糖尿病は遺伝する病気?
よっしーの父と弟は30代前半で2型糖尿病を発症しました。よっしーも20代でまず妊娠糖尿病になり、その後いったん正常型になりましたがいつの間にか2型糖尿病に移行していました。
しかし、母・母方の祖父母・父のきょうだい・父の祖父母はいずれも糖尿病ではなかったのです。これはいったいどういうことなのでしょう?
このことについては後で改めて考えることにして、今回は糖尿病と遺伝について考えてみることにしましょう。
谷川俊太郎さんの詩「遺伝子」は、かなり心に響くものがありましたので一部紹介します。以下は詩「遺伝子」からの引用です。
もっとも小さな秘密
誰もがからだのうちに隠していて
こころで感ずることは誰にも出来ないだがそれはそこにある
運命をつかさどる
死を予言する(谷川俊太郎さんの詩「遺伝子」の一部分)
2型糖尿病になりやすい体質は遺伝すると言われます。もし遺伝子がお子さんの糖尿病発症を「予言」するのであれば、私たちは成す術がないのでしょうか…
遺伝子が私たちが糖尿病を発症するという運命をつかさどり、そして「死」を予言するのだとしたら、いったいどうすればいいのでしょう。
遺伝子によって運命が決まってしまうのなら、とても辛いですよね…遺伝子を変えることはまだ出来ないですし。
正直、父を恨んだこともあったわ。なぜ私が糖尿病にならなきゃいけないの!?ってね…
母親から遺伝するミトコンドリア糖尿病
ミトコンドリア糖尿病という病名を聞いたことがあるでしょうか?これは細胞内でエネルギーを作っているミトコンドリアに変異があるために発症する糖尿病です。
日本の糖尿病患者の約1%はミトコンドリア糖尿病だと考えられていますが、見逃されているケースが多いそうですよ。
ミトコンドリアDNAは母親からしか遺伝しませんので、父親は関係ありません。よっしーの母や母方の親戚に糖尿病患者はいませんので、おそらくミトコンドリア糖尿病ではないでしょう。
9割の患者さんに感音性難聴(内耳や聞神経などが障害されているため音が聞こえにくい)が見られるほか、心臓の異常を伴うこともあり、糖尿病合併症が進行しやすいのだそうです。
難聴や心臓の異常が何もなければ、見逃されてしまいやすいのかもしれません。遺伝子検査をしない限り、普通の糖尿病と診断されたままの方もいらっしゃるでしょうね。
このような糖尿病の場合、肥満や運動不足や食べすぎが原因ではありませんので「運動すればよくなる」とか「腹八分目に食べればよくなる」などと言うのは全く見当違いというものです。
若くして発症するMODY(若年発症成人型糖尿病)
MODY(若年発症成人型糖尿病)は、糖代謝に関係する何らかの遺伝子に変異があるために発症します。これまでに13種類の遺伝子が特定されていますが、原因不明のMODYもあるそうですよ。
肥満ではないにも関わらず25歳までに発症することが多いそうですが、それ以上の年齢での発症もないわけではないとのこと。よっしーは20代半ばで妊娠糖尿病になったので微妙ですね。
実は知り合いの医師から「MODYかもしれないねぇ」と言われたことがあるのですが、遺伝子検査をしたわけではないので真相は闇の中です…
日本人の場合、35歳以下で糖尿病を発症した患者の10%、15歳以下で発症した患者の20%はMODY3というタイプの若年発症成人型糖尿病だそうです。小学生で発症する子もいます。
ほとんどのMODY3患者は肥満ではなく、インスリン分泌不全がありインスリン抵抗性は認められないそうです。
MODY3は日本ではもっとも多いタイプで、比較的重症になりインスリン注射が必要になるケースが多いそうです。また動脈硬化や糖尿病合併症が進行しやすいとのこと、注意が必要です。
糖尿病性ケトアシドーシスで発症する例もあるということですが…よっしーはMODY3なのか、そうではないのか??
MODYには他にもいくつかのタイプがあり、必ずしも重症になるものばかりではないそうです。MODY2は食事療法と運動療法だけでコントロールできる軽症例が多いそうですよ。
1型糖尿病・2型糖尿病と遺伝
ミトコンドリア糖尿病やMODY以外の糖尿病も、遺伝と関係があります。日本人の糖尿病の95%が2型糖尿病と言われますが(じつはその中に上記のような糖尿病が含まれていて見逃されている場合もあると思われます)、2型糖尿病になりやすい体質は遺伝すると言われています。
しかしその遺伝についてはまだよくわかっていないことも多く「この遺伝子が変異しているから確実に糖尿病を発症する」というような分かりやすいものばかりではないみたいです。いくつかの遺伝子と後天的な原因が重なった時に発症するケースも多そうです。
また1型糖尿病は偶然起こるものと思いがちですが、じつは遺伝的に1型糖尿病になりやすい体質というものがあり、遺伝に何らかの後天的な原因が加わった時に発症するのではないかと考えられているそうです。
1型糖尿病の方で、家族に2型糖尿病の患者さんが何人かいるという方の話も聞いたことがあります。1型と2型はまったく別の病気と思いがちですが、そんなに簡単なものではないのかもしれませんね。
遺伝子が「変異」するとき…
糖尿病の家系というと、何か昔からずーっと糖尿病患者だらけだったように思うかもしれません。しかし冒頭でお話したように、よっしーの父の前の代には糖尿病の先祖はいなかったようです。父方の祖母は糖尿病にならずに91歳まで生きました。
遺伝子というものは、ある時、子に伝わる前に「突然変異」をすることがあります。そして、その先天的な遺伝子変異は子孫に受け継がれていくのです。放射線など、後天的に起こる遺伝子の変異は子孫に受け継がれることはありません。
もしあなたの両親が糖尿病ではなくても、あなたや配偶者が糖尿病の場合、その体質はお子さんやお孫さんに受け継がれていくことだってあるんです。
糖尿病になりやすい体質を持つことは不利なことと感じるかもしれませんが、食糧が乏しかった時代、この体質はむしろ有利だった時代もあるのです。
ヒトの遺伝子は大腸菌などとは違って、親とは異なる遺伝子の組み合わせを持つ子が生まれます。もし環境が大きく変化しても、いろいろな体質の者がいれば誰かは無事に生き残って子孫を残していくことが出来るのです。
遺伝子が多様であることは、自分とは異なる可能性を子孫に託して種全体として生き延びるためにあえて選ばれた生き方なのかもしれません。
遺伝子は「病気の発症」と「死」を予言するのか?
病気にもいろいろあります。場合によっては、ある遺伝子の変異を持つことが確実に病気の発症を引き起こす場合だってあるかもしれません。
しかし糖尿病の場合、食事を変えることで未然に発症を防ぐことも可能です。その食事とは、必ずしも世間一般で言われているような「バランスの良い食事」ではありません。
肥満予防の食事で肥満が原因の糖尿病は防ぐことができますが、それ以外の糖尿病はおそらく防げないでしょうね。
「糖尿病の家系なので仕方がない」と諦めることはありません。糖尿病になりやすい体質は遺伝しますが、その体質を持っていても糖質を大量に食べなければ糖尿病合併症にもならず、普通に暮らせます。
場合によってはインスリン注射が必要になることもあるかもしれませんが、大量に糖質を食べて大量にインスリンを打つよりはずっと安全だと思います。
糖尿病に関わる遺伝子はあなたに「警告」をしますが、正しく対処することが出来るのであれば、決して「死」を予言するものではないと思います。
僕たちは肉を食べていれば糖尿病にならないです。人間も体質に合ったものを食べればいいんですよね。
親から受け継いだ遺伝子は変えられないんだから、その体質に合わせた生活を送ればいいのよね。