糖尿病合併症同士が悪影響を与え合う!?
糖尿病の3大合併症といえば「神経障害・腎症・網膜症」なのは有名ですが、糖尿病合併症が互いに影響を与え合っていることもあることをご存じでしょうか?
タンパク質摂取量が不足すると、血液中にアルブミン(血液中のタンパク質の60~70%を占める)が不足し、全身のむくみの原因になります。
タンパク質不足のほか、肝臓の病気でアルブミンを十分に合成できなくなった場合やネフローゼ症候群で尿に大量のアルブミンが漏れる場合などに血液中のアルブミンは不足します。
ネフローゼ症候群はいろいろな原因で起こりますが、糖尿病腎症の場合は第3期Bから第4期にかけてそうなるようですね。下の図は全腎協様のサイトから引用させていただきました。
そして血液中のアルブミンが不足することによって全身で起こる浮腫は、目の網膜でも起こるのだそうです…もちろん、原因は他にもいろいろありますけれど。
ネフローゼ症候群と呼ばれる段階になってアルブミンが大量に尿に出ていく段階よりも前、微量アルブミンと呼ばれる段階から糖尿病網膜症が進行しやすくなるのではないかと言われています。
「血糖値が高かったり高インスリンだから複数の糖尿病合併症が同時に進行していくんだろう」と思っていましたが、互いに悪影響を与え合うこともあるとは驚きです!
へぇぇ…合併症同士が影響を与えることもあるなんて知らなかったなー!!
そうでしょう?これは何とかしなければいけないわよね。
糖尿病腎症と高血圧と心臓と脳の関係…
血糖値が高いと、浸透圧の関係で血液量が増えるために高血圧になりやすいです。また2型糖尿病患者はインスリン抵抗性が多少なりともあったりしますが、インスリンの効きが悪いのを補おうとしてインスリン分泌量が増えます(進行するとインスリン分泌不全になりますが)。
糖質制限をするとインスリンが減るので腎臓から塩分が排泄されやすい傾向になるので、減塩しすぎるとボーッとしたりだるくなることがあるので気を付けましょうと言われますよね。
そして腎臓は血圧を一定に保つ役割も持っているのですが、糖尿病腎症が進行するとこの働きがうまくいかなくなり、高血圧になりやすいそうです。
糖尿病腎症が進行すると高血圧になり、高血圧がさらに腎臓の機能を悪化させます。そして高血圧が脳梗塞・くも膜下出血・狭心症・心筋梗塞などのリスクを高めます。
そして健康な方は夜中寝ている間は血圧が低めになるのが普通ですが、糖尿病患者では下がらないことも多いそうですよ。
原因はいくつかありますが、糖尿病神経障害の自律神経障害が原因でそうなっているケースもあるのだそうです。
自律神経障害で迷走神経(運動神経や感覚神経と副交感神経が合わさったもの)が障害されると、相対的に交感神経機能優位な状態となり、そのことが本来は夜中には下がるはずの血圧を高いままにしてしまうということですね。
また、時に糖尿病ではない方ですら高血圧が原因で網膜症になることもあるぐらいですから高血圧は糖尿病網膜症にも良くありません。
糖尿病腎症が糖尿病網膜症を悪化させ、糖尿病神経障害が糖尿病腎症を悪化させ、糖尿病腎症が心血管疾患や脳血管疾患を増加させる…本当に悪循環ですよね。
糖尿病患者がなぜそうなってしまうかを考えれば「高血糖」と「高インスリン」を何とかするべきだと思います。
普通はインスリン抵抗性がないとされる1型糖尿病患者も、1型の方よりも平均血糖値が低めの2型糖尿病患者もどちらも糖尿病合併症になるのだから、高血糖も高インスリンもどちらも良くないのではないでしょうか?
高血糖と高インスリンを避けるにはどうしたら?
糖尿病腎症といえば減塩が思い浮かびますが、じつは日本人の約半分は遺伝子の違いにより、塩分制限をしても血圧は下がりにくいかもしれません。
もちろん塩分摂取量に関して主治医の指示を守ったり必要に応じて服薬することは大事なんですけど、糖尿病患者ならではの問題として「高血糖」「高インスリン」を何とかしなければいけません。
糖質を多く摂取すると血糖値が急上昇するのは分かりやすいのですが、それでは糖質制限をすれば万事解決かと言うと必ずしもそうではないようです。
糖尿病患者はタンパク質でも血糖値が間接的に上昇する場合がありますが、血糖値は少ししか上がらなくても、タンパク質で糖質と大差ない量のインスリンが分泌されるのではないかということです。
タンパク質と糖質を同時摂取した場合、インスリン分泌量はさらに劇的に増えるそうです。2型糖尿病患者では特に「肉をがっつり食べて糖質は少しだけ減らす」というのは高インスリン血症の原因になるかもしれません…
同じタンパク質量でも、タンパク質の種類によってもインスリン分泌量は異なるそうです。4種類の動物性食品(卵・七面鳥・マグロ・ホエイ)由来のプロテインを飲むと、ホエイプロテインでもっともインスリン分泌量が多く、もっとも少ない卵の約2倍になりました。
タンパク質でもインスリンが分泌されるからといってタンパク質を十分に摂取しないのは危険です。タンパク質不足で血中アルブミンが減少すると、網膜を含めて全身で浮腫が起こりやすくなるのは冒頭で紹介した通りです。
肝臓が糖新生によって必要な糖を作り出す機能が正常に働いていれば、食事から大量に糖質を摂取する必要はありません。糖尿病患者はなかなか空腹時血糖値が正常値まで下がらずに悩んでいる方も多いのでは?
ホエイプロテインは効率よくタンパク質を摂取するために優れたものではありますが、2型糖尿病でタンパク質でも血糖値が上がりやすいことで悩んでいる方には注意が必要かもしれません。
卵などタンパク質の中でも比較的インスリンが分泌されにくい食材を多めに取りいれ、タンパク質と糖質を同時に大量摂取しないことを心がけて適量のタンパク質を摂取することにしてみては?
またインスリンがたくさん分泌されたとき、同時に摂取した糖質や脂質は余ると体脂肪になりやすいのです。糖尿病ではない方の場合はほとんど問題にならないかもしれませんが。
そういう意味では、「脂質は好きなだけ食べても大丈夫」とは言えないかもしれませんね。糖尿病患者さんは。そして高血糖と高インスリンの両方に気を付けて、糖尿病合併症の悪循環を断ち切りたいですね。
タンパク質不足はいけませんが、高インスリン血症にも気を付けないといけないんですな。
そして糖尿病腎症や網膜症、神経障害などの合併症を進行させないように気を付けましょう!