「インスリン抵抗性」とは
2型糖尿病の場合、人によって差はありますが「インスリン抵抗性」があることが問題になりがちです。
「インスリン抵抗性」とは、血糖値を下げるホルモンのインスリンが分泌されているにもかかわらず効きにくいということです。
インスリンが効きにくいので量で補おうとしてインスリンを大量に分泌しているうちに、インスリンを分泌するβ細胞が疲れ果てて死んでいき、インスリン分泌能力が低下してしまいます。
そして、インスリン抵抗性というのは全身どこでも同じように起こるというわけではなく、たとえば肝臓のインスリン抵抗性、筋肉のインスリン抵抗性、脳のインスリン抵抗性など、臓器ごとに別々に起こり得るというのです。
「運動がインスリン抵抗性の改善に良い」とよく言われますし私もそう思っていますが、運動すればそれで万事OKなのでしょうか?
また肝臓と筋肉のインスリン抵抗性には何かお互いに悪影響があったりするのでしょうか。今回はそんなお話です。
全身でまったく同じように起こるわけではないのかニャ?
どうやらそのようなのよ。
内臓脂肪が脂肪肝の原因?
「皮下脂肪よりも内臓脂肪のほうが危険で、内臓脂肪がたくさんあると脂肪肝になってインスリン抵抗性が生じる」と考える方が多いと思います。
しかし、日本人男性を対象にして行った研究によれば、肥満ではない日本人男性は「内臓脂肪があるけど脂肪肝ではない人」よりも「内臓脂肪はないけど脂肪肝の人」で明らかに肝臓のインスリン抵抗性が生じていたそうです。
そして「内臓脂肪があって脂肪肝の人」は、「内臓脂肪がなくて脂肪肝の人」とインスリン抵抗性の程度はあまり変わらなかったということです。
「えっ、内臓脂肪が蓄積していなくても脂肪肝ってことがあるの!?」と思われるかもしれませんが、実は私もそうだったんですよ。肝臓に集中的に脂肪がつくというべきか。
糖尿病性ケトアシドーシスで入院する数か月前、勤務先のジムのインボディという機械で測定したら内臓脂肪量は正常範囲内、筋肉量が多くて安心していたんです。
でもケトアシドーシスで入院したら腹部CTで脂肪肝と言われ、治療開始後わりとすぐ脂肪肝は無くなったと言われました。
1型糖尿病患者さんがケトアシドーシスが原因で一過性の急性肝障害を引き起こしたと思われる例もあるそうなので、もしかしたらあの時だけの一時的なものだったのかもしれません。
またアルコールや果糖は特に脂肪肝の原因になりやすいことは有名ですけど、「お酒に酔いやすい人」は飲酒をしなくても脂肪肝になるリスクが高いことが分かったそうです。
そして肥満になりやすい生活とは真逆ともいえる「食事、特にタンパク質の摂取量が不足している状態」では「低栄養性脂肪肝」になることがあるんだそうですよ。
内臓脂肪は良くないものでしょうけど、特に「脂肪肝」がインスリン抵抗性を引き起こし、糖尿病にとって非常によろしくないと言えそうですね。
筋肉のインスリン抵抗性をどうする?
単純に「筋肉が多ければたくさんブドウ糖を消費してくれるから血糖値が上がらないだろう」と考えることはできないようです。私も今まで、同年代の女性の平均より筋量が減少したことは1度もなかったです。
しかし、2型糖尿病では筋肉が血糖を取り込みにくくなっています。下の図は九州プロサーチLLP様のサイトから引用させていただきました。
運動すると骨格筋内や脂肪細胞内に潜んでいる「GLUT4」が細胞表面に出てきて血糖を取り込む作業を行います。
インスリン抵抗性があると筋肉が血糖を取り込みにくくなっていますが、定期的に運動を行うことでGLUT4を増やし、血糖を取り込みやすい状態にすることができます。
運動は筋トレ、ウォーキング、その他の有酸素運動いずれも有効だそうです。なるべく車に乗らずに歩くことを心がけるだけでも良さそうですね。
図ではビグアナイト薬(メトホルミン)の服用によって骨格筋への糖の取り込みが増えるとありますが、結局、薬を飲んでも運動を全くしなければあまり意味がないということですね!
脂肪肝が筋肉のインスリン抵抗性を悪化させる!?
金沢大学の研究により「筋肉に脂肪がたまってもインスリン抵抗性が起こるわけではないが、肝臓に脂肪がたまると肝臓及び筋肉のインスリン抵抗性を引き起こす」ことが分かったそうです。
脂肪肝があると、筋肉が血糖を取り込みにくくなるのでとても良くないということですよね。運動を日常的に行っていても、何らかの理由で脂肪肝になってしまうと結果が出ないというわけです。
運動「だけ」で脂肪肝をスッキリ解消しようというのはなかなか困難なことだと思います。やはり、食事制限も必要です。
脂肪肝と聞くと高脂肪食がよくないような気がするかもしれませんが、実は脂質よりも糖質の摂り過ぎがより脂肪肝の原因になりやすいのだそうですよ。もちろんお酒も良くありません。
タンパク質の欠乏があると「低栄養性脂肪肝」になりやすいですし運動しても筋肉が増えませんから(減ることも!)タンパク質は減らしすぎてはいけません。
お酒をやめ、タンパク質をしっかり摂って糖質の食べ過ぎをしないようにして定期的に運動することが効果的だと思われます。
ただ、脂肪肝ではなく定期的に運動していてインスリン抵抗性がない状態でも糖尿病の状態の方はたくさんいらっしゃいます。すでにインスリン分泌能力が低下してしまっているからです。
それでも良い状態をキープするためにも、なるべくインスリン抵抗性のない状態にしたいですよね。どうしても必要に迫られてインスリン注射をする場合でも、その量をなるべく少量で済ませるほうが体に良いに決まっているのですから。
運動療法も大事、食事療法も大事なんだね!
そうね!そして糖質オフのお酒だからってたくさん飲んで良いわけがないわ、気を付けましょう。