「糖尿病のない世界」を目指す!?
国立国際医療研究センター研究所糖尿病研究センターセンター長の植木浩二郎先生によれば、日本糖尿病学会は将来的な目標として『糖尿病がない世界』を掲げて活動しているそうです。
来年(2024年)の第67回日本糖尿病学会のテーマは『糖尿病のない世界を目指して』だそうです。本当に実現するのであれば、素晴らしいことですよね!
「糖尿病のない世界」とはどういう意味なのでしょうか。「糖尿病を発症する人をゼロにする」という意味?それとも「現在は完治はできない糖尿病(完治と寛解は異なります!)を完治できる病気にする」という意味?どっち?
今回は「糖尿病のない世界を目指す」ことが可能なのかどうか、そして何をどうしたらそのような世界に近づけるのかを考えてみることにいたしましょう。
糖尿病をなくすことができれば、素晴らしいですよね!
ええ、猫もヒトも糖尿病で苦しむ方は多いのよね。
糖尿病発症を100%予防できる?
糖尿病と言っても1型糖尿病、2型糖尿病、MODY、ミトコンドリア糖尿病、ステロイド糖尿病などいろいろありますけど、これらを100%予防することは可能なのでしょうか?
多くの糖尿病の発症には「遺伝子」が関与しています。MODYは特定の遺伝子が原因で発症しますし、2型糖尿病の発症にかかわる遺伝子はたくさん発見されています。
遺伝で2型糖尿病になると、早期からインスリン分泌不全(必要な量のインスリンを分泌できない)になりやすいそうです。家族に患者がいない糖尿病患者よりも、患者がいる糖尿病患者のほうがインスリン治療を行っている方が多いんだとか。
母親からのみ遺伝するミトコンドリア糖尿病や、特に糖尿病家系の方がステロイド治療をした時に発症しやすいステロイド糖尿病もあります。
「遺伝とは関係ない」と思われがちな1型糖尿病ですが、1型糖尿病の一部は発症しやすい遺伝子が存在することが分かってきました。
1型糖尿病になりやすい遺伝子+糖質過剰な生活習慣がリスクを上げているのではないかという仮説もあります。
このように、糖尿病の多くに「遺伝子」が関与している以上、問題は「遺伝を乗り越えて自分の努力で糖尿病発症を100%予防できるかどうか」ということになりますよね。
ぶっちゃけ、糖尿病家系ではない方の中には何をどれだけ食べても一生糖尿病にはならない方が山ほどいらっしゃいます。
一方、かなり気をつけていても2型糖尿病や境界型糖尿病になってしまった方もたくさん知っていますけど、今のところ例外なく親御さんのどちらかが2型糖尿病なんですよね。。
「糖尿病になりやすい遺伝子を持っていても、生活習慣に気をつけていれば発症を防げる」とよく言われますが、世間一般的に言われている「良い生活習慣」が全ての方の糖尿病発症を100%予防できるでしょうか?
↑↑↑個人差を無視しては、救われない方が必ず出ます!
どうやら2型糖尿病になりやすい体質もピンからキリまであるらしく「少し発症しやすい」方から「かなり発症しやすい」方までいらっしゃるようです。
ジュースをやめて主食を玄米にするだけでセーフの方もいらっしゃるけど、そうでない方もいらっしゃるのでしょう。
ましてMODYやミトコンドリア糖尿病など、「ちょっと食事に気をつけて運動する」程度で予防できるとは思えません。
遺伝という問題が関与している以上、「糖尿病をその人の努力によって100%予防する」ということは残念ながら不可能ではないでしょうか?…糖尿病にかかわる遺伝子を「修正」する方法が実用化されない限りは。
糖尿病は「完治」できる病気になる?
糖尿病発症を100%予防することが難しいのなら、どうにかして「糖尿病を発症しても完治させる方法」が実用化されれば「糖尿病のない世界」は実現できます。
完治とは「治療をやめて特に何もしなくても健康な状態を維持できる」ことですから、糖尿病予防のために特別に食事制限や筋トレなどをしなくても血糖値が正常値でいられる状態ということですよね。
なんといっても糖尿病と一生無縁な方々は好きなだけ食べて運動なしで座りっぱなしでも発症しないわけですから(私の友人にもそういう人がいます!)。
残念ながら今のところ、どの糖尿病も「完治」はできない病気です。完治へ向けて研究は行われていますけどね。しつこいようですが「完治」と「寛解」は異なります。
ステロイド薬が原因のステロイド糖尿病でさえ、ステロイドの使用を中止した後も糖尿病が治らないケースがあるそうです!…もともと糖尿病になりやすい体質の方がステロイド糖尿病になりやすいわけですしね。
患者数がもっとも多い2型糖尿病のうち「肥満などが原因でインスリンの効きが悪いだけで糖尿病家系ではなく、インスリン分泌能力が十分に保たれている」方は生活習慣を改善するだけで糖尿病が治ったのも同然の状態になることは期待できます。
しかし、欧米人が糖尿病になると急激にインスリンの効きが悪くなるのに対して、日本人はインスリン抵抗性よりもインスリン分泌能力が極端に低下するタイプが多いのだそうです。
私もそうですけど、インスリン分泌能力がある程度以上低下してしまうと、後は何をどう頑張っても薬やインスリン注射を使わないことには「健康な人並みに食べても大丈夫」という状態にはなりません。
それでも食事用のインスリン注射をしなくて済むように主治医の了解を得て糖質制限をしたり食後に歩いて血糖値を下げたりしています。
血糖値を乱高下させる原因は、ひとつでも少ないほうが何かと良いですから…しかし、これはその方の考え方次第でもあります。
いつか糖尿病のない世界は実現できる?
残念ながら今のところ「糖尿病のない世界」の実現はまだまだ難しいと言わざるを得ません。
しかし「糖尿病の発症を100%防ぐ方法」が見つかるかもしれません。それは現在日本糖尿病学会やその他テレビの健康番組などが勧めているような「健康的な生活習慣」ではなく、それ以上のものであることは間違いないです。
だって誰よりも「正しい医学の専門知識」があるはずの医師でさえ2型糖尿病になる方は大勢いるのですから!…あんまり言わないだけでね。
もっとも、「分かっちゃいるけどやめられない」という先生も多いでしょうけど、医師ですら実践できない方法を一般人に徹底させるなど無理に決まっています。
いま私達にできることは、糖尿病がこれ以上悪くならないように、糖尿病合併症の発症や進行をできるだけ食い止めながら、いつか来る「糖尿病のない世界」を待つことではないでしょうか。
そのために何をどれだけやらなければいけないのかは、個人差があるはずです。どこまで頑張るかもその方の自由です。いまできることをやりましょう!
今すぐは難しくても、きっといつかそんな日が来ますね!
そう信じたいわね!