糖尿病合併症になる糖尿病患者はどれぐらい?
糖尿病と診断された日本人のうち、糖尿病合併症の神経障害は11.8%、腎症11.1%、網膜症10.6%、足壊疽は0.7%の患者に見られるそうです。
この数字には「今年、はじめて糖尿病と診断されたばかりです」という人も含まれるわけで、糖尿病を発症してからの期間が長くなればなるほど合併症を持つ人の割合も上がります…
下のグラフは、さけみ眼科様のサイトからお借りしました。網膜症を持つ患者の割合が10.6%といってもそれは発症後間もない患者の話で、実際は発症から年月が経てばたつほど発症率は上がります。
日本は医学が進歩している国だと思うかもしれませんが、現在の日本では年間に3000名が糖尿病網膜症から視力を失い、16000名が糖尿病腎症から新たに人工透析を開始し、3000名が糖尿病が原因で足を切断しているのが現実です。
そして知っておいてほしいのは、それらの方たちが全員医師の言うことを聞かずに好きなだけ暴飲暴食をしまくっていたわけではないということです。
私は糖尿病性ケトアシドーシスを起こして入院した時、最初に妊娠糖尿病になってから11年ほど経過していました。産後はいったん治ったはずでしたが、いつの間にか2型糖尿病になっていたのでしょう。
そして糖尿病の3大合併症である神経障害・網膜症・腎症の3つ(神経・目・腎臓の頭文字を取って「しめじ」と呼ばれます)を既に持っているので、自分への戒めも込めて今回は糖尿病合併症について書いてみることにします。
糖尿病で何が怖いのかと言えば、やっぱり糖尿病合併症なんだよニャア…
ただ血糖値が高いとか尿に糖が出ると言うこと自体は別にどうってことないからね。
HbA1cが7以下なら糖尿病合併症にはならない?
HbA1cとは「赤血球中のヘモグロビンのうちどれくらいの割合が糖と結合しているか」を示す数値で、過去2か月ぐらいの血糖値の平均値を反映します。
HbA1cは正常値は4.6~6.2となっていますが、実際には5.6を超えると食後高血糖があるかもしれないので気を付けたほうがいいとされています。
私が糖尿病性ケトアシドーシスで入院した時のHbA1cは15でした。健常者の方の3倍もあったことになります。超ウルトラ横綱級に悪い数値ですよね!
まぁ大きな病院ではこのぐらいの数値の人はたまに来るそうですけど、それにしたってあまりにもひどい数値です。よく生きていたものだなぁと自分でも思います。
日本では、血糖正常化を目指す場合は「HbA1cは6以下」、合併症予防のためには「HbA1cは7以下」、何らかの理由で治療強化が困難な場合は「HbA1cは8以下」を目標にしようと言われています。
しかし、HbA1cが7以下であれば絶対に糖尿病合併症にならないのかと言えば、そうでもないらしいです。みなさんの周囲にもいらっしゃるでしょう?一生懸命頑張って、それでHbA1cも7未満にもかかわらず腎症や網膜症になった方が。
私は糖尿病と診断された後すみやかに血糖コントロールに励み、いったん血糖値が下がってからはHbA1cが7を超えたことは1度もありませんが、糖尿病合併症が少し悪化した時期もありました。
確かに血糖値が高くなればなるほど合併症になる確率は上がるのでしょうけど、「HbA1c7以下なら大丈夫」というのはあまりにも甘すぎる数値じゃないでしょうか。
たとえHbA1cや血糖値が低くても糖尿病合併症になる?
HbA1cというのは、単に過去2か月ほどの期間の「血糖値の平均」を表しているにすぎません。1日の中で血糖値がどのように変動しているかはHbA1cだけ見ても分かりません。
HbA1cの値が同じでも、1日の中で血糖値がほとんど変動しない人と、高血糖と低血糖を繰り返している人の場合では、後者のほうがより糖尿病合併症になりやすいです。糖尿病網膜症も、低血糖を頻繁に繰り返す人に起こりやすいことが分かっています。
また、血糖値が同じでも、その血糖値を維持するために大量のインスリンを使用している人ほど糖尿病合併症になりやすいです。
つまりインスリンの効きが悪くてそれを補うためにたくさんのインスリンを分泌してしまっている状態か、外から大量にインスリン注射をしている状態ですよね。
1型糖尿病は肥満とは関係ないと思われがちですが、もともと肥満気味の方がたまたま2型ではなく1型糖尿病になることもありますよね。
高インスリンは動脈硬化の原因となり、それが目や腎臓でも起こります。インスリンを分泌する能力が高いことが、必ずしも良いことではないわけですね。
糖尿病合併症になりやすい体質というものは遺伝と関係があるのでこれらだけが糖尿病合併症を決めるわけではありませんが、ひとつの重大な要素ではあります。
どうしてもインスリン注射が必要な方が最低限必要な量を注射するのは何ら問題はありませんが「どうせインスリン打つからいいや♪」と言って糖質を山ほど食べてインスリンをたくさん打ってしまうと、やはり良くないのです。
血糖値が下がったのに糖尿病合併症が進行?
血糖値が高いことは良くないことは分かります。血糖値が高い状態が続くと、血管内皮がキズついて動脈硬化が進行していきますもんね。
でも、新井圭輔医師や水野雅登医師は、ある種の経口血糖降下薬やインスリン注射を使用していて血糖値は比較的良好にコントロールできているのに糖尿病合併症になった患者さんたちを経験なさったそうです。
DPP-4阻害剤でHbA1cが下がったのに腎機能が悪化した患者さんや、インスリン注射をしていて眼底出血した患者さんなど。
アメリカのバーンスタイン医師は、HbA1cが5%台でも糖尿病合併症を発症した患者さんを知っているそうです。
もちろん、DPP-4阻害剤やインスリン注射をしている患者さんがみんなそうなるわけではありません。しかしこのような例もあるということは忘れないでいただきたいのです。
私は入院直後はHbA1c15だったにも関わらず「網膜症はありません」と言われたのに、DPP-4阻害剤のグラクティブとインスリン注射を使い始めてから糖尿病網膜症になりました。
糖尿病網膜症を発症してからネットでインスリン注射「ランタス」の副作用を調べると「糖尿病網膜症の顕在化または憎悪…0.1~5%未満」と書かれていて愕然としました。
そうなってしまう患者は0.1~5%ということなので20人中19人は何ともないことになりますが、自分が残り1人になってしまったショックが分かりますか?こういうことが起きる可能性について、主治医からは何も説明されませんでした。
いったん糖尿病合併症になると容易には戻せない?
糖尿病合併症もごく初期の段階であれば血糖コントロールを厳格に行うことで押し戻すことが可能です。
しかし、ある程度以上糖尿病合併症が進行してしまうと、どんなに血糖値を良好に保ったとしても糖尿病合併症はさらに進行していくそうです。
特に若い患者は糖尿病網膜症の進行が速いと言われており、若くして糖尿病になった方は気を付けなければいけません。
若い時に糖尿病になったということは、発症してからの年数もどんどん長くなりますし、いったん合併症になると進行しやすいのでね…私も20代で妊娠糖尿病になってからの2型糖尿病なので気を付けなければ。
ただ血糖値を下げるだけではなく低インスリンで
糖尿病患者の血糖値が高いことは良くないので、血糖値を何とか正常値に近い状態でキープすることは非常に大切です。
高血糖も低血糖も人体にとって非常に良くないからこそ、体はどちらも起こらないように常に血糖値を狭い範囲内で一定に保とうとしているわけです。もっとも糖尿病患者の場合、血糖値を下げる方がきちんとできなくなってしまっているわけですが…
血糖値だけ良好でも、インスリンが大量に体内を循環することは自己分泌であれ注射であれ体に良くないというしかありません。
高インスリン血症は糖尿病合併症の他、動脈硬化・認知症・ある種のガン・肥満などのリスクを上げるからです。
そのあたりを踏まえて、どこまで食べることを自分に許すかは、自己責任で判断しなければいけません。ただ血糖値さえ低ければそれでいいと思うか、それとも…
糖尿病患者にとって何が大事かと言えば、血糖値やHbA1cの値を友人たちの中でいちばん低くすることではなく糖尿病合併症を発症・進行させないことですよね。そのためには、何をどうしたらいいのかを考えてみてください。
糖尿病だから血糖値が低ければいいやって思いがちだと思うけど、糖尿病合併症に気を付けないとニャ!
すでに糖尿病合併症になってしまった方も、諦めずに私と一緒に一緒に頑張りましょう♪