コレステロールの薬スタチンが血糖値を上げる
アメリカの後ろ向きコホート研究(特定の条件を満たした集団を対象にして診療記録などから過去の出来事に関する調査を行う)によると、コレステロールを下げる「スタチン」と呼ばれる薬を糖尿病患者に新たに投与すると、他の薬を投与した場合と比較して糖尿病が進行する患者の割合が有意に高かったそうです。
スタチンは、体内でコレステロールが合成される過程で働くHMG―CoA 還元酵素というものを邪魔することによってコレステロールの合成を減らす薬です。
スタチンは確かにLDLコレステロール値を下げますが、反面、横紋筋融解症(骨格筋の融解、壊死により筋成分が血中へ流出し、急性腎不全になることもある)や血糖値上昇といった副作用を持つことは以前から知られていました。
スタチンがインスリン抵抗性を生じさせる(インスリンの効きを悪くする)ために血糖値が悪化すると考えられているそうですよ。
また、現在まだ糖尿病ではない人にスタチンを投与すると、新たに糖尿病を発症するリスクが高まるのだそう。
LDLコレステロールが下がっても、その代償として血糖値が悪化して糖尿病が進行することは本当に良いことなのでしょうか???
全員ではないにしても、一部の糖尿病患者の血糖値が悪化するのは良いことではないと思うんだけどな。
血糖値が上がったら薬やインスリンを増やすことになるんだろうけど、薬の量がかなり多くなる人もいるわね!
そもそもなぜLDLコレステロール値が高いのか?
ひと昔前まではHDLコレステロールを「善玉コレステロール」、LDLコレステロールを「悪玉コレステロール」と呼んでいました。
もしかしたらテレビの健康番組なんかの影響でまだこう呼んでいる方もいらっしゃるかもしれません。私はとっくに観ていませんが💦
コレステロールは細胞膜の主要な構成成分であり、脳や肝臓、神経組織などに多く含まれています。またホルモン、胆汁酸、ビタミンDの原料となり、生命維持に欠かせない重要な物質です。
コレステロールが欠乏すると、細胞膜や血管が弱くなったり、感染症にかかりやすくなったり、脳出血などを起こしやすくなったりします。
コレステロールを多く含む食品を食べるからLDLコレステロール値が上がると思いがちですが、じつは体内で合成される量のほうが平均して3倍も多いのです。だから菜食主義でもコレステロール値が高い人もいるわけですね。
肝臓から全身のすみずみまでコレステロールを運ぶ働きをするのがLDLと呼ばれるリポタンパク(脂質とタンパク質が結びついたもの)です。
そして、余ったコレステロールを回収して肝臓まで持っていくのがHDLというリポタンパクになります。
LDLコレステロール値が高いと動脈硬化が進行するからLDLコレステロールは危険!減らさなければ!と一般的には言われています。
しかしそもそもなぜLDLコレステロール値が高くなっているのかを知らなければ。そこを明確にしないでただ数値だけ下げる薬を飲めば何もかも解決するのか?と思いますよね。
LDLコレステロール値が高くなる原因は?
家族性高コレステロール血症という病気があります。これは遺伝する病気で、血液中のLDLコレステロールを肝臓で処理できないか処理する能力が低いため、その血液中濃度が上昇し、血管壁にたまって若い時から動脈硬化が進行します。
でも、そうではなく、以前はLDLコレステロール値が正常であったのにある時から高くなってしまうことがあります。
①コレステロールの摂取量が多い…卵などコレステロールを多く含む食品の摂取量が多いと、LDLコレステロールが上がらない人と上がる人がいるそうです。
毎日10個の卵を食べているにもかかわらずLDLコレステロール値は正常値という方も知っているので、体質的な差もかなりあるのかもしれません。
先ほども書きましたが、コレステロールは体内で合成させる量のほうが多いので、菜食主義でもコレステロール値が高い方もいらっしゃいます。だから、卵などを食べないようにしても全員に劇的な効果が出るとは限らないわけです。
②糖質制限している…これは肉を多く食べるからとは限りません。肉や卵を減らして青魚中心にしてもLDLコレステロール値はあまり下がらなかったという方もいます。
糖質制限に詳しいドクターシミズこと清水泰行医師によれば、糖質制限している人、特に痩せていてジョギングなどの運動を日常的に行っている人は脂肪酸の需要が高く、どんどん中性脂肪を作って体のあちこちに届ける必要があるとのことです。
しかし中性脂肪を作るとLDLもセットで増えてしまいます。肝臓で作られるVLDLは、コレステロールと大量の中性脂肪を含んだもので、これが体内を巡っているうちにLDLになります。
中性脂肪が必要なのでLDLも一緒にたくさん作った結果、LDLコレステロールが高値になってしまうということです。
しかしこの場合のLDLコレステロールは「サイズが大きくて動脈硬化の原因にはなりにくいもの」だそうで数値が高くても心配はいらないそう。
中性脂肪値が高くてHDLコレステロール値が低い場合はLDLコレステロール値が高いのは「小粒で非常に有害なLDLコレステロール」である可能性が高いとのことで、心配すべきはこちらです。
③女性ホルモンの影響…女性の場合、閉経後は急激なエストロゲン(女性ホルモンの一種)の減少によりLDLコレステロール値が高くなりやすいです。
また妊娠後期には中性脂肪もコレステロール値も高くなりますが、これは生理的な変化であり一時的なものです。
あなたはどうしてもスタチンを飲まなければいけませんか?
スタチンを飲めばLDLコレステロール値は確実に下がります。私は7年前に糖尿病性ケトアシドーシスで入院した折にLDLコレステロール値183だったためにリバロというストロングスタチンを処方され、数値が72まで下がりましたがいろいろ考えて主治医に相談してやめてしまいました。
今思うと、検査したのが入院後絶食2日目だったことでLDLコレステロール値が高く出た可能性もあります…入院前日の昼から食べていなかったので長時間断食をしたことになります。
1日だけのプチ断食ならともかく、数日にわたるような断食中はLDLコレステロール値が高くなるそうですよ。だから普段はもっと低い数値だった可能性が高いです。
そして残念なことに、スタチンを飲んでLDLコレステロール値を下げても必ずしも心血管疾患のリスクが減るとは言い切れません💦
家族性高コレステロール血症などで積極的に治療しなければいけない場合は別として、LDLコレステロール値が「正常値」より高い人が全員スタチンを飲まなければいけないとは言えないのではありませんか?
人によっては糖尿病が進行したり、横紋筋融解症などの副作用が出ることもあります。見かけ上のLDLコレステロール値だけ下げても他にもっと良くないことが起きるようでは目もあてられません。
また「糖質制限しているときは悪玉コレステロール値が高くて、やめたら下がったの~。やぱり糖質制限は健康に良くないのねぇ」なんて方もいらっしゃいますけど、おそらくその方は糖質制限中にLDLコレステロール値が高くなる機序を理解なさっていません。
糖質の摂取量を増やすと、脂肪酸の需要が減るというだけの話です。LDLコレステロール値が下がっても中性脂肪値が上がったりHDLコレステロール値が下がったりすると、良くない状態かもしれません。
どうしても下げたいなら主治医とよく相談して別の薬を処方してもらうという方法もありますし、ナイアシン(ビタミンB3)を飲むという方法もあります。
ただしナイアシンは扱いが特に難しいので、自己流でいきなり大量に飲み始めたりすると危険です…私も現在はナイアシンは飲んでいません。ナイアシンアミドを少量だけです。※ナイアシンアミドにはLDLコレステロール値を下げる効果はありません。
またマグネシウムも良いようですが、これ単独ではそこまで下がらないような気がします。いずれにしても医師のブログをきちんとお読みになり、十分気を付けて自己責任でお試しください。
薬はどうしても必要な場合もありますが、リスクもあります。本当にスタチンを飲まなければいけないのか、他に選択肢はないのか主治医とよく相談なさってくださいね。
LDLの数値だけ下がれば他はいいってことじゃないもんね!
まず、なぜ数値が高くなっているのかを考え、主治医とよく相談して対処しましょうね!必ずしも解決法はスタチンだけではないのだから。