「ケトン性低血糖症」とは?
先日、5年前から9歳の娘に食事を与えなかったり下剤を飲ませたりして何度も繰り返し「ケトン性低血糖症」に陥らせ、娘を入院させ共済金をだまし取っていた疑いで母親が逮捕されるという事件がありました。
ケトン性低血糖は、糖尿病などの基礎疾患がない生後6か月~5歳ぐらいまでの子供に多く発症し、何らかの原因によって食事が十分に摂れず食事からのブドウ糖の供給がないことから低血糖とケトン体増加が起き、吐き気・嘔吐・倦怠感などの体調悪化を起こすものです。
食事からのブドウ糖の供給が途絶えて一定時間が経過しても、健康な成人の場合は肝臓で「糖新生」によってタンパク質や脂質からブドウ糖が作り出されたり、ケトン体がエネルギーとして利用されます。
しかし子供、特に痩せている体の小さい子では筋肉量が十分ではなかったり、また体質的にケトン性低血糖症に陥りやすい子もいるそうです。
今回の事件で知人女性は「この子、毎日きちんとご飯を食べていないんだろうなと見てわかるぐらい骨が浮き出ていてガリガリだった」と証言しています。
私は2歳になったばかりのころ「自家中毒」と診断されて小児科に入院したことがありますが、主な症状が多少異なるだけでケトン性低血糖と同様の状態のようですね。その時は弟が生まれたばかりでストレスが原因じゃないかと言われたようですが、よくわかりません。
小さい子がなりやすい症状なのですね。
そのようね。糖尿病とは関係がないみたい。
どのぐらいでケトン性低血糖症になる?
健康な成人が丸1日ぐらい絶食しても何とも無いですが(以前私が85時間ぐらい断食してケトアシドーシスになったのは薬のせいだろうと言われました)、子供によってはもっと短時間でケトン性低血糖に陥ることがあります。
小児科では12~18時間の絶食検査を行い、低血糖になるかどうかでこの病気の診断を行うことがあるそうです。
15時におやつを食べて、何らかの理由により夕食を食べずにそのまま寝てしまった場合、翌朝の朝食が7時だとすると、その直前にはすでに16時間近くの絶食をしたことになります。おやつを食べなかったとすると絶食時間は19時間弱になっているかもしれません。
これは、子供であればみんな同じようにそうなるというわけではありません。うちの息子達は幼児の頃、スイミングの帰りに疲れて夕食を食べないまま寝てしまうことが何度かありましたが低血糖らしき状態になったことは1度もありませんでした。
体質もありますが、ビタミン(B1、B2、ビオチン)の不足では肝臓での糖新生が十分に行われず、ケトン性低血糖の発症の原因になりやすいそうです。
ケトン性低血糖症になりやすい子は長時間食事を抜かない等気をつけていれば10歳ぐらいで自然と起こりにくくなるそうです。
ケトン体が危険なのか?それとも…
私が20年以上前に学生時代に使用していたテキストには確かに「ケトン体が出ると危険」というようなことが書いてありました。しかし、本当にそうでしょうか?
とある製菓会社のHPには「ケトン体は糖が不足すると増える危険物質」と書いてありましたが、飴玉などを製造している会社ですからまあ…
昔は「ケトン体は危険!」で思考停止していたかもしれませんが、近年ではケトン体には心保護作用などプラスの作用があることが確認されて医学書にも載っていますし、薬を複数飲んでもなかなか発作が止まらない「難治性てんかん」の治療食としても正式に認められました。
どんな食事療法や薬にもメリットとデメリットがあり、メリットのほうが上回ると考えられるからこそ認められるわけですから、血中ケトン体濃度をかなり高めるケトン食が多くの子供たちにとって命を脅かすような危険なものであるはずがありませんよね。
また通常、健康な状態ではケトン体が増えると言っても際限なくどんどん増えていくわけではなく、きちんと制御されています。病的な原因があって制御が効かなくなった状態では「危険」なわけです。
糖質の多いものをしっかり食べているにも関わらずケトン体がどんどん増える…それはインスリンがきちんと作用しないために、体が血糖をエネルギーとして利用できなくなっている兆候かもしれません!
とにかく糖質を食べていればいい?
成人の糖尿病患者でもそうですが、低血糖に陥った時は素早く血糖値を上げなければいけないので応急処置としてブドウ糖を摂取しますよね。
では、ケトン性低血糖症になりやすい子は予防のために糖質ばかり食べていればいいのでしょうか?
「痩せ型で筋肉が少ないこと」が発症しやすい原因のひとつなのですから、できれば筋肉の材料となるタンパク質などもしっかり摂取したほうがいいですよね。短期的にはどうってことないでしょうが。
「食事を抜いてはいけないなんて嘘だ!」なんて言われたりもしますが、少なくとも一部の子供さんに限って言えばやはり、食事を抜くのは良くないようです。
子供は食事抜きはしないほうがよさそうですね。
そうね、ただ食べる内容と量には気をつけたらいいかもしれない。