主治医に言われるまま、はもう古い!?
私の父は70代半ばですが、35年ぐらい前にはすでに2型糖尿病と診断されていました。幸い現在でも特に目や腎臓が悪いという話は聞きません。投薬は無しで緩めに糖質制限しています。
父に話を聞くと、診断された当時は医師から食事などについて厳しく注意され、大人しくその指示に従わないといけなかったそうです。
主治医に言われたとおりにしていてジムにも通って運動し、すでに痩せ過ぎなぐらい痩せているのにまだ血糖コントロールが「優」にはならず「もっとカロリー制限をきちんとしなさい!」と言われて途方に暮れていた真面目な父。
しかし私が糖質制限の本をたまたま書店で見て父に勧めて実践してみたところ、痩せ過ぎだったのが数キロ太ってちょうど良くなり、血糖値も前より改善したので主治医からも何も言われなくなったそうです。
また先日私が入院した時、主治医は「あなたは自分で管理できる。血糖値を見ながらインスリンを打つ量は自分で調整していいし病院食を残してもいい」と仰いました。
昔の糖尿病治療は「患者は黙って主治医の言うことを聞け!」だったのかもしれませんが、今はそうでもないようです。
さて、皆様は「エンパワーメント」という言葉をご存知でしょうか?本来は「能力や権限を与える」という意味ですが、医療においては患者や家族が自らの生活をコントロールできるように援助することを指します。
何もかも主治医の指示通りにしろ、ではなく、患者自身が自分で考えて自分の生活をコントロールしていくということなのですね。
糖尿病はお医者さんの言う通りにお薬を飲んだから治る病気じゃないもんな。
そうね、2型糖尿病のお医者さんも大勢いることだし。
糖尿病はもともとそういう病気である
「スーパードクターが天才的な腕で手術して奇跡的に完治!」という病気と違い、もともと糖尿病は自己管理が大切な病気です。
そしてほんの少しの努力で治ったも同然の状態になる患者もいれば、主治医に言われたとおりにしてもなかなか理想値まで血糖値が下がらなかったり合併症の進行を止められない場合もある病気です。
個人差があるとは言え「手術すれば治る」「この薬をきちんと飲んでいればOK」という病気ではない以上、患者が日々の生活を自分でコントロールすることが非常に重要なのです。
主治医の言う通りにしてもなかなか改善しない患者のことはとりあえず置いておくとして、言われたことをあまり守れないために数値が良くならない患者は多いはずです。
でもそれって「言うことを聞かない悪い患者だ!」「糖尿病合併症の恐ろしさを知らないのか!」などと言えば解決する問題なのでしょうか?
中には本当に知識がなくて糖尿病を甘く見ている方もいらっしゃるかもしれませんが、「知っていてもできない」患者も多いのではありませんかね?
大切なのは「糖尿病が恐ろしい病気だということは知っていながらきちんと生活を管理できない」理由を知って対策することだと思うのですが。
医療従事者も患者も燃え尽きてしまう…
糖尿病治療の「責任」を医療従事者だけに負わせないことは医療従事者と患者の両方にとってメリットがあると思います。
すべてが主治医の責任となると、どうしても「どうして言う通りにできないんですかッ!!」と言いたくなるでしょうし、厳しく注意されて患者も萎縮してしまいます。
それでもどうしても言うことを聞かない患者に疲れ果ててしまい「もういやだ…辞めたい」となってしまった医師の話を聞いたことがあるんです。真面目な先生なのでしょうね。
糖尿病を管理していく主役は患者である、ということになれば、主治医も必要以上に一生懸命になりすぎて追い込まれることもないでしょうし、患者ももっと自覚を持つのではないでしょうか。
患者の性格にもよるかもしれない
ただ、エンパワーメントがすべての糖尿病患者に対して同じように有効とは限らないと思います。
「言うことを聞け!と言われたらムカつくのでやる気が無くなる」と思う患者は自分に任せてもらうことでやる気が出るかもしれません。
私も、自分に多くを任せてもらったことで「ああ、主治医は私のことをちゃんとやれると信じてくれているんだ、よし頑張るぞ!」と思えました。インスリン注射の量は5か月前の7割まで減っています。
しかし主治医にリードしてもらわなければ不安になる患者もいらっしゃるのです。私の好きなようにやらせてくれる主治医に関しても、看護師さんいわく「あの先生とは合わないと感じている患者さんも居る」そうですから。
だから「この患者はどういうタイプ(性格)なのか?」を見極め、患者によって指導の仕方を変えていくのが理想なのかもしれません。患者も「自分はどうしたいのか」を考えないとね。
病気の主導権を持ちたい患者もいれば、主導権を持つことで「自己責任」という言葉が重くのしかかってきて負担になる患者もいるのでしょう。
ただこれだけは「事実」なので書いておきますが、主治医の言う通りにした結果糖尿病が悪化したとしても、主治医が診療ガイドライン通りに指導したのであれば主治医が責任を問われることはありません。だからよく考えてくださいね。
ましてTwitterなどで匿名で「◯◯すべき」「✕✕は危険なのでやめましょう」などと書いている自称・医師の方(本物の医師かどうかすら不明)はまったく何の責任も取れませんから。昨日、匿名の方に質問して安心してしまっている患者さんを見かけたもので…
病気を自分で管理するのは容易ではない?
エンパワーメントは一部の糖尿病患者のやる気を引き出すことが出来ますが、一方で「難しい慢性的な病気」を自分で管理することは容易ではないかもしれません。
どう対処していいか判断が難しい事が起きた場合、すぐに主治医にアドバイスを求めるわけにはいかないからです。
私が先日ケトアシドーシスで入院した時は自分で「血糖値はそれほどではないが、この気分の悪さは8年前とそっくりだからきっとケトアシドーシスに違いない」と感じて夫に救急外来に連れて行ってもらいました。
しかし、仮に「胃腸炎になったのかもしれない。もう病院は閉まっているから明日の朝まで我慢しよう」と思ったとしたら…ああ、考えるだけでも恐ろしいです。
自分で自分の病気を管理していくことは理想的なことであるはずですが、一方で何かとんでもない事が起きる危険性も秘めているわけですね。
しかし糖尿病という病気の性質を考えた時、何かあったら主治医に相談できるという体制は大事にしても、基本的には自分で管理していくことが必要なのでしょうね。
糖尿病は基本的に自分で管理していく病気だね。
昔に比べて「自分で管理していく」方向になったのは良いことね!