基礎分泌インスリンと追加分泌インスリン
インスリンは、すい臓のβ(ベータ)細胞から分泌されるホルモンの一つです。糖質を食べて血液中にたくさんのブドウ糖が増えた時、インスリンの働きで血糖は細胞へと取り込まれます。
インスリンはまたブドウ糖をグリコーゲンに変えて肝臓や筋肉に貯蓄したり、余ったブドウ糖を中性脂肪にして脂肪細胞の中へ取り込む働きも持っています。
糖質を多く含んだ食事をすると血糖値が上昇するので、それに対応するために大量のインスリン(追加分泌)が分泌されます。
何も食べていない時でも、体内で働く「血糖値を上げるいろいろなホルモン」とバランスを取って血糖値が高くなり過ぎず、低くなり過ぎずの状態をキープするために24時間少しずつインスリン(基礎分泌)が分泌されています。
基礎分泌インスリンが不足すると空腹時血糖値が高くなります。肝臓では糖ではない材料から「糖新生」といって糖が作られるのですが、インスリンがないと肝臓の糖新生が過剰になるからです。
もしまったくインスリンが作用しなくなると大変なことになります。5年前、私はこの状態に陥ってしまい、緊急入院した時は前夜から何も食べていないのに血糖値は475もあったのです💦
それから、追加分泌インスリンが足りないと食後高血糖になります。1型糖尿病の方と一部の2型糖尿病の方はインスリン注射を行います。
5年前、当時の主治医は「あなたはもしかしたら1型糖尿病の可能性もあるけど、1型だろうと2型だろうとやることは同じだから」とおっしゃいました。
当時の私はいろいろな検査の結果がかなり悪くて「今後も一生インスリン注射を継続しなければいけないでしょう」「注射をやめることは無理でしょう」と言われていましたから。
発症してから何年間も気付かずに糖尿病をほったらかしてしまった私のβ細胞はかなり死んでしまったはずですが、幸い全滅したわけではなく、弱っていたやつはある程度元気を取り戻したようです。
主治医に許可をもらって糖質制限を開始すると同時に食事用のインスリン(アピドラ)は中止し、基礎分泌の代わりをするインスリン(ランタス)は7か月で完全に中止することができ現在に至ります。
今回は「1型糖尿病患者と2型糖尿病患者のインスリン治療の違い」について考えてみようと思います。
型を問わず、インスリンが不足していれば打つという事ですか?
まぁそうなんだけど、違うこともあるみたいね。
基礎分泌インスリンは絶対に必要です!
上に書いたように、食事とは無関係に24時間少しずつ分泌されている基礎分泌インスリンはとても大切です。これが足りないと空腹時血糖値が上がり、まったく無いと生命の危機に陥ります💦
ゆっくり進行するタイプの1型糖尿病の場合はまだインスリン分泌がある程度保たれていますが、完全に分泌されなくなると足りない分のインスリンは必ず外部から補わなければいけません。
私たち2型糖尿病患者が糖質制限や低インスリン療法の話をしていると「なにっ!インスリン注射はすごく大事なものなのに否定するのか!」とお叱りを受けることがありますけど、とんでもないです。
基礎分泌インスリンが無いと人は生きていくことができません。1型糖尿病の方はこれを注射で補うことは絶対に必要です。
私の知る限り「自己分泌がゼロになった1型の方でも糖質制限すればインスリンはすべて不要にできる」とおっしゃっている医師はいないと思いますが、いかがでしょう?
1型糖尿病の方の血糖コントロールが難しい理由は、食事以外の理由によっても血糖値が変化しやすい点にあると思います。
1型糖尿病の医師バーンスタイン先生の本にも書いてありましたが、私のTwitterのフォロワーさんで1型の方たちによれば緊張した時などにもかなり血糖値が上がるそうです💦
血糖値を上げるホルモンの働きはすさまじいですよね…2型の私も病院の検査前など緊張する場面では多少血糖値が上がりますが、病院の看護師さんはこのことをご存じなかったですね。
2型糖尿病患者の場合はある意味危険かもしれない…
1型糖尿病患者さんは普通はインスリン抵抗性(インスリンが分泌されていても効きにくいこと)はないか、あっても少ないそうです。
しかし2型糖尿病患者の場合、インスリン抵抗性とインスリン分泌不全のどちらがメインとなって糖尿病の状態になっているかは個人差があるようです💦
欧米人に多い高度肥満タイプは主にインスリン抵抗性が原因であり、まだインスリンを分泌する能力はかなり保たれているのでダイエットして体重を減らすだけで寛解する方も多いそうです。
しかし日本人を含むアジア人はそうではなく、早い時期からインスリン分泌不全が起こって高血糖になるタイプが多いです…高度肥満の方も長年放置すればインスリン分泌不全になって痩せてきます。
上の記事で紹介されている『日本人での糖尿病発症の約7割にはインスリン抵抗性が関わっていない』というのは非常に衝撃的です。
インスリン分泌不全と言っても、最初は食後の追加分泌インスリンがやや足りなくなってきて食後高血糖が起こるのでしょう。
そのまま気づかずに放置すると、私のように空腹時血糖値もやや高めになり、もっと進行すれば2型糖尿病でも1型の方と同じように基礎分泌インスリンの大部分を注射で補うことになるのでしょう。
2型糖尿病で完全にインスリン分泌がゼロになる例はあまりないようですけど、そういう方もいらっしゃいます。また2型糖尿病を発症してから後に1型糖尿病を発症することもあるそう!
2型糖尿病の場合、ある程度インスリン抵抗性がある方が多いと思われます。そのため同じものを食べていてもより多くのインスリンが必要になるので、一般的には1型よりも2型の方がインスリン注射の量が多くなる傾向があるそうです。
つまり2型糖尿病でインスリン抵抗性が強い患者がインスリン注射をする(またはインスリンを分泌させるような飲み薬を服用する)場合、健常者や1型の方よりも健康上のリスクが高いのでは!?
高血糖ばかりが悪いと思われがちですが、高インスリン血症も動脈硬化を促進して糖尿病合併症に良くないと考えられるそうです💦
インスリン抵抗性をなんとかしないまま糖質をしっかり食べてインスリンを注射すると、2型糖尿病患者では糖尿病合併症のリスクがそれなりにあるのではないかというわけです。
1型糖尿病患者が糖質制限をする意味は?
2型糖尿病患者でインスリン抵抗性があると、同じものを食べても健常者や1型糖尿病の方よりも大量のインスリンが必要になります。
そのため2型糖尿病患者はまずインスリン抵抗性を減らすこと、そしてなるべくインスリンを大量に出さないような食事が大事になります。糖質制限で救われる患者が多いのはこのためです。
ではインスリン抵抗性のない1型糖尿病患者で糖質制限をなさっている方たちは何のために?ひとつは「血糖値の乱高下を少しでも減らすため」ではないでしょうか。
そして1型の方は基本的にインスリン抵抗性は無いので、そういう意味では「足りないインスリンを注射で補えば健常者と同じ」なのかもしれません。
しかしすでに糖尿病合併症を発症している場合など、その状態から回復を目指すにはやはり「現状維持」よりも一歩進んだ「積極的な何か」が必要なのではないでしょうか。
1型糖尿病のバーンスタイン医師は12歳で発症し、30代で糖尿病合併症がいくつも出てしまっていました。しかし85歳の現在、合併症はすべて克服されたんですって!
糖尿病の食事療法に対する考えはいろいろですけど、こういう考えもあるということでご理解いただけると嬉しいですね。
1型糖尿病でも2型糖尿病でも分かり合いたい
1型糖尿病患者も2型糖尿病患者も、それぞれ悲しい・悔しい思いをしたことがあるんじゃないかと思います。
1型の方は食べ過ぎたわけでもないのに発症して、無知な周囲の人から「あんた甘い物を食べすぎたの?」と誤解されがちですよね。
また2型は生活習慣病と言われているので、いかにも暴飲暴食や運動不足が原因で自業自得で発症したかのように責められるのです💦
私みたいにスポーツクラブでインストラクターとして働いていて玄米食と脂質制限をしていたのに妊娠したとたんに妊娠糖尿病になったような人なんて他にもいるでしょうに。
(↑自分の方が大変だ、と言い合ってみても…)
1型糖尿病と2型糖尿病は同じ「糖尿病」でありながら原因や対処法は確かに異なる部分も多いです。だからといって必要以上に1型、2型と区別されるのは私は好きではありません。
自分が病気のことで世間から誤解されたら悔しいように、自分と違う型の人たちも差別や偏見に苦しんでいるのだということを忘れずにいたいですよね。そして勉強したいです。
そして2型糖尿病は症状の重さにかなり幅があるようで、ちょっと食事を減らすだけでほぼ治ったのと同然の状態になる人から1型糖尿病に近い状態の方までいらっしゃいます。
1型糖尿病と2型糖尿病にはそれぞれの苦労があり、注意点があります。自分の場合はどうしたらいいのかを考えてより良い血糖コントロールに励みましょう♪
1型糖尿病と2型糖尿病の両方が世間から正しく理解されるようになるといいですね。
そう思うわ。そのためにはまず私たちがお互いに理解しあって仲良くすることからだと思うわ。