ステロイドは強力な薬で副作用も色々あります
ステロイドは、腎臓の上にある副腎で作られる「副腎皮質ホルモン」の1つです。ステロイドホルモンを薬として使用すると体の中の炎症を抑えたり、体の免疫力を抑制したりする作用があり、さまざまな病気の治療に使われています。
強力な薬だけに、医師の指示にしたがってきちんと使用しても副作用が出てしまうことがあります。
たとえば風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなったり、骨が弱くなったり、消化器に潰瘍ができやすくなったりニキビ・メンタルの症状・不整脈や目の症状が出ることもあります。
そして内服薬だけではなく外用薬、吸入薬、注射薬も含めてステロイドを投与したことが原因で「ステロイド糖尿病」を発症することがあるのです。
このごろ「ステロイドをむやみに怖がるんじゃない!」という意見があるようですが、上の日本内分泌学会様のサイトでも「一般の皆様へ」としてきちんと書かれていることです。
ステロイド絶対反対!!ではなく、どのような副作用が出る可能性があるのかを正しく知ったうえで、どうしても必要な時に必要なだけ使うのなら良いと思うのです。
ひとつだけ、これだけはどうしても患者さんたちのために言いたいのですが、ステロイド糖尿病やそのほかのステロイドの副作用に苦しんでいらっしゃる方は別に使い方が悪かったわけではないと思います。
副作用が出るかどうかなんて医師にも使う前には分からないでしょうし、正しく使っていても副作用が出ることはあるのですから。
お医者さんに言われたとおりに飲んでいて副作用が出たのに責める人が居るなんてひどいなぁ!
自分がそういう経験がないからって、あんまりよね!
ステロイド糖尿病ってどんな病気なの?
ステロイド糖尿病を発症しやすい方の特徴として、家族に糖尿病患者がいる(遺伝)・肥満・高齢・ステロイドを長期間or大量に使用しているということが挙げられるそうです。
1962年とちと古いデータではありますが、ステロイドを投与された日本人の患者の7.3%が糖尿病を発症し、ステロイドを中止した後も糖尿病が治らない患者もいるそうです。
212名のステロイド糖尿病患者さんのその後を調べたところ、ステロイド中止後に糖尿病が治った方が53%、改善25.5%、変わらない12.5%、悪化3.8%。死亡3.8%、観察中1%でした。
ステロイドによってインスリン抵抗性が生じることと、肝臓での糖新生が亢進すること、またインスリン分泌を抑制することがステロイド糖尿病の原因だそうです。
ステロイド糖尿病では朝起きたときの空腹時血糖値が低いという特徴があります。食後高血糖があっても、普通の健康診断は空腹時に行うのでなかなか気づかれないことがあるそう。
また朝にステロイドを内服した場合、昼から夕方にかけてのインスリン抵抗性が増し、昼以降に血糖値が高くなる傾向があります。
食事療法だけで血糖コントロールが十分にできない場合はインスリン注射などをすることになります。
ステロイドの塗り薬なら大丈夫なの?
「ステロイド剤の内服と違って塗り薬なら大丈夫だから」とよく言われますけど、上の日本内分泌学会様のサイトでは「内服薬だけではなく外用薬、吸入薬、注射薬も含め」と書かれています。
また私の経験ですが、咳が1か月以上止まらなくて耳鼻科で「咳喘息ではないでしょうか」と相談するとステロイド吸入剤を出されました。糖尿病であることはきちんと伝えてありました。
使用すると翌朝の血糖値が150を超えて「ギャッ!!」とびっくり。しかも数日使用しても良くならず、怖くて使用をやめてビタミンサプリを増量したら嘘のように止まりました。きっと咳喘息ではなかったのでしょう。
後日、糖尿病内科の主治医に報告すると「ああ、あれは結構吸収されるから血糖値が上がるんだよね」とのこと。耳鼻科ではその説明はまったくなかったです!
↑↑↑もともと2型糖尿病でHbA1c7%前後だった患者さんが強いステロイドの塗り薬によって血糖値が803まで上がって入院したという例もあります。
もともと糖尿病家系の方がステロイド剤をきっかけに糖尿病になったり、糖尿病が悪化したりする可能性は十分にあるので気を付けるのは当然ではないでしょうか。
皮膚科でステロイドの塗り薬を使用する際に「家族に糖尿病の方はいますか?」などとわざわざ確認してくれるお医者さんがどれほどいらっしゃいますかね…私は1度も訊かれたことはありませんけれど。
ただし1週間とかごくわずかな期間に主治医に言われたとおりに外用薬を塗ったぐらいで糖尿病になることは考えにくいと思います。長期間になるといろいろ問題が…
どの薬にも同じことが言えると思いますが…
ステロイドだけに限った話ではありませんけど、どのクスリにも必ずリスクがあります。たまたま今までなーんにもなかった方は良かったねと思いますが、薬によっては命に関わる副作用が出ることもあります。
ステロイドを怖がる方たちに対して「専門の医師たちが勧めているんだから危険なわけがないだろう」とか「副作用が起きるのは正しく使わなかった人だけだ」と責める人もいますが、そんなことはないですよね。
専門医が正しく処方しても残念ながら一定の割合でステロイド糖尿病などの副作用は起きてしまいます。その現実は認めなければ。
私が飲んでいる糖尿病薬のメトグルコだって、かなりの確率で胃腸の副作用が出て飲めない方たちがいらっしゃいます。自分に合うからと言って「みんなもこれを必ず飲むべき!」なんて言えません。
ステロイドは、どうしても使わなければいけない場合はあると思います。そういう時に正しく使用することは良いと思います。
しかし、使わなくても済む場合だってあるんじゃないでしょうか。「何かほかに方法がないでしょうか?」と相談してくる方を「面倒くさい患者だな」と言ってしまっていいのでしょうか。
何も感情的にステロイドを毛嫌いしている方ばかりではないと思います。その方やご家族が以前に大変な思いをなさった経験があるのかもしれないじゃないですか。
「ステロイドを使わなくて病気が悪化したら誰が責任を取るんだ」という意見も見かけたことがありますが、ステロイドを使用して病気が悪化したら主治医は責任を取ってくれるのでしょうか?
ステロイドを含めて、薬にはリスクが伴うことを正しく知るべきです。そのうえで必要な時に使う。これは決して「標準治療の否定」ではないと考えます。
良いことばかり話すのではなく、副作用のことはきちんと知るべきですな!
そうね。あと「標準治療」でうまくいかない人たちのことを冷たく切り捨てないで欲しいわ。