糖質制限で糖尿病は治らない?
私は重度の2型糖尿病(1型やMODYも疑われましたが、たぶん2型だろうということになっています)で糖質制限をしています。
妊娠糖尿病のあと検査でギリギリ正常値が出たので、その後ときどき検査に来るようにとの指示も一切なく、ジムに通ったりして気を付けていましたがいつの間にか2型に移行していました。
とんでもなく体調が悪化してようやく病院へ行ったときにはすでに糖尿病合併症があり、その3か月後には「一時的にすごく悪化してまた良くなる人もいますが、あなたの場合はそうではなく一生インスリンが必要でしょう」と宣告されてしまいました。
主治医と相談して糖質制限を開始すると同時にアピドラはすぐに中止しましたが、食事とは無関係に打つランタスは7か月かかって少しずつ量を減らしてやめました。
それで「糖質制限は確かに食後血糖値は上がらないかもしれないけど対症療法に過ぎないじゃないか!」とよく言われていますよね。
確かにそれはそうだと思います。糖質制限で完全に正常値になり、OGTT(経口ブドウ糖負荷試験)でもすべて正常値になった方の話は聞いたことがありますけど、全員がそうなるわけじゃないですものね。
でもね、じゃあ標準治療やその他の治療って「対症療法」ではないんでしょうか?尿に糖を出す薬や「奇跡の神食材」で糖尿病が完治すると正式に認められていますか?
ネットでは怪しげな健康食品の広告などで「これ大丈夫なの?こんな書き方をしちゃって何か法律にひっかかったりしないの?」と思いたくなるようなものがあったりしますが…
なるほど!確かに病院で出される薬も、やめてしまえばまた血糖値が上がるんだニャア。
やめたらまた元通り…というものは対症療法よね、どんなものであっても。
病院のベテラン糖尿病専門医に訊いてみました
以前、病院主催の糖尿病教室で、どちらかと言えばあまり糖質制限が好きではないっぽいベテランの糖尿病専門医に「先生、糖尿病が完治した方っていらっしゃいますか?」と質問してみたんですよ。
すると「GDM(妊娠糖尿病)やソフトドリンクケトーシス(ペットボトル症候群)なら治るけど、それ以外はまぁムリだねぇ」とのこと。
ソフトドリンクケトーシスは清涼飲料水の飲み過ぎなどで短期間でかなりの高血糖になりますが、もともと糖尿病の程度は軽度だったという方も多いので治療後は寛解もあるようですね、「完治」はどうやらあまりなさそうですが…
その先生は私がインスリン離脱できたのも、ただのソフトドリンクケトーシスだったんだろうと思っていたそうで…でも糖尿病合併症があるから違いますよね!
医師達は、レアな症例に出くわすと症例報告をします。たとえば「みかんの大量摂取を契機にケトーシスで発症した2型糖尿病の1例」とか、「妊娠後期にケトアシドーシスを伴って急性発症した糖尿病の1例」とかね。
「血糖値を下げる効果がある程度認められているもの」はいろいろあります、論文を検索してみるとビタミン類やポリフェノールなどもあったりします。
しかし残念ながら、現在のところ「これで糖尿病が完治します」といった劇的な効果があると正式に認められているものはないんです。あったら大騒ぎですよね!
しかしごく初期の段階なら「完治する」こともある!
実は、糖尿病の初期段階、いわゆる「境界型糖尿病」「糖尿病予備軍」と呼ばれる段階なら完治することもあるんですよ。
糖尿病境界型の方たちにゆるめの糖質制限食(1日あたりの糖質摂取量が120g)を1年間継続してもらい、被検者の69.4%がOGTTで正常型になった(完治した)んだそうです。
糖質制限をしていても、治っていない方はOGTTをすると血糖値は爆上がりします。OGTTで正常型ということは、真に耐糖能が正常であることの証明です。
そしてこの実験で糖尿病に移行してしまった人は0名で、残りの方たちは糖尿病境界型のままだったそうです。
しかし対照群(糖質制限をしなかった人たち)では1年後に完治した人は8%でそのまま変化しなかった人は78%、残念ながら14%の方は糖尿病に移行したそうです。
この実験から分かることは、糖尿病の初期段階であればどんな方法でも「完治」する可能性はあるけれど、糖質制限は他の方法よりもより完治できる可能性が高いということです。
完治した割合が8%と69.4%というのは、明らかにものすごく差があるとは思いませんか?いったん発症してしまうと「完治」は難しいですが「寛解」はあるそうです。
肥満の患者が多いイギリスでは、2型糖尿病を発症してから6年以内の64人の患者が1年間のダイエットの結果、46%の方が糖尿病が寛解したそうですよ!
「完治」と「寛解」の違いは難しいですが、何らかの努力(薬、運動療法、食事療法など)を継続している結果として病気が治ったのと同じ状態になるのが寛解、なーんにも気にしないで生活してもまったく症状がなく発症前と同じ状態に戻ったままなのが完治でしょうか。
イギリスの患者さんたちはもともと太っていたので、食事療法をやめて好きなだけ食べだして再び太ったら「再発」するでしょうね。
アメリカの患者さんで、最初は運動療法と食事療法で糖尿病が寛解したのに油断してケーキなどを食べ始めたら前より重症になってしまった方もいらっしゃいます。油断はいけませんよね…
なぜ私の糖尿病は治らないのでしょうか
糖尿病境界型の方は糖質制限で「完治」する方が7割近くもいらっしゃいましたが、私のようにすでに糖尿病合併症も出揃っている段階では完治どころか「寛解」もありません。
先ほど紹介したベテラン糖尿病専門医の先生は「僕の患者さんは胃ガンの手術で胃を全摘出したらモノが食べられなくなってやせて血糖値も良くなったんだ」とおっしゃってました。
具体的に言うと、その方は以前はインスリン注射をなさっていたのを飲み薬3種類に変更できたのだそうです。
それを「すごいこと」「珍しいこと」と糖尿病専門医の先生がおっしゃると言うことは、どういうことか分かりますよね?
↓糖尿病のネコは時にインスリン注射から離脱できることもあるそうですが…
まだ糖尿病境界型と言われる段階では、生活の改善によって「完治」もあることは公式に研究によって確認されています。
そして2型糖尿病がそれほど重症になる前は、高度肥満や暴飲暴食など明らかに糖尿病に良くないであろう要因を取り除くことで糖尿病が「寛解」することもあります。
おそらく、糖質制限だろうと運動だろうとカロリー制限だろうと、初期段階であれば寛解する方は一定数いらっしゃるはずです。もともと生活が乱れていた方ほど改善は容易かも。
ただ問題は、すべての方がそのタイプではないということと、すでに糖尿病が進行している方たちはどうしたらよいのかということですよね。運動制限がある方もたくさんいらっしゃいます。
たとえ対症療法だとしても…
「糖質制限は対症療法じゃないか」と言われても、現在のところ糖尿病合併症もある羅病期間の長い重症患者を完治させる方法が何も存在しない以上、対症療法をするしかないのですよ。
病院で勧められる「標準治療」もすべて対症療法ですよね?インスリンは打てば血糖値が下がりますが、打ち忘れて糖質を食べ過ぎればまた血糖値は上がりますし、運動を完全にやめればいずれ元通りです。
糖質制限容認の方向に動いているアメリカやカナダと違って、日本では学会内に糖質制限に賛成の先生と反対の先生がいらっしゃるのでなかなか話がまとまらない様子。
しかし、議論の話題にすらならない怪しげな民間療法もたくさんあることを思えば…みなさんも「これってどうなの?」と思ったら、論文や症例報告があるかどうか調べてみてくださいね。本当なら必ず出てくるので。
以前は「いったん死んでしまったすい臓のベータ細胞は生き返らない」と考えられ、これがガチの糖尿病が完治できない原因だと考えられてきましたが、どうやらそうではないかもしれないということが分かってきました。
そうであれば、対症療法と思われる方法でもとにかくこれ以上すい臓に負担をかけないような生活をしていれば、10年20年と時間をかけて少しずつ回復していくこともあり得るのかもしれませんね!
飲むだけでハイ完治!って薬が存在しないんだから、自分に合った対症療法を続けるしかないよね、今のところは。
そうね、まだまだ寛解できる初期段階の方はとにかく自分が続けやすい方法なら何でもいいので頑張ってみて!