太りたくないから勝手にインスリン注射をやめる!?
若い女性の糖尿病患者、特にインスリン注射をしている患者さんで「摂食障害」を持っていることが問題になりがちなのだそうです。
糖尿病のせいで摂食障害になるのかどうかは専門家の間でも意見が分かれるそうですが、糖尿病で摂食障害があると血糖コントロールが悪化して糖尿病合併症になりやすくなるのは間違いないようです。
その患者さんたちはしばしば「ドカ食い」をした後で嘔吐したり下剤を乱用したり絶食や過剰な運動をしたりインスリン注射を中止または減量したりするそうですよ。
そこには「インスリン注射をすると太りやすいから」という理由があるんですよね。たくさん食べてインスリンを注射して血糖値は下げられても、食べ過ぎた糖質は体脂肪として蓄えられてしまいますからね。
そしてそのような患者さんは、太りたくないためにインスリン注射を中止・減量しているということを主治医に隠しがちだそうです。
インスリン注射が必要な患者さんが太りたくないからといってインスリン注射を勝手に減らしたりやめたりするのは大いに問題ですよね💦
おいインスリンが必要な人が勝手にやめたりするのはヤバいんじゃないのか!?
そうなのよ、とてもヤバいのよ!!
インスリン注射は確かに太るらしい…
私は糖尿病と診断されてからしばらくの間は持効型インスリン(食事とは関係なく1日1回打つやつ)のランタスを8単位注射していましたが、主治医公認で糖質制限をしていたので食事用のインスリンは打っておらず、その7か月の間に太ることは無かったです。
しかしインスリンをたくさん注射している人は太りやすいと言われます。1型の方はどうしても足りない分を注射で補うだけなので健常者の方とあまり変わらないと思うのですが、2型患者や妊娠糖尿病患者で問題になりやすいようですね。
下のグラフは植村内科クリニック様のサイトから引用させていただきました。強化インスリン療法(健常者のインスリン分泌を真似て、1日3回以上インスリンを注射する)では血糖値は下がっても明らかに太ることが分かりますよね。
インスリンは血糖値を下げるホルモンですが、血糖値を下げたからと言ってそのブドウ糖が消えてなくなるわけではないんです。
お客さんが来るから急いでリビングや廊下に散らばっているモノを押し入れの中に押し込めて綺麗になったように見えても、押し入れの中はパンパン…みたいなものです。
血管の中からブドウ糖が消えても、消費しきれなかったブドウ糖はインスリンの働きで最終的には体脂肪になります。
皮下脂肪ならまだいいのですが、筋肉や臓器などに脂肪が沈着して「異所性脂肪」になると健康上大きな問題をもたらすことになるのです。
日本人は欧米人に比べて、皮下脂肪が溜まりにくいといわれています。しかし、これは言い換えると、皮下脂肪に脂肪を蓄積する能力が低いということです。
皮下脂肪を蓄える能力が低いと、見た目は太っていないように見えても内臓脂肪や異所性脂肪がたまりやすくなります。
日本人は欧米人と比較しても高度肥満者はかなり少ないのに2型糖尿病になる人がかなり多いのは、このせいではないでしょうか?
血糖値が下がっても太るのなら意味がない!?
「インスリン注射をしていて太る人はきっと食事制限を守らずに食べ過ぎているのでしょう」と言われます。
しかしインスリン強化療法をしている患者だけが特別食べ過ぎているとは思えないのですが…同じように食べていても太りやすいのではないでしょうか?
またインスリンは食欲を増進させる作用も持ちます。2型糖尿病患者では多かれ少なかれ「インスリン抵抗性」があることが多いので、血糖値を下げるためには健常者よりも大量のインスリンが必要になりますよね。
血糖値を下げるために大量のインスリンを打ち、その作用で食欲が増し、たくさん食べてしまって体重が増えてますますインスリンの効きが悪くなり、食事量に応じてもっと大量の注射をしなければいけないという悪循環に陥ります。
この悪循環を断ち切るには「インスリンの効きを改善すること」そして「インスリンが大量に必要となるような食生活をやめること」しかないのではないでしょうか。
しかし冒頭で述べた患者さんたちのように「食生活を改善することなくただ太りたくないために勝手にインスリン注射を減らす」ことは大変危険です💦
インスリンで太りやすくなるのは事実だとしても、どうしたら注射量を減らせるのかを考え、勝手に自己判断でやるのではなく主治医と相談することが大事ではないでしょうか。
気持ちは分かるけど、主治医に無断でインスリンを減らすのは危険だもんね!
主治医には何でも相談してほしいわね!