医師であった先生は、新発売された自己血糖測定機をいち早く使用することが出来、自分の血糖値が1日の中でかなり乱高下していることを知って愕然としました。
そして「糖質制限」「インスリン注射の頻回少量注射(※先生はインスリン自己分泌ゼロです)」によって血糖値が安定し、糖尿病合併症も改善に向かったのです。
先生はこのメソッドを始めてからようやく、人並みに筋肉をつけることができるようになったのだそうです。それまではインスリンを大量に打っていたにも関わらず痩せていて、なかなか体重が増えなかったそう。
先生は40代で医学部に入学し、医師になりました。目や腎臓の糖尿病合併症が治り、足の粥状動脈硬化も治ったそうです。
そして先生は88歳の今も医師として多くの患者さんたちを救っていらっしゃいます。2型糖尿病の私も、彼の著書をたまに読み返して大いに励まされているのです。
私は糖尿病網膜症で黄斑浮腫(目の黄斑という重要な部分にむくみが生じる)もあり、よくならないようなら大学病院で眼球に注射!と言われましたが、経過観察のみで自然に浮腫が消えました。先生の著書には同じように黄斑浮腫が治った患者さんの話が載っていますよ♪
すごいお医者さんがいるんだね!
12歳で1型糖尿病になり、88歳の現在もお元気なんですものね。
英国糖尿病協会のサイトにバーンスタイン先生が!
英国糖尿病協会は2人の糖尿病患者によって1934年に設立されました。英国では成人の2/3以上がBMI25以上の過体重だそうなので、特に2型糖尿病対策が重要な課題なのでしょう。
そんな英国糖尿病協会のサイトに、バーンスタイン先生が紹介されているのを見つけました。こちらです!
バーンスタイン先生の著書で勧められている食事法は、朝食は糖質6gまで、昼食と夕食は糖質12gまでという一般的には大変ストイックと見做される糖質制限食です。
しかしそのバーンスタイン先生を、英国糖尿病協会のサイトでは好意的に取り上げて載せているわけです…日本とはかなり違いますよね!
英国糖尿病協会のサイトの「2型糖尿病の食事療法」について読んでみますと「NHS(英国国民保健サービス)」についていろいろ書かれていました。
『糖質制限ダイエットは 2型糖尿病患者に人気があり、多くの患者の血糖値が改善したと報告されており、減薬にも役立っています。
しかし、その人気と明らかな有効性にもかかわらず、糖質制限ダイエットはまだ NHS によって承認されていません』
『NHSは、糖尿病患者に低脂肪の食事を取り、毎日のカロリーの約半分を糖質から摂取するようアドバイスしています。
このアドバイス決定は質の高い研究によって裏付けられておらず、近年、多くの著名な医師によって食事が批判されています。
NHSダイエットに対する重大な批判は、それが体重増加を助長し、血糖値が高くなり、時間の経過とともに大量の服薬が必要になるということです。』
などとあります。
英国国民保健サービスはバーンスタイン先生が生まれ育ったかつてのアメリカや現在の日本と同様に「高炭水化物&低脂肪食」を勧めていますが、英国ではその効果に疑問を持つ医師たちが増え、糖尿病協会としても糖質制限を少なくとも選択肢のひとつとして正式に認めているようですね。
米国糖尿病学会は糖質制限をどう捉える?
では、バーンスタイン先生が住んでいらっしゃる米国ではどうでしょうか?米国でもかつては英国と同じように「高炭水化物・低脂肪食」が推奨されており、それに従っていたバーンスタイン先生は糖尿病合併症になってしまいました。
米国糖尿病学会のコンセンサスレポートには『ヒトの脳が必要とするブドウ糖は必ずしも食事から摂取する必要はなく、グリコーゲンの分解や糖新生、そして糖質制限による「ケトン体産生」から得られる』と書かれているのです。
つまり、何らかの原因によって糖質制限するとすぐに低血糖に陥ってしまったりケトン体をうまく利用できない体の方以外は糖質制限しても問題ないということではないでしょうか?どんな食事療法でも合わない方は必ずいます。
米国では糖尿病学会だけではなく、心臓病学会も『高脂肪・低炭水化物食(糖質制限食)は低脂肪食よりも中性脂肪が減少する』『食事の炭水化物を脂質に置き換える割合が多いほど中性脂肪は低下する』と言っています。
昔は、まだよく分かっていなかったことや間違っていたこともあったのでしょう。かつてアメリカ砂糖研究財団(現在のアメリカ砂糖協会)のヘンリー・ハース会長がハーバード大学の研究者に資金提供をし、砂糖業界に都合の良いように「脂質が悪の根源だ」とする内容の論文を書かせたという事件もありましたね!
しかしだんだんデータも揃ってきましたから、従来の方針を変える方向に向かわざるを得なくなったのでしょう。患者のためを思えば至極当然のことです。
なぜ日本ではダメなのでしょうか?
ところが、どういうわけか日本糖尿病学会は「公式には」未だに糖質制限を認めていません。
医師だけの集まりで川崎医科大学特任教授の加来浩平先生がうっかり(?)『日本糖尿病学会が推奨する食事の糖質50~60%には科学的根拠はない』『糖質は総カロリーの1/3程度が良いのではないか』とおっしゃったらしいですが…
「ゆるやかな糖質制限(ロカボ)」で有名な北里大学北里研究所病院の山田悟医師も、専門家向け医療ニュースサイトのメディカルトリビューンでは『カーボローディング全盛のスポーツ栄養学に歯止めをかけるべき』『診療ガイドライン改訂を待たず、医師たちが科学的根拠に基づく世界標準を見習って糖質制限を臨床に取り入れ、多くの苦しむ患者を救うべきだ』などと書いていらっしゃいます。
どんな事情があって日本では遅れているのかは知りませんけど、とにかく糖尿病診療ガイドラインが変わらないので、甘いものや糖質大好きなお医者さんたちがこれ幸いと「医師として糖質制限はオススメしません!」と仰ったりするんですよね。
なんだか、いつまでもチョンマゲを貫こうとしていた鎖国時代のようです。いつまでもそうしているわけにはいかないわけなので、そろそろ「開国」してはどうかしら?
糖質制限が合わない人は従来の方法を継続すれば良いのです。ただ、糖質制限が正式に選択肢になることで救われる患者も確実にいるのですから!
患者さんは、選択肢が増えるのは間違いなく良いことだよね!
それはそうよね。さて、勇気を出して方向転換できるかしら…?