動物性タンパク質が足りないとインスリン分泌低下!
糖尿病の食事療法にもいろいろあり、皆さんそれぞれ自分に合ったものを選択なさったら良いと思います。私は糖質制限・高タンパク食を実践しております。
どのような食事療法をなさるにしても、ちょっと気をつけていただきたいことがあるのです…それは「タンパク質不足」です!
タンパク質が不足した食生活が続くと、痩せていても脂肪肝になることはわりとよく知られていますよね。「低栄養性脂肪肝」と呼ばれるものです。
でも実はそれだけではなく、なんと「タンパク質が不足した食生活を続けると、インスリン分泌能力が低下する」そうなのです!
基本的に草食ネズミであるマウスではなく、肉食寄りのラットで行われた研究によると、低タンパク食を継続するとインスリン分泌が低下するそうです。ヒトも肉食寄りの雑食動物ですよね。
特に分岐鎖アミノ酸(BCAA、バリン、ロイシン、イソロイシン)量が1種類でも少なくなると食後のインスリン分泌が低下すること、低タンパク質食にBCAAを十分量添加するとインスリン分泌が回復することも明らかになりました。
BCAAは筋肉の分解を抑制して筋肉のエネルギー源となる重要なアミノ酸で、ヒトの体内では合成できません。
サプリメントもありますけど、BCAAはまぐろの赤身、かつお、鶏肉、牛肉、卵、牛乳など動物性食品に多く含まれております。
インスリンの材料としてはタンパク質の他に亜鉛などのミネラル、ビタミンCがあります。これらが不足しないような食生活が大事だということですよね。
ヒトは進化の過程で、ある理由により体内でビタミンCを合成する能力を失いました…でもビタミンCは絶対に必要なので食事で摂取しなければいけません。
現代社会はタバコやストレス等で昔よりもビタミンCの消費量が増えていることが考えられます。
これが、ヒトは肉や魚などのタンパク質に加えて野菜「も」食べなければいけない重要な理由のひとつというわけですよね。
私達ネコは体内でビタミンCを合成できるので、肉や魚だけでも大丈夫です!
人はそうはいかないわね。どちらにしてもタンパク質は大事なので不足しないように気をつけなければいけないけれど。
糖尿病患者はタンパク質が足りていない?
アメリカの調査によれば、成人の糖尿病患者の約半数の食事はタンパク質の1日あたりの推奨摂取量を下回っているそうです。
理由はいろいろ考えられるでしょうけど、自己流の食事制限で全体的に食べる量を減らしすぎてしまったり、タンパク質を十分に含まないものに偏った食生活になりがちなのかもしれませんね。
タンパク質が足りない食事を続けることは、筋肉の減少やインスリン分泌低下をもたらす可能性がありますし、決して糖尿病に良いこととは言えません。
タンパク質摂取量が少ない糖尿病患者は、その分炭水化物の摂取量が多かったそうです…こちらも糖尿病には大いに問題ですよね。
また昔の日本で脳出血が多かった原因の一つは動物性タンパク質の不足ではないかと考えられていますが、糖尿病患者はそうでない方よりも心血管疾患や脳血管疾患のリスクが高いです。
同年代の非糖尿病患者よりもただでさえ脆くなっていることがある血管を、これ以上弱くしてはいけませんよね!もちろん、目や腎臓の細かい血管も丈夫にしなければ…
タンパク質は十分足りていると思っている方は多いと思いますけど、実はそうではない場合もよくあります。あなたは大丈夫ですか?
ちなみに2型糖尿病のインスリン分泌不足の主な原因はインスリン分泌に関わる様々な遺伝子の異常(遺伝)であると言われていますから、「タンパク質さえ十分に摂取すれば誰でもインスリンがドバドバ出る」とは言えません…
「バランスよく」食べすぎている人ばかりではない
2型糖尿病や肥満、脂肪肝などの患者は「全体的に食事量が多すぎる」と思っている方もまだまだ多いかもしれません。
そのため「全体的に食事量を減らせばOK」と言われることもあります…しかし誰もが「バランスよく食べすぎている」とは限らないのですよ。
糖質+脂質、あるいは糖質単独で食べすぎており、タンパク質は足りていない…なんていうパターンもあるのです。私は「一人暮らしで3食ほとんどパンだけで済ませていて不調に陥った」という女性を知っています。
また私は総合病院の糖尿病内科に通っているのですが、病院の売店で医師や看護師が「菓子パンと甘いミルクティー」などを買っていらっしゃるのもよく見かけますよ。
食生活がタンパク質不足で糖質や脂質に偏っている方が、そのままのバランスで全体的に食事量を減らしたらどうなります?…体重は減るかもしれませんが、かなり心配ですよね!
たとえ体重を減らす必要がある患者でも、一律「全体的に食事量を減らせばOK」ではなく、何がどれだけ足りていないか個別の検討が必要だと思うのです。
タンパク質欠乏に気をつけましょう!
一般的には「肉が健康に悪い」「植物性食品が体に良い」と言われがちです。しかし、上述のように、極端にタンパク質を制限する生活はインスリン分泌低下の危険もあります。
奈良のなかたに鍼灸整骨院では、ヴィーガン(完全菜食)食は糖尿病リスクが高いと感じていらっしゃるそうです。
私はヴィーガン生活をしたことがないので実感としては何も言えません。強い気持ちで継続なさっている方もきっと多いでしょう。
それは人それぞれなので良いと思いますが、タンパク質、ことにある種のアミノ酸が欠乏することは健康上、良くないこともあるので細心の注意を払わなければいけません。
おそらく、動物性食品を摂らなくても、きちんと勉強して実践している方は植物性タンパク質が不足しないように気をつけていらっしゃるはず。場合によってはサプリメントも必要かも。
どの食事療法もそうですけど、間違ったやり方で命の危険が生じることもあります!1歳の子供に母乳と野菜、果物しか与えずに栄養失調で死亡させた親もいましたよね。
高齢者が栄養不良の状態に陥り、低インスリン血症になった例も報告されています。自己流で食事を制限しすぎる(特にタンパク質)のはかなり危険です!
また妊娠中に母親が低タンパク食をしていると、お腹の赤ちゃんのすい臓機能にも悪影響が生じると考えられるそうです。つわりでなかなか大変な方も多いでしょうけど、可能な範囲でしっかり栄養を摂りたいですね。
どんなやり方も自己流はいけませんね!
タンパク質を軽く見ないでね!!